写真上は、スペインでも人気の高いパラドール ド カルモナの入口。馬蹄型のマルチェラ門(Alcázar de la Puerta de Marchena) をくぐってパラドールに入る。写真下は門の外から見えるパラドールの屋根。ホテルは改装部分と遺跡としても価値の高い部分が見事に調和している。
【アンダルシアのCorvina 】
カルモナの夕飯はパラドール(Parador de Carmona)へ。ドレスコードをばっちり決めていきました。
写真はパラドールの中庭。
カルモナは紀元前8世紀より前に活躍したフェニキア人の時代から、次々と民族が入れ替わって城塞を築いてきました。今夜のパラドールは一番、高い場所にあり、遠くまで見渡せる崖に建つアラブの城塞を14世紀にペドロ一世が愛妾のために改装した居城。ペドロ一世といえばセビリアのアルカサールが有名ですが、カルモナでも同じ手法を用いていたのです。どれだけムスリム建築が好きだったのでしょうか。
ここには戦国時代の日本のサムライが滞在し、レコンキスタのグラナダ攻略時にイザベル女王や夫フェルナンド王も滞在しました。
その後、地震で荒廃したものの、1976年に大改装し、敷地の東側に新たにムスリム様式の建物を建設して、ホテルにしました。
さて、ドーム型の高い天井をもつレストランはイスラム風。それを活かすためなのか、サーブする人々はアラブ系かインド系の顔立ちの方々のみ。そして料理はパプリカとタコのマリネなど魚介類が多めです。汁気が少なく味がはっきりしていて、シェリー酒とよく合います。
お勧めされた「コルビーナ(CORVINA)」という白身魚。説明によると、本来はアルゼンチン産だったのが、最近はスペインでもさかんに養殖されるようになったという今日の目玉なのだとか。
酒蒸しのような料理として出てきたのですが、一口食べただけで、うまみとコラーゲンがぎゅっと詰まった高級系だとわかりました。つまり、すっぽんを筆頭に、中国で食べた鰱魚、ハモなどと同じ、なにかがあるのです。何度か書きましたが私は、急速に血流がよくなるものを食べると、流れがどこかで詰まるのか、たいへん苦しむことになるのです。それはいつもとびっきり高い食材の時に起こります。うれしくない反応で高級食材を見分けてしまう悲しさ。
案の定、しばらくすると肩が暖かくなり、やがて左の頭(?)から目、やがておへその左側、そして太もも、とうっ血しているところを刺激してきました。おいしいのです。でも、それ以上は自制しました。連れ合いが二人分、おいしそうに食べていました。
あとで日本語名を調べると市場名が「銀ムツ」とか「メロ」。魚名は「アジェランアイナメ」とでてきました。日本ではごく普通の魚ですが、私の身体に与えた影響から考えると、スペインでは日本で流通しているものより高級魚ではないかと思います。
肝心のパラドールの話が抜けていました。ここは着飾った方々で満席。間接照明も美しく、館内は装飾も含めてエキゾチック。街で一番高台にあるので、遠くの道を行く車の列も天の川のように見えてきます。ここでの朝焼けはきっと、日本のサムライたちが見た景色と、いまもほとんど変わっていないことでしょう。
(つづく)