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第7章:「アラブの春」―はかない夢のひと時(17)
184 シリア情勢:敵の敵は味方か敵か?(1/5)
シリア内戦は基本的にはアサド政府とその退陣を求める反政府組織の軍事闘争である。国際的な力学関係でみるとアサド政府を支援しているのがイランとロシア。イランはアサド一族がアラウィ派(シーア派の一派)であることが主な理由であり、ロシアはシリアに中東で唯一の軍港を保有している。ロシアにとって冬季に凍結するバルト海に比べ黒海からボスポラス海峡を抜けて地中海に至る航路は軍事的に重要な意味があるためアサド政権側に立っている。これに対して米国など西欧諸国は反政府組織を支援している。独裁政権を打倒し自由な民主主義政権を樹立することが反政府組織支援の大義名分である。またサウジアラビアなどのアラブ諸国とトルコも一致して反政府支援である。こちらはシーア派のアサド政権及びこれをバックアップするイランに対する対抗措置である。
ところがシリアの反政府組織は一枚岩ではない。それどころか思想信条を異にする呉越同舟の集団である。構成メンバーの勢力の消長は激しいが、主なものとしてはクルド人民防衛隊(YPG)と複数のアラブ系反政府勢力から成るシリア民主軍(SDF)並びにヌスラ戦線がある。そして政府組織、反政府組織のいずれとも異なる第三勢力としてIS(イスラム国、別称ISIL、ISIS、ダーイシュ)がある。
(続く)
荒葉 一也
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