写真上は昆明故城の施設。写真下はその「昆明故城」の概況を記した看板。(2010年夏撮影)
【買い物斡旋アミューズメントパーク】
さらに新たに2010年には「昆明故城」という施設が出来上がっていた。
注意したいのはネーミング。昆明城はたしかに1800年以上前より存在していた。だがこの「故城」はまったくの別物なのだ。場所は本物の「古城」跡が現昆明の中心街付近にあるのに対して、この施設は滇池の縁である雲南民族村の隣にあり、経営は雲南民族村が行っている。入場料こそかからないが、たんなるアミューズメントパークなのである。
掲げられた看板によると面積は2万㎡、中国の時代劇などに出てくるような昔風の明清時代の建物らしい軒先が続き、そこにレストランや休憩施設、カラオケ、ショッピング街などを誘致したい、とのこと。特徴的なのは、そこに民間工芸や民族手工芸品、民間芸人街をつくる、という点ぐらい。
用地取得は2004年10月。2007年12月に竣工し、2010年2月に開城したはずなのだが(人々が行き交ううれしげな光景が2月の地元紙の新聞を賑わせていた)2010年夏の時点では入居もチラホラ、人通りもチラホラ、という寂しい状況だった。私はインターネットで開城時期を確認するまで、建設中の立ち入り禁止地域だと思ったほどだ。見回すと、開城して半年たつというのに並びの案内板には㎡あたりの月貸し料金や駐車料金が大きく記載され、「財富熱線」と大書きされた横に電話番号があった。
じつはこのような「故城」という名の施設は雲南にも多くの場所に、さらに中国各地にずいぶんとつくられている。高速バスで移動中などに「○○故城まであと○キロ」などという標識を見ると、最初のうちは「こんなところに昔の城が残されているのか。帰りに寄りたいな」などと真面目におもっていたほどである。だが、たいてい看板を注意深く観察すると浙江省や香港系の財閥が建設したものであることがわかった。
どれもこれも、日本でもよくみる「イオン・レイクタウン」や巨大アウトレット施設のようなショップ街で、外観は日光江戸村風な場所という、コンセプトになっている。あまりにも似たような施設が多すぎるため、いまや中国の人々は、このような施設に飽きてしまった、という気もする。現在、中国から日本に観光客がくると、日本の旅行社は木更津などの巨大アウトレットに連れて行こうとするが、じつは中国の人にとっては建物こそ中国風ではないとはいえ、見慣れた光景なのではないだろうか。
(この章おわり)