写真は文山州のイ族の村にて。観光で売り出したいと若者は伝統的、といわれる村本来の伝統とはあまり関係のない踊りを熱心に披露してくれた。
【質問がありまして・・】
雲南の漢方薬・三七②の回で「三七の主な成分は有機ゲルマニウムやサポニンなど」と書いたところ、
「ゲルマニウムといった微量元素は、普通の土壌に含まれているとは思われないけど、三七は、いったいどうなっているのか? たとえば肥料で蒔いたりして、そこから微量元素を選択的に取り込む仕組みがあるのか?」
という、難解だけど、なにか三七の本質をスルドく突いているような質問を受けました。
そこでまず、ウェブに「有機ゲルマニウム」と入れて検索すると、出るわ出るわ、健康食品などのオンパレードです。
ゲルマニウムとは、そもそも、普通の状態では電気を通さず、温度が上がると電気を通すようになる「半導体」物質です。古くはトランジスターラジオ、現在では太陽電池、光ファイバー、あとはペットボトル樹脂用触媒などに使われています。
(犬塚英夫『人工結晶』岩波新書、1962年9月、ウィキペディア「ゲルマニウム」の項ほか)
純粋なゲルマニウム物質である「無機」ゲルマニウムは食べると、有害。
一方、「有機」とつくと「炭素とゲルマニウムの化学結合を含む有機金属化合物」となり、現在、こちらが食べるほうに含まれると、珍重される傾向があるようです。また体にネックレスとして身につけたり、「ゲルマニウム岩盤浴」などの健康グッズに使われています。
ただし、医学的には健康によいかとどうかの実証は、私の見たところでは見あたりませんでした。今のところ「健康的な雰囲気」語といったところでしょうか。
【世界的にもまれな物質】
いまや日本の産業にはかかせない、このゲルマニウム。日本ではほとんど採れません。世界的にも、稀少なものです。
ところが、中国の、雲南には確かにあるのです。中国はゲルマニウム埋蔵量、生産量ともに世界一、そして雲南省は埋蔵量では内蒙古自治区についで2位といいます。
(「ゲルマニウムに関する基本資料」有限会社UMC中村創一郎、2008年2月20日更新)
雲南では鉛、亜鉛の副産物として、無数の小規模工場で精製されているそうです。なかでも上海A株上場企業である雲南に本拠を置く「馳宏亜鉛ゲルマニウム」1社だけで、世界のゲルマニウム生産量の10%を占めているというから驚きです。この会社は、先月9月23日に、世界最大の埋蔵量を誇る内蒙古のフフホトの大型鉛ゲルマニウム鉱山を買収したとの報道があったばかり。世界企業となるべき戦略がはっきり見えるため現在、株価は高値を更新中。
(新浪http://biz.finance.sina.com.cn/stockreport.php?symbol=600497)
さてゲルマニウムに限らず、雲南は鉱物資源の宝庫。埋蔵量で見ると、鉛、亜鉛、ゲルマニウム、カドミウム、タリウム、珪藻土、錫、亜鉛、リン、マンガン、ニッケル、ストロンチウム、インジウム、リン鉱石、ひ素、白金属、カリウム、銅、コバルトが中国3位以内に入るというとてつもない埋蔵量を誇っています。銀鉱床も数知れず、です。
なぜ、これほど鉱物資源が豊富なのかというと、インド大陸がアジア大陸に衝突した力でできたヒマラヤ山脈系の造山活動のためとのこと。ヒマラヤ山脈系列として雲南省北部からずーっと雲南省南部まで衝撃は伝わり、本来、あまり地殻表面には現れない物質が表に出てしまった、というわけなのです。
そのため清の時代には貨幣価値が変動するほどの銅が雲南でとれ、また民国時代には、欧米列強が個旧の錫山目指して争奪戦を繰り広げた結果、鉄道をベトナムから敷設するという大事業が成し遂げられ、最近ではレアメタル、と世界経済を動かす鉱物の争奪戦地帯、という恐ろしい土地となっているのです。
(2009年10月1日読売新聞では、レアメタルより稀少な「レアアース(希土類)」が江西省を中心に中国が世界の生産量のほぼ97%を占める、という記事も。ハイブリッド車のモーターも江西省でしか採れないレアアースのディスプロシウムを獲得できないと、一台たりとも作ることすらできない状況になってしまうのだそうです。)
ゲルマニウムをはじめ、レアメタル、レアアースの多くを日本は、中国の輸入に頼らざる得ない状況となっているというわけです。
(つづく。次号、この話が三七へと結びつきます。お楽しみに!)
【質問がありまして・・】
雲南の漢方薬・三七②の回で「三七の主な成分は有機ゲルマニウムやサポニンなど」と書いたところ、
「ゲルマニウムといった微量元素は、普通の土壌に含まれているとは思われないけど、三七は、いったいどうなっているのか? たとえば肥料で蒔いたりして、そこから微量元素を選択的に取り込む仕組みがあるのか?」
という、難解だけど、なにか三七の本質をスルドく突いているような質問を受けました。
そこでまず、ウェブに「有機ゲルマニウム」と入れて検索すると、出るわ出るわ、健康食品などのオンパレードです。
ゲルマニウムとは、そもそも、普通の状態では電気を通さず、温度が上がると電気を通すようになる「半導体」物質です。古くはトランジスターラジオ、現在では太陽電池、光ファイバー、あとはペットボトル樹脂用触媒などに使われています。
(犬塚英夫『人工結晶』岩波新書、1962年9月、ウィキペディア「ゲルマニウム」の項ほか)
純粋なゲルマニウム物質である「無機」ゲルマニウムは食べると、有害。
一方、「有機」とつくと「炭素とゲルマニウムの化学結合を含む有機金属化合物」となり、現在、こちらが食べるほうに含まれると、珍重される傾向があるようです。また体にネックレスとして身につけたり、「ゲルマニウム岩盤浴」などの健康グッズに使われています。
ただし、医学的には健康によいかとどうかの実証は、私の見たところでは見あたりませんでした。今のところ「健康的な雰囲気」語といったところでしょうか。
【世界的にもまれな物質】
いまや日本の産業にはかかせない、このゲルマニウム。日本ではほとんど採れません。世界的にも、稀少なものです。
ところが、中国の、雲南には確かにあるのです。中国はゲルマニウム埋蔵量、生産量ともに世界一、そして雲南省は埋蔵量では内蒙古自治区についで2位といいます。
(「ゲルマニウムに関する基本資料」有限会社UMC中村創一郎、2008年2月20日更新)
雲南では鉛、亜鉛の副産物として、無数の小規模工場で精製されているそうです。なかでも上海A株上場企業である雲南に本拠を置く「馳宏亜鉛ゲルマニウム」1社だけで、世界のゲルマニウム生産量の10%を占めているというから驚きです。この会社は、先月9月23日に、世界最大の埋蔵量を誇る内蒙古のフフホトの大型鉛ゲルマニウム鉱山を買収したとの報道があったばかり。世界企業となるべき戦略がはっきり見えるため現在、株価は高値を更新中。
(新浪http://biz.finance.sina.com.cn/stockreport.php?symbol=600497)
さてゲルマニウムに限らず、雲南は鉱物資源の宝庫。埋蔵量で見ると、鉛、亜鉛、ゲルマニウム、カドミウム、タリウム、珪藻土、錫、亜鉛、リン、マンガン、ニッケル、ストロンチウム、インジウム、リン鉱石、ひ素、白金属、カリウム、銅、コバルトが中国3位以内に入るというとてつもない埋蔵量を誇っています。銀鉱床も数知れず、です。
なぜ、これほど鉱物資源が豊富なのかというと、インド大陸がアジア大陸に衝突した力でできたヒマラヤ山脈系の造山活動のためとのこと。ヒマラヤ山脈系列として雲南省北部からずーっと雲南省南部まで衝撃は伝わり、本来、あまり地殻表面には現れない物質が表に出てしまった、というわけなのです。
そのため清の時代には貨幣価値が変動するほどの銅が雲南でとれ、また民国時代には、欧米列強が個旧の錫山目指して争奪戦を繰り広げた結果、鉄道をベトナムから敷設するという大事業が成し遂げられ、最近ではレアメタル、と世界経済を動かす鉱物の争奪戦地帯、という恐ろしい土地となっているのです。
(2009年10月1日読売新聞では、レアメタルより稀少な「レアアース(希土類)」が江西省を中心に中国が世界の生産量のほぼ97%を占める、という記事も。ハイブリッド車のモーターも江西省でしか採れないレアアースのディスプロシウムを獲得できないと、一台たりとも作ることすらできない状況になってしまうのだそうです。)
ゲルマニウムをはじめ、レアメタル、レアアースの多くを日本は、中国の輸入に頼らざる得ない状況となっているというわけです。
(つづく。次号、この話が三七へと結びつきます。お楽しみに!)