万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

靖国神社参拝-A級戦犯が最も理不尽だった

2015年04月24日 10時16分50秒 | アジア
中国外務省「断固反対」 閣僚の靖国参拝を批判(朝日新聞) - goo ニュース
 靖国神社では、春季例大祭を迎え、首相の真榊の奉納や閣僚の参拝が続いております。例年通り、中国は、”侵略戦争”を反省しておらず、軍国主義を一掃していないとして反発を強めております。

 中国が靖国神社を非難する理由は、東京裁判(極東国際軍事裁判)において”平和に対する罪”で有罪判決を受けた”A級戦犯”が祀られていることにあります。しかしながら、純粋に現在の法学上の観点からしますと、最も法的根拠が薄く、今日の司法の一般原則から外れており、かつ、今日の実証的な歴史研究の結果と合致していないのがA級戦犯です。英米法では判決に法規創造力を認める傾向にあるものの、今日の国際法では、刑法分野における遡及効果を認めておりません。また、第二次世界大戦当時、国際法において植民地支配が合法であった上に、国際法も司法制度も未整備な段階にありました。第一次世界大戦の反省から、紛争の平和的解決を目指して設立された頼みの国際聯盟も、枢軸国となる日独伊のみならず、米ソもまた加盟国ではなかったのです。また、辛亥革命以降も混乱が収まらず、中国大陸が、旧清朝軍閥、国民党、共産党といった勢力が割拠する内戦状態にあったことも、先の大戦を説明する要因の一つです(今日でも、秩序崩壊地帯への派兵の事例がある…)。近代以降の歴史において、列強による世界戦略上の勢力圏争いや攻防戦が繰り広げられ、その過程で武力行使があったことは確かなことですが、さらに過去を遡れば、中国の歴代王朝もまた領土拡張を常としたことを考慮しますと、”A級戦犯”のみを未来永劫にわたって戦争犯罪者と決めつけ、慰霊さえも禁止しようとする中国の態度には、疑問を抱かざるを得ません。中国が現在の価値観を以って過去の日本国の行為を断罪するならば、日本国もまた、現在の価値観を以って過去の戦争犯罪の判決に疑問を呈することが許されるはずです。

 双方が傷を抱えつつ、講和条約を以って終わらせた戦争を蒸し返すことは、講和の精神に反する平和の破壊行為でもあります。そして、連合国が問うた戦争責任と理不尽を一身に背負って処刑台に臨んだA級戦犯の方々こそ、戦後の日本国に平和の礎を残して逝ったのではないかと思うのです。

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コメント (2)
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