カルモナは、中空都市だった。ロバが群れになって草をはみ、当たり前のように、崖を上り下りしていた。
【カルモナへ】
天正遣欧使節団や前回ふれた慶長遣欧使節団もセビリアからトレドへと向かう途中に宿泊したのがカルモナです。セビリアから38キロ東にあり、アルカサール宮殿を現在の形に改築したペドロ一世が青年期までくらし、その後は愛妾のためにアラブの城から改築したカルモナの城。ここに日本から来たサムライたちも宿泊しました。
そこで現在、パラドールとなっている王城を目指して(宿泊は高かったので、街の旧伯爵邸だったホテルに泊まり、パラドール内のレストランで夕飯を取ることにして)、セビリアを出発しました。公共の交通機関はバスのみで、カルモナからは、またセビリアに戻るしか方法がないので大半の荷物をセビリアのホテルに預けての旅です。
そのカルモナ行きのバス停ですが、ホテルの人に聞いても、よくわからない、といいます。頼りは『地球の歩き方・スペイン』編なのですが、そのアクセス欄に「セビーリャのサン・ベルナルド駅近くにあるバス停からCasal社のバスで約50分」と書かれているのみ。バス運行会社のホームページを見てもバス停のある位置を書いた地図は見当たりません。
そこで、ともかくタクシーでサン・ベルナルド駅に向かいました。
不安は的中してバス停が駅周辺には見当たらない。タクシーの運転手も、近くにあるはず、といって、次の仕事にさっさと行ってしまいました。
列車用のサン・ベルナルド駅は地下にあるし。困ったなあと、うろうろしていると、少し離れたアンダルシア美術大学の前にバスが止まっているのを見つけました。運転手に「カルモナ?」と聞くと「オーケー」。ほっとして乗り込みました。きつい冷房のガラガラのバスは、やがて静かに動き出して、カルモナへ。
こうして着いたカルモナは、古い城壁の残る、静かで美しい街でした。観光客はほとんどなく、人々は農作業にいそしみ、バルでのんびりと酒を飲み、ロバは時折、遠くを眺めつつ草をはんでいます。草原の向こうには黒ヤギの群れ。
今まで世界遺産ばかり渡り歩いていたせいか、人の多さに疲れている自分に気づきました。ようやく落ち着いた旅の気分に浸れたのです。のんびりとした空気はバカンス感をもたらし、ゆっくりと寝ることができました。
(つづく)