写真はメインストリートに面した宿舎にほど近い果物屋さん。生徒はたまに買ってはみんなにも振る舞って食べていた。相場より高めだが、質はよい。写真中央のトゲトゲした姿が頼もしいドリアンは、味は最高だが、においのきつさで有名。当然、宿舎への持ち込み禁止の張り紙が貼られているが、たまに共同で使うゴミ箱にこの皮が入っていて、においを発している。
目の前を通ると英語で常に、呼び込みをされる。無視して通ると「why?」。何度も繰り返すと何も言われなくなる。
メインストリートにはこのような固定店のほか、市場も。このようななかにレチョンの露店が一瞬、あった。
【大家族の分業】
先生はあまり料理をしないと前回書きました。
フィリピンの英語学校で先生をしている人は、たいてい家族(祖父母が多い)がためたお金で大学を出た一家の期待の星。それは大家族のなかでは専業で稼ぐ役割を担うことになり、一家への仕送りが使命となります。
そのかわりに子育てや家事は、母親や祖母、あるいは家事をこなす担当の兄嫁などが担当するといったケースが多いようでした。
そのため私が聞いても、食べ方はわかっても、作り方を教えてくれることはほとんどありませんでした。
レチョンを食べて以来、すっかりその魅力にはまってしまった私。以後、何度も週末に露店を探しに出かけたのですが、その後、道端でお目にかかることはありませんでした。(レストランにはしゃれた形で高級なお値段でメニューに載っています)
じつはレチョンは特別の日のごちそうだったのです。
私が街で見たのは10月最後の日曜日。11月1日にはフィリピンの祝日・「諸聖人の日(All Saints Day)」が控えていました。
そして諸聖人の日の翌日は「死者の日(All Souls Day)」で、国民あげてのお墓参りの日になります。それら祝日の前から一族総出でお墓の掃除をしたり、お花などの準備をしたりとあわただしいモードに突入するのです。
これについてはまたのちほど書きますが、日本の盆暮れのような大事な日で、この日にかかせない料理としてレチョンが用意されていたのでした。おせち料理と同じで、一年中食べているわけではないのです。
その後、日本に帰ってからニュースをみていると、2019年10月に豚肉の値段が高騰し、フィリピンの人がこの日のために買うレチョンが暴騰しているニュースとそれに対して、困惑しているフィリピンの人のインタビューなどが放映されていました。
(2019年9月にフィリピンではじめてアフリカ豚コレラが確認され、」10月12日までに12000頭の豚から感染を確認https://www.jetro.go.jp/biznews/2019/10/2a0f5348576f81a6.html)
フィリピンの事情を知らなければ、それほど深刻に思わなかったでしょうが、日本で正月前にカズノコやいくらが暴騰する以上に深刻な事態だったことがわかります。