2018.8.20
前田 高行
(5)主要6カ国の生産・消費ギャップおよび自給率
世界の主要な天然ガスの生産国と消費国を並べると、日本やドイツを除く多くの国が天然ガスの消費国であると同時に生産国であることがわかる。例えば米国とロシアはそれぞれ世界1位と2位の生産国であり同時に消費国でもある(本稿2-(2)および3-(2)参照)。カナダは生産国としては世界4位、消費国としても世界6位であり、また中国も生産量世界6位、消費量世界3位である。中東の有力産油国であるUAEも天然ガスに関しては生産量世界14位、消費量は世界11位である。また近年天然ガス輸出国として頭角を現しているオーストラリアは生産量世界8位、消費量は世界22位である。
ここではこれら6カ国について生産量と消費量のギャップ(需給ギャップ)の推移を見ると共に、米国、中国、UAE、英国、インド及びクウェイトの6カ国について天然ガス自給率を検証してみる。
(過去10年間1,800億㎥前後の余裕を維持するロシア!)
(5-1)各国の生産量と消費量のギャップ
(図http://bpdatabase.maeda1.jp/2-3-G04.pdf 参照)
6カ国のうちで2017年の生産量が消費量を上回っているのはロシア、カナダ、オーストラリアの3カ国であり、米国、中国及びUAEの3か国は消費量が生産量を上回っている。つまり前3カ国は天然ガスの輸出余力があり、後者の3カ国は天然ガスを輸入する必要があることを示している。
6カ国の過去11年間(2007~2017年)の需給ギャップを見ると、2007年のロシアは生産量6,016億㎥に対し消費量は4,288億㎥であり、差し引き1,728億㎥の生産超過(輸出余力)となり、ヨーロッパ諸国に輸出されたことになる。ロシアの需給ギャップは2009年に一時1,500億㎥を割ったが、その後は再び上昇して2017年の需給ギャップは過去10年で最大の2,108億㎥に達している。このことは2008年にリーマンショックのためヨーロッパの消費が一時的に減ったものの、その後は新たな国内ガス田の開発及びLNG設備の新設により輸出余力が向上していることを示している。
カナダもロシアと同様生産量が消費量を上回っているが、ロシアとは対照的に2006年以降は需給ギャップが縮小している。同国の2007年の生産量は1,747億㎥、消費量は909億㎥で差し引き838億㎥の余剰生産であったが、その後余剰生産量は減少し続け2013年には539億㎥に縮小している。2017年は生産量1,764億㎥に対し消費量は1,157億㎥であり余剰生産量は606億㎥まで回復している。
2007年に米国は1,022億㎥の消費超過であった(生産5,219億㎥、消費6,241億㎥)。2010年までは毎年600億㎥を超える消費超過の状況が続いたが、2011年以降はギャップが急速に小さくなり、2015年のギャップは33億㎥にまで下がり、2017年も49億㎥と、消費超過の量は50億㎥を下回っている。これは言うまでもなくシェールガスの開発によるものである。
中国の場合、2007年は生産量698億㎥、消費量711億㎥で天然ガスの需給はほぼバランスしていた。しかしその後消費量の増加が顕著で需給ギャップが年々大きくなっている。2017年は生産量1,492億㎥に対し消費量は2,404億㎥に達し、正味912億㎥が輸入されたことになる。この傾向が今後も続くことはほぼ間違いないであろう。
オーストラリアは新規ガス田の開発により2017年の生産量は2007年の2.7倍に増加している。これに対して同じ期間の消費の伸びは1.4倍であり余剰生産量は137億㎥から716億㎥に拡大、LNGとして輸出に回されている。UAEにおける天然ガスの用途は発電及び海水淡水化用燃料であり、かつては油田の随伴ガスで賄っていたが、電力・水の需要が急増し2008年以降は国産のガスだけでは足らなくなり、隣国のカタールからパイプラインで輸入している状況である。2017年の輸入量は117億㎥に達している。
(続く)
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