(注)本シリーズ1~18は「マイライブラリー(前田高行論稿集)」で一括してご覧いただけます。
http://mylibrary.maeda1.jp/0417BpOil2017.pdf
2017.7.17
前田 高行
(石油自給率が改善する米国、悪化する中国!)
(5)石油の需給ギャップおよび自給率の変化(1990年~2015年)
(図http://bpdatabase.maeda1.jp/1-3-G04.pdf 参照)
(図http://bpdatabase.maeda1.jp/1-3-G05.pdf 参照)
石油生産国の中でも人口が多く産業規模の大きな国は同時に多くの石油を消費する。例えば米国と中国はそれぞれ世界1位と5位の産油国であるが、消費量では世界1位と2位である。両国を合わせた世界シェアは生産量で18%、消費量では33%に達する。両国とも消費量が生産量を上回るため、米国は1965年以前から既に石油の輸入国であり、中国は1990年代前半に輸入国に転落している。
米国の場合2015年は生産量1,270万B/Dに対して消費量は1,940万B/Dであり、差し引き669万B/Dの需要超過で石油自給率は65%となる。1965年に78%であった米国の石油自給率は年々低下し1990年代には50%を切り、そして2000年代は40%を割るなどほぼ一貫して低下してきた。しかし同国の自給率は2007年の33%を底に改善しつつあり、2015年にはついに65%に達している。現在米国は必要な石油の6割以上を自国産原油で賄っていることになる。
一方、中国の場合1992年までは生産量が消費量を上回り自給率100%であったが、その後純輸入国に転じている。しかも生産と消費のギャップは年々広がり、2000年に153万B/Dであった需給ギャップが2015年には766万B/Dに拡大している。この結果2000年には69%であった自給率も急速に悪化し、2007年に50%を割り、2015年は36%まで落ち込んでいる。米国と逆に中国は必要な石油の6割以上を輸入に頼っていることになる。
インドも中国同様に年々需給ギャップが拡大している。1990年の同国の需給ギャップは50万B/Dであり、自給率は59%であった。その後需給ギャップは2000年に144万B/D、2010年に244万B/Dと年々拡大しており、2015年は328万B/Dに達している。その結果2016年の自給率は19%にまで低下している。
英国とインドネシアを見ると、かつて英国は北海で多くの石油を生産し、またインドネシアはOPECの有力な産油国として余剰生産量を輸出する石油の輸出国であったが、近年は両国とも油田が枯渇して生産量が減退する一方、国内消費量は年々増加した結果、石油の自給率が100%を切るようになっている。即ち英国の場合、2000年は生産270万B/Dに対して消費量は171万B/D自給率は157%であったが、その後自給率は急速に悪化、2016年の自給率は63%にとどまっている。
インドネシアも同様で1990年は生産量154万B/D、消費量65万B/Dで輸出余力は89万B/Dであった。しかし2000年代前半には自給率が100%を切る石油の純輸入国になっている。そのため同国はOPECを脱退したほどである。同国の自給率はその後も年々悪化し2016年は55%と、必要な石油の半分は輸入に頼っている。
その一方、ブラジルは深海油田の開発に成功し2000年末に85億バレルであった埋蔵量が2016年末には126億バレルにアップしており(第1章4項「8カ国の石油埋蔵量の推移」参照)、これに伴って生産量も急増している(第2章4項「主要産油国の生産量の推移」参照)。このため1990年に46%であった同国の自給率は2016年には86%にまで高まっている。
(石油篇消費量完)
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