(注)本シリーズ1~18は「マイライブラリー(前田高行論稿集)」で一括してご覧いただけます。
http://mylibrary.maeda1.jp/0417BpOil2017.pdf
2017.7.6
前田 高行
(鎬を削る米国、サウジアラビア及びロシアの3か国!)
(4)主要産油国の生産量の推移(1990年、 2000年、2016年)
(図http://bpdatabase.maeda1.jp/1-2-G03.pdf 参照)
産油国の中には長期的に見て生産量が増加している国がある一方、年々減少している国もある。ここでは米国、サウジアラビア、ロシア、イラン、イラク、UAE、中国、ブラジル及びベネズエラの9カ国について生産量の推移を見てみる。
米国は1980年代半ばまで1千万B/Dの生産量を維持していたが、その後は年を追う毎に減り1990年には891万B/D、さらに2000年には773万B/Dに減少している。そして2008年にはついに678万B/Dまで落ち込んだが、同年以降石油生産は上向きに転じ2016年には1,235.4万B/Dとサウジアラビア、ロシアを抑えて世界一の産油国になっている。米国の2016年の生産量は2000年の1.6倍である。
サウジアラビアの生産量は1990年の711万B/Dが2000年には947万B/Dに増加、2016年は1,234.9万B/Dに達している。これは1990年比1.7倍という顕著な増加である。ロシアの石油生産は1990年に1千万B/Dを超えていたが、ソ連崩壊の影響で90年代は急減、2000年の生産量は658万B/Dに落ち込んだ。しかし同国はその後再び生産能力を回復し2016年は革命前を超える1,123万B/Dを記録している。
3か国の1990年、2000年および2016年の生産量を比較すると、1990年はロシアが最も多く(1,034万B/D)、2000年はサウジアラビア(947万B/D)、そして2016年は米国(1,235.4万B/D)とそれぞれの節目で3か国の首位が交替している。そして3か国とも生産量はその他の産油国を大きく引き離している。今後もこn3か国の間で首位の座を争う3強の時代が続くことは間違いないであろう。
イラン、イラク、UAE及び中国各国の1990年、2000年、2016年の生産量を比べるといずれの国も過去26年の間に生産量が増加しており2016年には400万B/D台で横並び状態にある。しかし各年代の順位を見ると、1990年はイラン、中国、UAE、イラクの順であり、2000年の順位は中国、イラン、UAE、イラクとなり中国とイランが入れ替わっている。そして2016年の4か国の順位はイラン、イラク、UAE、中国であり、中国が最も少ない。
人口が桁違いに多い中国は消費量も今や米国に次ぎ世界第2位であるが(次章「石油の消費量」参照)、国内生産量が伸び悩んでいるのは同国の石油埋蔵量が頭打ち(あるいは減少傾向にある)ことを示している。これに対してイランとイラクは1990年から2016年の間にそれぞれ国際政治の影響を受け(イラクは湾岸戦争、イランは経済制裁)生産量が停滞したが、両国ともにそれなりの人口を擁しているため国内消費及び外貨獲得のため石油生産を拡大する必要があり、今後も増産傾向が続くことは間違いなさそうである。一方UAEは今後とも生産原油の大半を輸出に回すことになり、このため生産量は国際原油市況に左右されることになるであろう。
ブラジルとベネズエラの南米二大産油国は対照的である。ブラジルの1990年の生産量はわずか65万B/Dであったが、2000年には128万B/D、2016年は261万B/Dと1990年の4倍に増えている。一方のベネズエラは1990年224万B/D、2000年311万B/Dとブラジルを大幅に上回り、UAEあるいは中国と同レベルの生産量を誇っていたが、2016年にはここで比較した9カ国の中で唯一2000年を下回る生産レベルに落ち込み、ブラジルよりも少ない状況である。世界一の石油埋蔵量を誇る(前章「埋蔵量」参照)ベネズエラの生産量が落ち込んだのは偏に為政者の失政に起因していると言えよう。
(石油篇生産量完)
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