(注)本シリーズ1~18は「マイライブラリー(前田高行論稿集)」で一括してご覧いただけます。
http://mylibrary.maeda1.jp/0417BpOil2017.pdf
2017.7.26
前田 高行
5.世界の石油精製能力(続き)
(対照的なインドと中国:100%を超える稼働率のインドと70%台の中国!)
(5)主要な国と地域の精製設備稼働率(2000~2016年)
(図http://bpdatabase.maeda1.jp/1-5-G04.pdf 参照)
精製能力に対して実際に処理された原油の量(通油量:Refinery throughputs)で割ったものが設備の稼働率である。ここでは日本、米国、中国、インド及び欧州・ユーラシア地域について2000年から2016年の稼働率を比較検討する。
2000年には米国とインドが90%を超える高い稼働率を示し、日本も83%を記録している。これに対し中国および欧州・ユーラシア地域は74~75%にとどまっていた。インドはその後も高い稼働率を維持し2003年以降は稼働率100%を超える状況が続き、2016年の稼働率は107%であった。前項の精製能力の推移に見られるとおりインドは2000年以降精製能力を拡大しており、2016年には2000年の2.1倍の能力に達しているが、需要の伸びに追い付かず慢性的な精製能力不足であることがわかる。
米国の稼働率は2000年の91%をピークに年々低下し2009年には82%まで下がった。その後稼働率は毎年「上がり2016年には87%に戻っている。同国の精製能力は2000年の1,660万B/Dに対して2016年は1,862万B/Dに増加しており、近年経済が回復しガソリンなどの石油製品の需要が堅調であることを示している。
日本は設備能力の削減により漸く稼働率が上がりつつある。前項に示したとおり日本の精製能力は2000年の501万B/Dから2016年には360万B/Dへと3割近く減少している。その間の稼働率は2000年の83%が2005年には91%に上昇し設備廃棄の効果が見られた。その後稼働率は再び80%台前半に低迷しており、2012年は80%に落ちたため、更なる設備削減が行なわれた結果、2016年には2005年の水準の91%まで回復した。
中国の精製能力は2000年の541万B/Dから2016年には2.6倍の1,418万B/Dに急拡大している。その間、2008年以降の稼働率は70%そこそこにとどまっており景気低迷の影響がうかがわれる。しかし2015年および2016年の両年は同国史上初めて精製能力が前年を下回った。その結果稼働率は2015年75%、2016年78%と上昇傾向にある。
欧州・ユーラシア地域の精製能力は2000年の2,504万B/Dから2016年には2,330万B/Dに減少している。この間の稼働率は80%前後とほぼ横ばい状態であり、現在でも設備過剰感が残っているようである。
(石油篇完)
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