はじめに
国内1位、2位の石油企業ENEOSホールディングス(以下ENEOS)と出光興産(以下 出光)の2023年度決算(2023年4月~2024年3月)が相次いで発表された。国際石油企業5社(ExxonMobil, Shell, BP, Total及びChevron、以下メジャーズ)の2023年決算(2023年1月~12月)については既に「五大国際石油企業2023年業績速報」としてレポートした。本稿はこれら7社にサウジアラビアの国営石油会社SaudiAramco(以下アラムコ)を加えた8社の決算資料の中から利益、売上高、キャッシュフローを抽出、ドル建て換算で比較したものである。
8社は以下の通り決算期間、業態及び規模、決済通貨等が異なり単純に比較することの意味は少ないが、そのことを踏まえたうえで本レポートをお読みいただきたい。
(1)決算期間の違い
メジャーズ及びアラムコは四半期決算をメインとし3カ月ごとの数値を公表、第4四半期(10-12月)の決算資料で年間の業績を提示している。これに対してENEOS及び出光の決算期は4月から翌年3月までであり、3カ月ごとに期初(4月)からの累計額を表示している(例えば9月末は4-9月の6か月間、12月末は4-12月の9か月間の累積値である)。このように決算期間が3か月ずれているため景気或いは原油価格の変動が及ぼす影響にタイムラグがあらわれる。
(2)業態及び規模の違い
アラムコは原油の開発生産を主力事業としており、その販売量は世界一である。メジャーズは原油の開発生産及び石油製品の販売の双方で世界規模の事業を展開しており、最近では天然ガスの生産増強に加え太陽光など非化石エネルギーの生産販売にも注力している。これに対して邦系2社は石油精製による製品販売を事業の中核とし、しかも日本国内市場を対象としており規模が小さい。
(3)決済通貨の違い
アラムコ及びメジャーズの決算はドル建てであり(但しTotalEnergiesはユーロ建てとドル建ての併記)、一方邦系2社は円建てである。本稿では比較のため2社の決算説明資料に明記された各社の換算レートを用いてドル建てに換算し比較している。従って例えば円安であればメジャーズ及びアラムコとの見かけ上の格差が拡大し、一方円高であれば格差は縮小することになる。因みに今期(2023年度)の為替レートはENEOS145.0円/ドル、出光144.6円/ドルである。
アラムコ、メジャー五社、ENEOS及び出光興産の決算ホームページは下記のとおり。
Aramco:
https://www.aramco.com/-/media/publications/corporate-reports/reports-and-presentations/2023/fy/saudi-aramco-fy-2023-full-financials-english.pdf
ExxonMobil:
https://corporate.exxonmobil.com/news/news-releases/2024/0202_exxonmobil-announces-2023-results
Shell:
https://www.shell.com/media/news-and-media-releases/2024/fourth-quarter-2023-results-announcement.html
BP:
https://www.bp.com/en/global/corporate/news-and-insights/press-releases/fourth-quarter-2023-results.html
Total:
https://totalenergies.com/media/news/press-releases/fourth-quarter-and-full-year-2023-results
Chevron:
https://www.chevron.com/newsroom/2024/q1/chevron-reports-4q-2023-results
ENEOSホールディングス:
https://www.hd.eneos.co.jp/ir/library/statement/
出光興産:
https://ssl4.eir-parts.net/doc/5019/tdnet/2439015/00.pdf
(続く)
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