万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

後藤氏殺害目撃証言の謎

2015年03月11日 14時46分33秒 | 国際政治
【イスラム国事件】「撮影のためとだまし犯行」 後藤さん殺害「目撃した」とする元通訳証言、アラブ名を付け協力強いる(産経新聞) - goo ニュース
 ISILによる人質殺害事件は、動画がネット上にアップされたことで、その残虐な手口が印象付けることになりました。この事件について、英国のメディアが、元通訳を名乗る人物による殺害現場の目撃証言を放送したそうです。

 証言の主たる内容は、殺害を前にして人質たちが落ち着いているのは、処刑シーンの撮影のためであり、実際には殺害はしないと騙していたからである、というものです。この人物、元通訳という肩書ですが、国籍等の身元がはっきりせず、ISILから狙われるようになったため、逃げ出してきたと説明しています。証言が事実であれば、ISILの非道な手口をリークしたことになりますが、事実であっても、偽証であっても、幾つかの謎が残ります。事実である場合には、人質達は、実際には殺されないと分かっていて、撮影に協力したことになります。何度も練習したというのですから。落ち着いていたとはいえ、迫真の演技です。また、元通訳のリークが偽証であり、かつ、ISILによる意図的な情報流布作戦であるとしますと、この証言は、後藤氏殺害の信憑性と関連しているかもしれません。動画には、実際の殺害シーンはカットされており、殺害後の映像も、何らかのトリックや画像処理を使えば偽造することができます。動画の公表時から信憑性に関する疑いも指摘されていましたので、現場の目撃者を登場させることで、根強く残る後藤氏生存説を打ち消したいのかもしれないのです。

 何れにしましても興味深いことは、ISIL自身が、”やらせの処刑”という手法を十分に認識していることです。そして、元通訳の背景が怪しければ怪しいほど(ISILの手先…)、後藤氏生存も、あり得ないことではないように思えるのです。

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コメント (4)
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