国際石油企業(International Oil Companies, IOCs)の2020年第4四半期(10-12月)及び年間(1-12月)の決算が発表された。本稿ではExxonMobil(米)、Shell(英蘭), BP(英), Total(仏)及びChevron(米)の5社を取り上げ、各社の売上高、利益、設備投資額、キャッシュフロー及び石油・ガス生産量を概観し、さらに5社の業績比較を行う。
- 5社の2020年第4四半期(10-12月)及び通年(1-12月)業績概要
以下の各表参照。
表A:http://menadabase.maeda1.jp/1-D-4-20A.pdf (利益、売上、設備投資)
表B:http://menadabase.maeda1.jp/1-D-4-20B.pdf (キャッシュフロー)
表C:http://menadabase.maeda1.jp/1-D-4-20C.pdf (石油・ガス生産量)
(近年まれに見る大幅な赤字220億ドル!)
- ExxonMobil
*同社ホームページ:
(1)売上高
ExxonMobilの2020年1-12月の売上高は465億ドルであり、また通年売上高は1,815億ドルであった。前年同期比ではそれぞれ▲31%及び▲32%の大幅な減収である。減収の要因は新型コロナウィルス(COVID-19)禍により世界経済が大きく減速、原油及び天然ガスの需要と価格が同時に大幅に下落したためである。因みに原油価格について検証すると、代表的な指標油種である北海Brent原油の2019年の平均価格は64.21ドル/バレルであり、これに対して2020年のそれは41.83ドルであり40%下落している[1]。後述する通りExxonMobilの2020年原油・天然ガスの生産量は前年に比べ原油が1.6%減、天然ガスが9.8%減少、合計生産量で4.8%の減少であり、このことから減収の主たる要因は価格の下落にあったことが解る。
(2)利益
10-12月期及び通年の損益はそれぞれ▲201億ドル及び▲224億ドルであり、10-12月期に年間に匹敵する損失を計上している。前年及び前年10-12月期がいずれも利益を計上していることと比べ今年度決算は最悪であったと言えよう。
通年利益のうち上流部門の利益は2019年の144億ドルに対して2020年は▲200億ドルであり、差引344億ドルのマイナスとなっている。一方、下流部門も2019年の23億ドルの利益に対し2020年は11億ドルの損失であり、上流部門ほど大きくはないが同様の傾向を示している。(注、最終損益額には石油化学部門その他の損益が合算されているため、全体の損益額と上流・下流部門の損益合計額とは一致しない。)
(3)売上高利益率
通年ベースの売上高利益率は▲12.4%であり、前年の5.4%からマイナスに転落している。
(4)設備・探鉱投資
2020年の年間の設備・探鉱投資額は214億ドルであり、2019年の311億ドルに比べ31%減少している。
(5)キャッシュフロー
ExxonMobilの2020年の営業キャッシュフローは147億ドルであり、2019年の297億ドルにくらべて半減している。
なおExxonMobilの決算資料では営業キャッシュフローのみが示されており、投資及び財務キャッシュフロー並びに年末残高は示されていない。
(6)石油・ガス生産量
昨年のExxonMobilの石油生産量は日量平均2,349千バレル(以下B/D)であり、前年(2019年)の2,386千B/Dに比べ2%減少している。天然ガスは日量平均8,471百万立法フィート(以下mmcfd)であり前年比9.8%減少であり、石油を上回る減産となっている。
(続く)
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前田 高行
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[1] Shell決算資料より