万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

日本国にはAIIBで中国の勢力圏形成に貢献する必要はない

2015年04月06日 15時19分11秒 | 国際経済
【インフラ銀】「米のオブザーバー参加ある」「中国が支配するの難しくなった」有識者に聞く(産経新聞) - goo ニュース
 AIIBについては、中国を包囲するはずの日米が、逆に中国に包囲されてしまったとする評もあります。アメリカのオブザーバー参加も取り沙汰されておりますが、日本国には、AIIBに参加する理由がありません。

 これまでの情報によりますと、AIIBにおける12兆円とされる基金の出資比率は、アジア諸国で75%、非アジア諸国が残りの25%です。AIIBは、欧州諸国の参加で融資能力を高めたとはいえ、25%、即ち、英独仏伊ロ等の出資額を合わせても総額でも3兆円です。仮に、アメリカが参加したとしても、25%の上限があるのですから、欧州諸国の出資比率が減るだけで、中国を凌駕する影響力を及ぼすことは出来ません。それでは、日本国が参加するとどうなるのでしょうか。仮に中国のGDPが日本国の2倍であるとしますと、凡そ、3兆円弱ほどが日本国の出資額となります。しかしながら、たとえ3兆円をAIIBにつぎ込み、欧米と日本国で出資比率が50%に迫ったとしても、AIIBの融資対象が、中国の覇権国化を促進するプロジェクトに集中するのであれば、安全保障上のリスクを含めてデメリットがメリットを上回ります。中国中心の”経済圏”とは、同時に、中国の”勢力圏”でもあるのですから、こうしたプロジェクトへの資金提供は、長期的に見ますと、自らの首を絞めるようなものです。

 アジアには、2030年までに、1000兆円のインフラ需要があると指摘されており、冷静に見れば、AIIBがそのすべてを独占できるわけでもなく、ADBの存在価値が低下するわけではありません。また、外貨準備が有り余っているとされながら、日米に参加を求める中国の態度も不自然です。AIIBの参加見送りは、決して間違ってはないと思うのです。

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コメント (2)
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