(注)本シリーズ1~18は「マイライブラリー(前田高行論稿集)」で一括してご覧いただけます。
http://mylibrary.maeda1.jp/0417BpOil2017.pdf
2017.7.18
前田 高行
(下げ止まらない原油価格!)
4.指標3原油の年間平均価格と1976~2016年の価格推移
(図http://bpdatabase.maeda1.jp/1-4-G01.pdf 参照)
ここでは国際的な原油価格の指標として使われる米国WTI(West Texas Intermediate)原油、英国北海Brent原油及びドバイ原油の3種類の原油の年間平均価格(ドル/バレル)とその推移を検証する。
2016年の3原油の年間平均価格はBrent原油は43.73ドル(バレル当たり。以下同様)、WTI原油43.34ドル、ドバイ原油41.19ドルでありBrent価格を100とした場合WTI原油は99、ドバイ原油は94であり、WTIとBrentの値差はほとんどなかった。
これら3原油の1976年以降の価格の推移は2010年頃までほぼ同じような歩みを示している。Brent原油で見ると、1976年の同原油の年間平均価格は12.80ドルであった。1979年の第二次オイルショックを契機に価格は急騰、1980年には約3倍の36.83ドルに達した。その後景気の低迷により価格は一転して下落、1986年には14.43ドルと第二次オイルショック前の状況に逆戻りしている。
この状況は1990年代も続きBrentの年間平均価格は20ドル前後で推移している。ところが1998年の12.72ドルを底に急激に上昇に転じ1999年は17.97ドル、2000年には28.50ドルとわずか2年で2倍以上に急上昇した。その後一旦下落したものの2003年からは上げ足を速め2004年には40ドル弱、2005年に50ドルの大台を超えるとさらに急騰、2008年の年央にはついに史上最高の147ドルに達し、同年の平均価格も100ドル目前の97.26ドルを記録している。
同年のリーマンショックで2009年には一旦61.67ドルまで急落したが、再び上昇気流に乗り2011年の年間平均価格はついに100ドルを超えて111.26ドルになり、その後2012年、2013年も平均価格は110ドル前後と原油価格は歴史的な高値を記録、これは2014年前半まで続いた。
しかしその数年前から米国のシェールオイルの生産が急激に増えた結果、市場では供給圧力が増し、Brent原油価格は米国WTI原油に引きずられ弱含みの状況になった。これに対してOPECは2014年6月の定例総会で生産目標3千万B/Dの引き下げを見送ったため市況は一挙に急落、年末にはついに50ドル割れの事態となった。2015年前半は一時60ドルまで値を戻したが、後半はさらに値下がりし、年末には40ドルを切った。この結果Brent原油の2015年の年間平均価格は52.39ドルとなりわずか2年間で半値以下に暴落している。
暴落した最大の要因はOPECが減産調整できずサウジアラビアなど主要産油国が増産に走ったことにある。これに世界景気の停滞が拍車をかけ需給バランスが完全に崩れ原油価格が暴落したのである。サウジアラビアは近年の米国シェールオイルの増産が価格崩壊の主要因と見ており、価格を低水準に抑えることでシェールオイルを抑え込む戦術を取ったとされる。
しかしOPECの戦術は功を奏さず、シェールオイルの生産業者が技術革新によりコスト削減に努めた結果、原油市場の供給圧力は収まらず2016年年初には30ドルを割る状況となり同年の年間平均価格はBrent原油が43.73ドル、WTI原油は43.34ドルにとどまっている。このような低価格によりOPEC産油国は財政難に陥り減産の機運が生まれた。OPECはロシアなど非OPEC産油国を巻き込んだ協調減産体制を構築し、今年1月以降来年3月迄合計180万B/Dの減産を実施中である。現在(2017年7月)Brent原油は45ドルから50ドルの間を上下しており、このまま推移すれば昨年の平均価格を上回ると見込まれるが、協調減産を行っているサウジアラビアやロシアが見込んでいる50ドルあるいは60ドル以上の価格上昇は相当厳しく、2011年から2013年にかけての100ドルを超す価格の再来はとても期待できない状況である。
Brent、WTI、ドバイ3原油の1976年以降の価格を比較すると、まず1976年の3原油の平均価格はBrent 12.80ドル、WTI 12.23ドル、ドバイ 11.63ドルでBrentが最も高かった。しかし1980年になるとBrent 36.83ドル、WTI 37.96ドル、ドバイ 35.69ドルとなり、3原油の中でWTIが最も高くなった。これ以降2009年まで年間平均価格はWTIがBrentを上回る状態が続いた。
(続く)
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