石油と中東

石油(含、天然ガス)と中東関連のニュースをウォッチしその影響を探ります。

荒葉一也SF小説「イスラエル、イランを空爆す」(14)

2010-09-16 | 中東諸国の動向

「国境の南」作戦(2)

彼らがこの3日間かけてたてた「国境の南作戦」。それはイスラエル戦闘機3機の発進後少しおいて同じ空軍基地から離陸する後続の3機に対処する作戦である。後続機とは大型空中給油機とそれを護衛する戦闘機2機の合計3機の編隊。9機のサウジアラビア戦闘機がヨルダン国境とハファル・アル・バテンのほぼ中間地点でイスラエルの3機を待ち伏せ、敵機の後方に回り込む。そして給油機と護衛機の間に割り込み3機を分断、味方の戦闘機がそれぞれ3機ずつで取り囲むという戦法である。

「彼らは離陸した後、先に発進してイランに向かった3機と同じ飛行ルートをたどる。最初の3機がイランのどこに向かい何をするかは先程話した通りだが、この3機は手出し無用だ。」

イスラエル戦闘機のミッションについてトルキ司令官は父親の国防相から聞いた内容を部下達に伝えた。

「後から飛んで来る3機のうち給油機だけサウジアラビア領空に誘導しそのままここに連れてこい。国境の南はサウド家の領地だ。領地に来た客人は丁重にテントにお迎えする。それがベドウィン流のもてなしと言うものだ。」
「敵の給油機がすんなりと誘導に従わない場合はどうしますか?」
「その時は貴様らは鷹になれ。我が領空であることを確認した上で給油機を撃墜するのだ。領空を侵犯した軍用機の撃墜は自衛権の行使として国際法上認められている。」
部下の質問に対しトルキはそう答えた。

「護衛の2機はどうしますか?」攻撃隊長の中佐が尋ねた。
「二人の従者は国にお帰りいただくのだ。2機とも給油機からできるだけ遠く引き離せ。但し撃墜する必要はない。彼らは何とかこちらを引き離し給油機の傍に戻ろうとするだろうが、しっかり取り囲んで飛び続けさせろ。」
「彼らはいずれ燃料が底をつく。そこはイラクか、さもなくばわが王国の領空だから砂漠に不時着する訳にもいくまい。結局Uターンして自国に戻るほかないはずだ。」

 (続く)

(この物語は現実をデフォルメしたフィクションです。)

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする