万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

AIIBの融資先は中国単独で既に決定か-”全ての道は北京に通ず?”

2015年03月29日 15時04分39秒 | 国際政治
アジアインフラ投資銀 参加表明41か国に(NHKニュース&スポーツ) - goo ニュース
 昨日、ボアオ・アジア・フォーラムの年次総会において、中国の習近平主席が中国中心の経済圏の構築を提唱するとともに、それを実現する手段としてAIIBの名を挙げと報じられております。中国が構想する経済圏とは、”一帯一路”と呼ばれるシルクロードの復活であり、さながら”全ての道は北京通ず”の如くです。

 この提唱で明らかになったことは、AIIBの優先的な融資先は、既に決まっている、ということです。AIIBにつきましては、協定も未作成の段階であることに加えて、理事会の設置さえ危ぶまれています。理事会なし、となりますと、加盟国が参加する形での決定機関が存在しないことになりますので、事実上、中国の決定、即ち、独裁的権力を固めたとされる習主席の決定が、AIIBとしての決定となる可能性は否定できません。AIIBでは、総裁は中国国際金融有限公司(CICC)前会長の金立群氏が予定されおり、主要言語も中国語なそうですので、AIIBのスタッフの大半も中国人となるのでしょう。組織全体が中国色に染まっている状況で、中国共産党のトップの意向を無視できるはずもなく、AIIBの融資対象は、”一帯一路構想”上のプロジェクトに集中するものと予測されるます。つまり、他の参加国は、中国の”一帯一路構想”に資金面から協力する構図となるのです。しかも、古代の”道”は道路や航路ですが、現在の”道”は、道路に限定されず、鉄道、石油・天然ガスのパイプライン、港湾など様々なラインも含まれています。石油・天然ガスのパイプラインが中国から中東に直結されれば、有事に際してのインド洋やマラッカ海峡等におけるアメリカによる封鎖が無力化されるとも指摘されていますし、シルクロードが砂漠に埋もれる原因となったインド航路の発見とは全く逆に、ユーラシア大陸における物流の流れが大きく変化するかもしれません(逆に、衰退する地域も出現するかもしれない…)。また、道路や鉄道の敷設は、人民解放軍の移動軍隊の大規模化、移動速度の上昇、活動範囲の拡大をも可能とします。もっとも、気象条件が過酷な砂漠地帯を通りますし、政治的にも不安定な地域ですので、長期に及ぶ難工事も予測され、経済的効果も未知数です。

 果たして、習政権は、これらのプロジェクトの内、どれを優先させるのでしょうか。融資先のプロジェクトを見れば、中国のAIIB設立の真の狙いがどこにあるのか、読み解くことができます。参加国の多くは、アジア太平洋経済社会委員会が策定したアジア・ハイウェー構想などを思い浮かべているのでしょうが、国際社会は、中国中心の一帯一路構想のリスク面にも備えるべきではないかと思うのです。

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コメント (2)
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