万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

中国主導のAIIB問題-インフラ資金不足解消に別の方法はないのか?

2015年03月24日 15時52分47秒 | アジア
AIIB参加に「極めて慎重な立場」と麻生財務相(産経新聞) - goo ニュース
 中国主導のAIIBの設立が国際社会の関心を集めておりますが、本日も、中国メディアの情報によりますと、ルール造りについて不安と批判があることを意識してか、中国当局は”ルールは中国が造る”と息巻いているそうです。ところで、そもそも、中国主導のAIIBは必要なのでしょうか?

 中国の政治的な野望と並んで、AIIBの存在意義に関する経済的な説明としては、しばしば”アジア市場にはインフラ資金が不足している”というものがあります。中国の資金がインフラ市場に流れれば、この資金不足は解消されることが期待されるからです。しかしながら、資金不足の解消方法は、アジア開発銀行と並んで、もう一つ、別の国際投資銀行を設ける方法が唯一の解決策ではありません。第一に、既存のアジア開発銀行や世銀等の融資能力を高める方法があります。これらの国際機関が、増資や起債額の拡大などに努めることも解決方法の一つです(もっとも、これまでの姿勢からしますと、アメリカ政府は反対するかもしれませんが…)。また、先日の記事でも指摘したように、融資先の選別を厳しくし、中国といった経済大国を融資対象から外せば、資金に余裕が生まれます。第二の方法は、民間金融機関の呼び込みです。インフラ整備計画を進めるに際して、各国政府が、民間の金融機関に国際シンジケートの結成を呼びかけたり、直接に融資参加を勧誘する方法です。政治的目的が入り混じる中国式の”公営投資銀行”よりも、経済性を重視する民間であれば、そのノウハウが生かせる可能性もあります。第三の方法としては、各国政府が、”建設国債”、あるいは、”インフラ債”を発行して、内外の民間法人や個人から直接に出資を募る方法もあります。アジアの成長力からすれば、債務不履行リスクはそれ程には高くはありませんので、インフラ市場における民間からの資金調達も、一つの考え方です。近年の先進国中央銀行による量的緩和策策や低金利の長期化は、資金調達には有利な状況です。また、民間からの資金調達に際して、アジア開発銀行が、発行債権等に政府保証ならぬ、”ADB保証”を付与すれば、さらに調達は容易となるかもしれません。

 アジアの経済的な繁栄は望ましいことですが、結果として、資金調達面での中国依存への傾斜が中国の覇権主義を助長するようでは、そのリスクは計り知れません。安全保障上の危機まで招くかもしれないのですから、インフラ資金の不足解消については、中国依存に陥らないよう、別の方法もまた、試みるだけの価値はあると思うのです。

 よろしければ、クリックをお願い申し上げます。


にほんブログ村 政治ブログへ
にほんブログ村
コメント (2)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする