石油と中東

石油(含、天然ガス)と中東関連のニュースをウォッチしその影響を探ります。

見果てぬ平和 ― 中東の戦後75年(40)

2023-08-18 | 中東諸国の動向

(英語版)

(アラビア語版)

 

(目次)

 

第2章 民戦後世界のうねり:植民地時代の終焉とブロック化する世界(2)

 

040.対照的なフランスと英国の植民地支配(2/3)

 これに対して1798年の革命でブルボン王朝を倒し共和制を樹立したフランスには共和制国家としての長い伝統がある。フランス共和国憲法第2条で「自由・平等・博愛」を国家の標語とし、それを象徴する三色旗(トリコロール)を高々と掲げる以上、シリア及びレバノンは共和制国家でなければならなかった。但しフランスは実質的な支配権は失いたくなかったため、シリアではシーア派少数部族のアラウィ派を権力の座につけた。植民地支配で少数派をバーチャルな(見かけの)支配者に起用するのは宗主国の常套手段である。フランスは外部の支援を必要とする少数派を陰で操り、多数派を弾圧あるいは分裂させることで自国に有利な権力構造を作り上げたのである。

 

 「自由・平等・博愛」を標榜する表の顔と植民地を意のままに操ろうとする裏の顔はフランス外交の矛盾であり、その矛盾を突いたのがソ連である。第二次大戦後、唯一の社会主義国家としてソ連は世界中に階級闘争を展開し始めた。それは中東ではアラブ民族主義と並ぶもう一つの柱である社会主義運動として広まり、シリアの共和制はフランスの意図しない方向に走り出した。このような事態に対してフランスは自らの共和制という足かせに阻まれ強圧的な行動が取れない。フランスはすべてを混乱させたままで逃げ出すのである。後始末を引き受けるのは結局米国と言うことになる。ベトナム戦争でベトコン(ベトナム共産党)に敗れ後始末を米国に委ねたのと全く同じ構図である。戦乱の世でフランスが頼りにならないことは歴史の事実である。つまり中東では昔も今もフランスは問題解決の主役たりえないのである。

 

(続く)

 

 

荒葉 一也

E-mail: Arehakazuya1@gmail.com

 

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EI世界エネルギー統計(旧BP統計)2023年版解説シリーズ(9)消費量3

2023-08-18 | EIエネルギー統計

2.世界の石油・天然ガスの消費量(続き)

(2-3) 米国、中国、日本、インド4カ国の過去10年間の消費量推移

(日本を追い抜き格差広げるインド!)

(2-3-1)石油 (図http://bpdatabase.maeda1.jp/3-G03a.pdf参照)

 2022年の石油消費量が世界1位から3位までの米国、中国、インド及び世界6位の日本について2013年から2022年まで10年間の石油消費量の推移を追う。

 

 2013年の米国の消費量は1,800万B/Dであり、中国1,060万B/D、日本450万B/D及びインド370万B/Dであった。米国は2019年に1,940万B/Dに達し、2020年はコロナ禍のため1,720万B/D強に急減したが、2022年には1,910万B/Dまで回復している。

 

 これに対し中国の消費量は2013年以降2021年まで一本調子で増加、2017年に1,300万B/Dを突破、2021年には1,490万B/Dに達した。2022年は過去10年間で初めて前年度を下回る1,430万B/Dにとどまり、それまで縮まる一方であった米国との格差が再び開く結果となっている。

 

 日本の消費量は長期減少傾向にあり、2013年には米国、中国に次いで世界3位であったが、2015年にはインドに追い抜かれ世界4位に転落した。その後さらにサウジアラビア及びロシアにも追い抜かれ、昨年の消費量は世界6位の334万B/Dであった。

 

(アジアの天然ガス消費をけん引する中国!)

(2-3-2)天然ガス  (図http://bpdatabase.maeda1.jp/3-G03b.pdf参照)

 米国(2022年の天然ガス消費量世界1位)、中国(同3位)、日本(同7位)及びインド(同15位)の2013年から2022年までの消費量の推移を見ると、2013年は米国が7,070億立方メートル(㎥)、次いで中国が1,719億㎥、日本1,235億㎥、インド490億㎥であった。米国とその他3カ国の格差は4倍以上であった。その後中国の消費量は急ピッチで増加、2016年には2千億㎥、2019年には3千億㎥を突破、2022年の消費量は3,757億㎥を記録し、米国との格差は2倍近くに縮まっている。

 

 一方この間日本の消費量は2014年の1,248億㎥を天井にその後は年々減少し、2022年には1,005億㎥となり中国の4分の1に縮小している。インドは2013年の消費量490億㎥に対し2022年は582億㎥であり過去10年間の増加率は低い。

 

(まだまだ格差が大きい1位米国と2位中国!)

(2-3-3)石油+天然ガス(図http://bpdatabase.maeda1.jp/3-G03c.pdf参照)

 石油とガスを合計した消費量を米国、中国、インド及び日本の4カ国で比較すると、まず2013年の消費量は米国が3,018万B/D(石油換算、以下同じ)である。中国は1千万B/Dを超えており(1,353万B/D)、日本とインドは663万B/D及び456万B/Dであった。米国は2019年に3,410万B/Dまで伸び、2020年はコロナ禍の影響で急落したが、2022年には3,430万B/Dに達している。

 

 中国は2021年まで一度も減少することなく同年の消費量は2,145万B/Dまで増加したが、2022年は若干減少し2077万B/Dにとどまっている。2013年に2.2倍であった米国と中国の格差は、その後年々縮小したが2022年の格差は1.7倍でありまだ両国の開きは大きい。

 

日本は石油、天然ガス共に過去10年間消費が減少しており2022年の消費量は507万B/Dで2013年を150万B/D以上下回っている。インドは天然ガス消費は停滞したが、石油消費は増加している。この結果合計消費量では2018年に日本を超え、その後格差は広がり2022年には日本を100万B/D以上上回っている。

 

(続く)

 

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     前田 高行     〒183-0027 東京都府中市本町2-31-13-601

                   Tel/Fax; 042-360-1284, 携帯; 090-9157-3642

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