万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

最もグローバルな国連が最もローカルだった

2010年07月22日 15時45分03秒 | 国際政治
「事務総長、あなたは指導力不足」退任の国連次長(読売新聞) - goo ニュース
 国連が、清廉潔白でも、全幅の信頼に足る組織でもないことは、随分も前から幾度となく指摘されてきました。藩事務総長もご多分にもれず、出身国への身内びいきやネポティズムで組織腐敗をさらに深めてしまったようです。

 こうした現象から明らかになることは、実のところ、国連は、時代の先端をゆくグローバルな組織のようで、実は、時代遅れのローカルな組織になっている、ということです。その原因の一つは、事務総長を選ぶに際し、先進国からは選ばれない、という慣行にありそうです。先進国出身者が排除される理由は、国連は、大国の影響下に置かれることなく、常に中立・公平性を保つことが、求められていることにあります。しかしながら、この方針は、裏目に出たようです。何故ならば、発展途上国では、民主的制度が定着して日が浅く、ネポティズムもまた強いので、むしろ、中立・公平性に対する意識が低い傾向があるからです。大国の影響は受けなくても、今度は、事務総長の権力濫用やその出身国の政治腐敗体質の感染が、国連の組織を歪める可能性があるのです。

 結局、先進国であっても、途上国であっても、国連の中立・公平性を保つことは難しそうです。そうであるからこそ、退任した国連の事務次長は、透明性を高めるための制度改革を提言したのでしょう。事務総長が、その提言を無視したとしますと、やはり、国連という組織の病は深刻と言えそうです。

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