リタイア暮らしは風の吹くまま

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旅の空から~船上での1日は海と空が会うところ

2021年10月22日 | 日々の風の吹くまま
10月20日(水曜日)。🌥🌤(フランスとスペインの間)。マルセイユから一路スペイン南部のバレンシアへ。今日は「Day at Sea」、つまりどこにも寄港せずひたすら航海する日で、朝ご飯のレストランが開くのもいつもより30分遅い。午前中に中間の抗原検査がある以外は、みんな1日中船の上でいろんなアクティビティに参加したり、天気が良ければプールサイドで日向ぼっこをしたり、ベランダで読書をしたりの、まあ、休養日のようなものかな。

ローマから始まって、イタリア語圏のイタリアン・リヴィエラからフランス語圏のフレンチ・リヴィエラと地中海を旅して、スペイン語(カタロニア語)圏のバレアレス海に入って来たわけだけど、人種的にも文化的にもあまり大きな違いがないような気がするのは、古代からギリシャ人、ローマ人、サラセン人、ムーア人その他との侵略や交易での活発な交流によって「地中海文明」というひとつの世界を構成していた「地中海民族」だからだろうな。長い歴史の変遷が現代に至るまでの間に、ギリシャ人、イタリア人、フランス人、スペイン人という線引きが出来上がったんだろうけど、きのうのツアーガイドは、自分のおばあさんがイタリア人、バスの運転手のコンスタンティンは半分ギリシャ人だと、いろんな血が混じっているのが当たり前みたいな口調だったのが印象的だった。

どこへ行っても古代ギリシャ人やローマ帝国の遺跡があるし、その前には海洋民族フェニキア人が地中海東部から進出して来てオリエント文明を広げたし、おそらく現代の地中海人は所属する国家は違ってもフェニキア人に始まる共通の遺伝子を持っているんだろうな。おもしろいことに、イタリア語圏のポルトフィーノではミラノ生まれのガイドが「このあたりから南では北部の人間は侵略者扱いなのよ」と言い、フランス語圏のニースではパリ方面から来るバカンス客は必要悪の扱いだと言い、アクセルは「マルセイユの人間はパリジャンが大嫌いなの」と言っていて、リヴィエラ地方の人たちが所属する国家は違ってもある意味で共通した同族意識に近いものが感じられた。

ガイドのアクセルによると、マルセイユはかってイタリアからフランスまで続くリヴィエラに君臨したサヴォイ王家の支配下にあって、地中海方言のプロヴァンス語を話していたそうで、それがサヴォイ王家の衰退でフランス(パリ)の支配下に入って以来、フランス語化を強制されたために母語のプロヴァンス語を失ったり、さらには免税を条件に構築させられた要塞が完成したとたんに税金を取り立てられるようになったりの苦難続き。そのせいでマルセイユっ子はポンピドーが大統領だったときには、アメリカのケネディ大統領と仲が悪いと聞いて「ポンピドー通り」を「ケネディ通り」に変えて留飲を下げたくらい、パリの政府が大嫌いなんだそうな。怨恨の根底に言語が絡んでいるところは興味深いな。世界には征服者がその言語を強要することで被征服者の言語を奪い、屈服させた歴史は、近代にいたるまで数えきれないくらいあるもの。