万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

オバマ政権による共同事業提案-ADBはAIIBと競争を

2015年03月23日 15時02分29秒 | 国際経済
オバマ米政権が中国主導投資銀との共同事業を提案(産経新聞) - goo ニュース
 中国主導のアジアインフラ投資銀行への参加見送りを、積極的に各国に呼びかけてきたアメリカのオバマ政権。英独仏伊による相次ぐ参加表明に危機感を感じたのか、アジア開発銀行と同投資銀行との共同事業を提案したと報じられております。

 このニュースに対する解説としては、参加は見送るけれども共同事業を実施することで、アメリカは一定の影響力を保持する狙いがあるとする見方がある一方で、遂にアメリカも中国の前に膝を屈したとする見解も見受けます。共同事業の決定や運営に関する主導権がアジアインフラ投資銀行に握られるとしますと、事実上、アジア開発銀行は、出資のみを担うサブの出資パートナーの役割に位置付けられるからです。本日の日経新聞の記事によりますと、中国の楼継偉財政相は、「西側ルール、最善と限らず」として、アジア開発銀行の官僚主義的な煩雑な手続きを批判したそうです。裏を返しますと、時間がかかってもコンセンサスの形成を重視する民主的な欧米式ではなく、融資案件の決定は中国式の独裁で行くことを宣言したとも言えます。アジア全体を対象に、中国は、”開発独裁”を目指しているのかもしれません。効率性だけを追求すれば、確かに独裁にも利点はあるのですが、国際機関にあって一国が独裁的に決定権を行使するとなりますと、加盟国が不満を抱く原因となりますし、”開発独裁”による融資先国の乱開発が現実のものとなる恐れがあります。果たして、民主的な組織と非民主的な組織が、共同で事業を実施することができるのでしょうか。

 AIIBに接近することで、AIBが取り込まれたり、あるいは、中国の腐敗体質が伝染するならば、両者は、それぞれ独自の路線を歩み、競争関係を維持した方が良いのではないでしょうか。インフラ投資分野でも、民間の金融機関を含めて競争のメカニズムが働いた方が望ましいとする見方もあります。アジア開発銀行は、インフラ投資銀行としてのスキルと融資能力をさらに高め、低利融資、現地ニーズへのきめ細かな対応、雇用機会の提供、良好な労働条件、生活水準の向上、環境保全…を実現する事業への融資を前面に打ち出せば、融資を受ける側の国も、信頼性や透明性を基準にアジア開発銀行を選択すると思うのです。

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コメント (2)
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