石油と中東

石油(含、天然ガス)と中東関連のニュースをウォッチしその影響を探ります。

再び値上がりする原油とOPECの動き

2006-01-21 | OPECの動向

 原油価格が再び騰勢を見せている。1/20のニューヨークWTI原油は1バレル68.8ドルとなり、昨年の史上最高値70.85ドルに近づき、ロンドンのBrent原油も昨年9月以来の高値66.43ドルとなった。また1月前半のOPECバスケット価格は56.82ドルであった。

 原油価格が再び値上がりしている背景は主要な産油国であるナイジェリアとイランの先行き不安感である。ナイジェリアでは産油地のデルタ地帯で反政府ゲリラが活発化しており、石油会社は一部外国人の引き揚げを始めている。ゲリラ側は石油施設に対する攻撃を示唆しており、OPEC第4位の生産量を誇るナイジェリアの石油生産がストップする恐れが出ている。一方イランについては核開発問題を巡って欧米先進国とイランが鋭く対立し、国連で経済制裁決議が採択される事態になればイラン原油の輸出制限になると考えられるためである。また需要サイドについては、本年も引き続き米国の景気持続と中国の景気拡大により世界の石油需要は伸びると見込まれている。

 世界の石油生産の35%を占めるOPECは、現行生産枠28百万B/Dの見直しの是非を含めて今月末に臨時総会を開くが、これに先立って昨年の石油生産実績と今年の需要見通しに関するレポートを発表した。 これによると昨年(2005年)の世界の石油需要は8,320万B/Dであり、2004年に比べ110万B/D(1.4%)の増加であり、一方、昨年12月のOPEC11カ国の生産量合計は2,982万B/Dであった。OPECは生産枠2,800万B/Dに対し約2百万B/D超過生産しているが、これは9月の臨時総会で合意された線に沿ったものである。価格については昨年のOPECバスケット年間平均価格は50.64ドルであり、前年に比べ40%の大幅な値上がりであった。

 今年の世界の石油需要を8,480万B/Dと見込んでいるが、これは昨年に比べ1.9%の増加である。特に中国の需要増は6%を見込んでおり増加量全体の4分の1を占めている。OPECレポートは、昨年同様今年も石油価格は不安定な様相を呈し、西アフリカ及び中東の地政学的緊張が高まり供給不安を抱えている、と指摘している。

 このような中でイランは、冬場を脱し石油需要の減退が見込まれるとの理由で生産枠を100万B/D削減すべきである、との論陣を張っている。IEAはOPEC同様今年の石油需要が昨年を上回ると予測し、産油国特にOPECに増産を求めている。世界の石油需給予測から見ればイランの主張はいかにも無理がある。しかし需要に見合う石油を欲している消費国の足元を見てイランは強気の姿勢である。イランは石油を武器に核開発問題で欧米、特に西欧先進国に揺さぶりをかけているようである。

  OPECの生産余力にも限界が見えており、新規油田開発など増産のための投資を行っているものの、効果を現すのは数年先のことである。今年の石油市況は昨年にも増して不安定さを増すようである。

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