石油と中東

石油(含、天然ガス)と中東関連のニュースをウォッチしその影響を探ります。

EI世界エネルギー統計(旧BP統計)2023年版解説シリーズ(10)生消ギャップ1

2023-08-20 | EIエネルギー統計

3.主要国の石油・天然ガスの生産・消費ギャップと自給率

(3-1) 石油の生産・消費ギャップ(差)及び自給率の推移(2013~2022年)

(3-1-1)石油

 世界の石油生産国と消費国を並べると(表2-T01a及び表3-T01a参照)、米国が生産、消費量で共に世界一であり、中国(生産6位、消費2位)、サウジアラビア(生産2位、消費4位)、ロシア(生産3位、消費5位)など生産・消費の両面で世界のトップクラスの国が少なくない(日本やドイツのように消費が多く、生産がゼロの国はむしろ例外)。

 

 このような国について生産量と消費量のギャップを比較すると、生産量が消費量を上回る国とその逆のケースがある。生産量が消費量を上回る場合はその差が輸出され、逆に消費量が生産量を上回る場合はその差が輸入で埋め合わされることになる。また、生産量を消費量で割った数値をパーセントで表すと、100%を境にその国の石油自給率を示すことになる。

 

 ここではサウジアラビア、ロシア、米国、中国、インド、イラン及びブラジルの7カ国について2013年から2022年までの各国の生産量と消費量のギャップを点検し、また米国、中国及びインド3か国について同期間中の自給率の推移を見てみる。

 

(ギャップが急速に改善する米国、輸出余力を維持する露・サウジ!)

(i)主要国の生産・消費ギャップ

(図http://bpdatabase.maeda1.jp/4-G01a.pdf参照)

 2013年における米国の石油生産量は1,010万B/D、消費量は1,799万B/Dでその差は▲789万B/Dであった。同様に中国は▲635万B/D(生産422万B/D、消費1,056万B/D、以下同じ)、インドは▲280万B/D(92万B/D、372万B/D)で共に石油の純輸入国であった。

 

 これに対してロシアは生産量1,081万B/D、消費量322万B/Dで差引759万B/Dの輸出余力があった。サウジアラビアの生産量と消費量はほぼロシアに並び、差引793万B/Dの輸出余力を有していた。イランはこれら2国よりは低いものの生産量が消費量を173万B/D上回り、ブラジルは消費量が生産量を54万B/D上回っていた。

 

 その後、中国とインドは消費が生産を大きく上回り、2022年には生産と消費のギャップは中国が▲1,018万B/D(生産411万B/D、消費1,430万B/D)、インドが▲445万B/D(同74万B/D、519万B/D)に拡大している。これに対して米国は生産が消費の伸びを上回り、2022年には生産と消費のギャップは▲137万B/Dに縮小、10年前より652万B/D改善されている。

 

 ロシアとサウジアラビアの輸出余力は2013年以降も大きな変化は無く、2022年はサウジアラビアが826万B/D、ロシアは763万B/Dである。イランも引き続き生産量が消費量を上回っているが、そのギャップはほぼ変わらず、2022年の輸出余力は191万B/Dである。ブラジルは深海油田の開発等による生産量の増強により、2010年には▲54万B/Dの消費超過であったが、2022年には逆に60万B/Dの生産超過となっている。

 

(10年間で大きく明暗を分けた米中の石油自給率!)

(ii)米国・中国・インドの自給率

(図http://bpdatabase.maeda1.jp/4-G02a.pdf参照)

 生産量を消費量で割った自給率について米国、中国及びインドの2013年以降の推移を見ると、まず2013年の自給率は米国と中国がそれぞれ56%と40%で米国の自給率が16ポイント高かった。これに対しインドの自給率は25%にとどまっていた。即ち米国は4割強、中国は6割、インドは7割強を輸入に依存していたことになる。その後、中国とインドは年々自給率が低下し、2022年には中国は29%、インドは14%に下がり、両国とも石油の輸入大国になっている。

 

これに対して米国は過去10年間で急激に自給率が改善し、2021年には93%に達し、米国は石油の完全自給まであと一歩に迫っている。かつて米国は不足する石油を主として不安定な中東産油国に依存していたが、エネルギー安全保障の面からも米国は外国に依存しない強い国家に変身したと言えよう。

 

(続く)

 

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     前田 高行     〒183-0027 東京都府中市本町2-31-13-601

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