石油と中東

石油(含、天然ガス)と中東関連のニュースをウォッチしその影響を探ります。

OPEC50年の歴史をふりかえる(5)

2010-05-04 | OPECの動向

(注)本シリーズ1~9回は「MY LIBRARY(前田高行論稿集)」に一括掲載されています。

5.サウジアラビア・ヤマニ石油相の栄光と凋落(上)

 OPEC50年の前半を彩る立役者がサウジアラビアのアハマド・ザキ・ヤマニ元石油相であることはだれしも認めるところであろう。

  ヤマニは1930年にイスラム教の聖地マッカで生まれた。ヤマニ家は父親が高名なイスラム法学者であり、また祖父はトルコの大法官(Grand Mufti)と言う名家である。彼は17歳でカイロ大学に留学、その後26歳の時、米国のハーバード大で修士号を取得した。帰国すると新設された財務省税務部(Zakat & Income Tax Dept)に入省、翌年にはファイサル皇太子兼首相(後の第三代国王)の法律顧問となった。そして当時の石油相でOPEC創立の中心人物であったトルキの知遇を得た。

  OPEC設立2年後の1962年、彼は若干32歳の若さでトルキの後任として石油相に就任した。この年、国連総会で資源保有国の資源に対する恒久主権が決議されている。OPEC各国は国際石油会社から石油開発の利権を取り上げ、石油産業を自国の支配下に置くことを目指したが、当時は国際石油会社(メジャー)の力が圧倒的であった(前回参照)。

  ヤマニは状況の変化を辛抱強く待ち、1968年にベイルートのアメリカン大学で「事業参加」と言う新しいアイデアを打ち出した。「事業参加」は急進的な「国有化」がイランで失敗したこと(1951年)を踏まえたものであり、石油利権に対する参加の割合を段階的に引き上げていくと言う穏便な方法である。因みに前年の1967年には第3次中東戦争が勃発、エジプトはイスラエルに大敗しナセル大統領の威信が地に落ちている。ナセルと対立し欧米との協調を重視するファイサル国王の意を汲んだヤマニ石油相は「事業参加方式」を編み出したのである。

  数年の交渉を経て1972年にサウジ政府はアラムコ(現サウジ・アラムコ)の25%の持ち分を買い取ることになる。これは株式の取得ではなく事業そのものの25%を取得することである。つまりアラムコ資産の4分の1を買い上げ、以後の開発探鉱投資・操業経費も4分の1をサウジ政府が負担して石油操業に関与するとともに(実際の操業は国営石油会社ペトロミンが担当)、その見返りとして生産された原油の4分の1をペトロミンが引き取り自ら販売すると言うものである。参加比率は1974年には60%、そして1976年には100%に引き上げら、実質的な国有化が達成されたのである(資産の補償支払い完了は1980年)。

  事業参加による自国石油産業の支配権の確立と並んで、ヤマニが力を入れたのはOPEC加盟国が結束してメジャーから石油価格の支配権を奪い取ることであった。そのチャンスは就任から11年経った1973年に訪れた。第4次中東戦争である。第3次中東戦争でイスラエルに大敗したアラブ陣営であったが、今回はエジプトのサダト大統領とサウジアラビアのファイサル国王が手を結んだ。エジプトはユダヤ教の安息日に開戦すると言うと言う奇襲作戦で初戦を制すると、これに呼応してサウジアラビアは対米石油輸出を全面停止すると発表した。

  クウェイト、UAEなどアラブ石油輸出国機構(OAPEC)加盟国もこれに同調、開戦翌月の11月には原油生産を25%削減、翌月以降は毎月5%ずつ削減すると発表し、さらに公示価格を2倍に引き上げたため石油の末端価格は暴騰した。いわゆる第一次オイル・ショックである。第4次中東戦争そのものはイスラエルの反撃と国連の調停によりほぼ痛み分けの状態で終結したが、石油価格は開戦前の4ドル台から3倍以上の12ドル台に定着した。石油高価格時代の始まりである。さらに1979年のイラン・イスラム革命の結果、1980年には年間平均価格がついに37ドルに達した(第二次オイル・ショック)。

  この時期、世界の石油生産に占めるOPECのシェアは5割に達していたため、石油価格決定の主導権を握ったOPECの動向に世界が一喜一憂した。OPEC総会が開かれるオーストリアのウィーンには世界中のメディアと石油関係者が情報を求めて殺到し、特にサウジアラビアのヤマニ石油相の周りには常に大きな人垣ができた。そして彼の一挙手一投足、片言隻語が余すところなく世界中に報道されたのである。彼はまさに「時の人」「時代の寵児」であった。ファイサル国王の全面的なバックアップを受けヤマニ石油相の地位は盤石であった。このころがまさに彼の絶頂期であったと言えよう。

(続く)

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