万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

中国主導のAIIBはアジアインフラ市場の囲い込みか?

2015年03月20日 15時30分42秒 | アジア
条件整えば、アジア投資銀「協議の可能性」(読売新聞) - goo ニュース
 中国からの提唱で設立が決まり、最大の出資国である中国が牛耳るとされるアジアインフラ投資銀行(AIIB)。イギリスが突然に参加を表明したことから、独仏伊などの欧州諸国も雪崩を打つように加盟を決めています。

 中国主導であるのは、当投資銀行の出資比率における中国の割合が50%を超えるところにあります(75%とも…)。50%を超えるというこは、中国が認めた案件しか融資を受けることは出来ないことを意味しています。アジア開発銀行の出資比率は、最大の出資国である日米が共に15.7%ですから、アジアインフラ投資銀行における中国の出資比率は突出しています。このため、インフラの開発プロジェクトや計画の申請の段階で既に中国の事前許可を必要とするかもしれません。また、”全ての道はローマに通ず”さながらに、中国へのアクセスを円滑化したり、中国の産業に有益となる事業計画に優先的に有されることも予測されます。そしてこの間に、おそらく、中国側と融資を受ける側の国の間で巨額の賄賂が動くことでしょう。全く以って、”中国の中国による中国のための投資銀行”なのですが、それでは、何故、他の諸国は、急速に加盟に傾いたのでしょうか。アジアの途上国については、融資を受けるチャンスが生まれますので、インフラ整備資金の調達が主たる参加目的なのでしょうが(もっとも、高利貸し、債務不履行による差し押さえ、内政干渉のリスクも…)、先進国である欧州諸国にとりましては、決定にほとんど関与できないのですから、何らかの参加見返りとしてのメリットがあるはずです。報道によりますと、イギリスは、中国市場への自国企業の参入機会の拡大を理由として挙げたそうですが(シティでの起債にもメリット?あるいは融資を受ける側に?)、非参加国が懸念すべきは、非参加国の企業をアジアインフラ投資銀行の融資案件から締め出すことです(融資が人民元建てでなければ、それ程の脅威ではない…)。この行為は、全面的とは言わないまでも、アジアインフラ市場の囲い込みに他なりません。

 しかしながら、果たして、国際的な投資銀行が、融資先の国の政府決定や入札に際して、囲い込みを意味する受注条件や排他的条件を付けることは出来るのでしょうか(国家レベルのODAでは相互の合意による条件付きはあり得る…)。これまで、国際機関というものは、全ての諸国に対して中立・公平であることを前提にしておりますので、アジアインフラ投資銀行のような一国支配型の国際機関の出現は想定外の出来事です。仮に、アジアインフラ投資銀行が、非加盟国の入札締め出しを行う場合には、日米をはじめとした非加盟国は、何らかの対策を講じるべきではないかと思うのです。

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コメント (2)
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