万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

第二次世界大戦を二国間関係に矮小化した村山談話

2015年03月12日 15時21分55秒 | 国際政治
官房長官「自分でも談話出したのに」 小泉元首相に反論(朝日新聞) - goo ニュース
 第二次世界大戦から70年を迎えた今年、安倍首相による談話の発表が予定されております。70年談話をめぐって特に関心を集めているのは、村山談話に見られる”侵略と植民地支配”の文言の行方です。

 村山談話は、先の大戦を、日中、並びに、日韓の間の二国間関係からしか理解していないように思われます。そうであるからこそ、今なお、談話の発表に際しては、中国と韓国だけがとりわけ神経を尖らせ、国際社会もまた、日本国の談話は日中、並びに、日韓関係の問題として注目しているのです。しかしながら、第二次世界大戦は、その名の通り”世界大戦”であって、日中戦争はその一部ではあっても二国間に限定された戦争ではなく、ましてや、韓国併合とは直接的な関係はありません。”世界戦争”とは、各国の世界戦略、いわば、あるべき世界ヴィジョンをめぐる戦いであり、二国間関係からこの戦争を理解することは世界大戦の理解を著しく歪めかねません。日本国が、”戦争に負けても戦争目的は達成した”と称されるのは、戦後、植民地支配が終焉を迎えたからであり、日本国民の多くは、この結果に満足しております。米英もまた、戦勝国として大西洋憲章で掲げた目的の大半を達成したのですから、理想の実現に近づいています(もっとも、植民地は手放すことになりますが…)。そして、ドイツもまた、今日、押しも押されぬヨーロッパの大国として復活したのですから、第一次世界大戦の敗戦による屈辱を半ば晴らしたと言えるかもしれません。完全ではないにせよ、第二次世界大戦後の国際社会は、戦勝国であれ敗戦国であれ、共にウィン・ウィンであった面も否定はできないのです。仮に、第二次世界大戦によって目的を達成できなかった国があったとしますと、それは、ソ連邦といった共産主義国家です(共産党支配下の現在の中国もまた、法の支配を基調とする国際秩序に不満…)。戦争の混乱によって、全世界を赤化することはできなかったのですから(故に冷戦が発生…)。

 村山談話は、第二次世界大戦を二国間関係に矮小化することで、日本国が多大な犠牲を払ってまで戦争を遂行した大義までも否定し、単なる”侵略戦争”に貶めてしまったように思われます。70年談話では、第二次世界大戦を矮小化された”二国間史観”から解き放ち、真の人類史的な意義を語っていただきたいと思うのです。

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コメント (2)
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