(注)本シリーズ1~18は「マイライブラリー(前田高行論稿集)」で一括してご覧いただけます。
http://mylibrary.maeda1.jp/0417BpOil2017.pdf
2017.7.23
前田 高行
5.世界の石油精製能力(続き)
(半世紀で9倍に増えたアジア・大洋州の精製能力!)
(3)1965年~2016年の地域別石油精製能力の推移
(図http://bpdatabase.maeda1.jp/1-5-G02.pdf 参照)
1965年の全世界の石油精製能力は3,478万B/Dであったが、5年後の1970年には1.5倍の5,166万B/Dに増え、さらに1980年には2.3倍の7,896万B/D強になった。その後1980年代は横ばいであったが、2000年には1980年を超える8,200万B/Dとなり、さらに2009年には9千万B/Dを突破し2016年の世界の石油精製能力は9,743万B/Dに達している。過去半世紀の間に全世界の精製能力は3倍近くに増えているのである。
これを地域別にみると、1965年には北米及び欧州・ユーラシア地域の精製能力はそれぞれ1,190万B/D、1,319万B/Dとこの2つの地域だけで世界の72%を占めていた。その他の地域はアジア・大洋州及び中南米がそれぞれ10%、中東は5%で、アフリカはわずか2%に過ぎなかった。しかしその後、アジア・大洋州の伸びが著しく、1975年には1千万B/Dを突破、さらに1990年代後半に2千万B/D、また2012年には3千万B/Dを超え、2016年末の精製能力は3,282B/Dに達している。1965年に比べ精製能力は9倍に拡大しており、この間に北米、欧州・ユーラシアを追い抜き世界最大の石油精製地域となっている。
欧州・ユーラシア地域は1965年に1,319万B/Dであった精製能力が1975年には3千万B/Dを超え第二次オイルショック時の1980年には3,200万B/Dに達した。しかしこれをピークにその後は減少の一途をたどり2016年には2,330万B/Dまで落ち込んでいる。その結果世界全体に占める割合も1975年の43%から2016年には24%まで低下している。
北米地域については1965年の1,190万B/Dから1980年には2,200万B/Dまで伸びたが、その後需要の停滞とともに精製能力は削減され2000年までのほぼ20年間は1,900万B/D前後にとどまっていた。2000年代に入り再び2千万B/Dを突破し、2016年の精製能力は2,211万B/Dである。
中東、アフリカ地域は世界に占める割合は小さいものの、精製能力拡大のペースはアジア地域に決して引けを取らない。中東地域の場合1965年の170万B/Dが2016年には948万B/Dと半世紀で5.6倍に膨張している。またアフリカ地域は1965年にわずか82万B/Dにすぎなかった精製能力が2016年には4.2倍の346万B/Dに増加している。2010年から2016年の過去6年間だけで比較すると北米、中東、アフリカ及びアジア・大洋州地域は増加しているが、欧州ユーラシアは0.97倍と設備能力が減少している。
アジア、中東、アフリカの新興地域ほどではないにしろ、北米も過去5年間でわずかながら増加しているのは注目に値する。シェールオイルの開発などにより石油の上流部門が過当競争に陥り利益が出ない体質になったのに対して、逆に原油価格が下がったことにより下流部門の石油精製が利益の稼ぎ頭となったことが、北米の精製能力拡大に結び付いているようである。
(続く)
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