(注)本シリーズ1~18は「マイライブラリー(前田高行論稿集)」で一括してご覧いただけます。
http://mylibrary.maeda1.jp/0417BpOil2017.pdf
2017.7.20
前田 高行
5.世界の石油精製能力(続き)
(対照的な1位米国と2位中国、設備拡張に走る米国と過剰設備解消に乗り出した中国!)
(2) 国別石油精製能力
(表http://bpdatabase.maeda1.jp/1-5-T01.pdf 参照)
世界で最も高い精製能力を有する国は米国で、2016年は1,862万B/D、世界全体の19%の設備を所有している。第二位は中国の1,418万B/D(シェア15%)であり、両国だけで世界の3分の1の精製能力がある。精製能力1千万B/D以上はこの2カ国だけであり、第3位のロシアは642万B/Dである。
2011年に日本を追い抜いたインドの2016年の精製能力は462万B/Dで対前年比7.3%増である。一方の日本は前年より3.2%減の360万B/Dとなり両国の差は広がっている。石油消費量でも日本の404万B/Dに対してインドは449万B/Dと日本を上回っている。日本では経済産業省の主導で精製設備の集約が推し進められる一方、インドは慢性的な精製設備不足に悩まされており(次項「精製能力の推移」及び主要国の「製油所稼働率」参照)、両国の精製能力の格差は今後ますます広がるものと思われる。
日本に次いで高い精製能力を有するのは韓国(323万B/D)で、さらに第7位以下はサウジアラビア(290万B/D)、ブラジル(229万B/D)、ドイツ(202万B/D)である。これら3か国のうち精製能力が前年を下回ったのはドイツだけであり、日本とドイツで精製設備の集約が進んでいることをうかがわせる。サウジアラビアは原油の生産国であるが国内に数ヶ所の輸出専用製油所が稼働しており、石油製品の輸出により付加価値の増大を追求しているが、それと共に国内の石油製品の需要が急増しているため製油所の新設が相次いでいる。
精製能力を前年と比較すると米国の能力増加率は+1.7%であり上位10カ国のなかではインド(+7.3%)、韓国(+4.0%)に次いで高い。原油価格の下落により精製コストのうち原料費が大幅に低下、石油産業では上流部門(原油販売)よりも下流部門(石油製品販売)が儲かる体質となっており、米国の石油業界では付加価値の高い石油精製への方向転換が進んでいるようである。
(続く)
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