(英語版)
(アラビア語版)
(目次)
プロローグ(6)
006.中東を流れる三つのアイデンティティ(1/3)
ここから先、筆者なりの見方で戦後75年の中東の歴史をたどっていくつもりであるが、中東には三つのアイデンティティがあると筆者は考える。一つは「血」のアイデンティティ。二つ目は「心」のアイデンティティ。そして最後の一つは「智」のアイデンティティである。今後各章でこれら三つのアイデンティティについて頻繁に触れることになるが、ここで簡単に説明しておきたい。
最初の「血」のアイデンティティとは人間としてこの世に生まれたときにすでに与えられている特性、現代風に言えばDNAとでも呼ぶべきもので生物学的なアイデンティティである。「血」のアイデンティティはすなわち「民族」であり、中東でその最大のものは「アラブ」であるが、中東にはそのほかにも、トルコ民族、ペルシャ(イラン)民族などいくつかの民族が共存している(「ユダヤ民族」という呼称があるが、ユダヤは生物学的な意味での「民族」とは言えない)。
「民族」となるとかなり大きな概念になるが、「血」は先ず本人と他者との血縁関係から始まる。最も近い関係が親子・兄弟姉妹であり、これが「家族」と呼ばれる。伯父・叔母・従兄弟等の関係まで広げると「親族」となり、遠い縁戚関係を含めると「一族」となる。さらにその上に「一族」を束ねる「部族」があり、最終的には「民族」のカテゴリーに行き着く。すべてに共通しているのは「族」という言葉である。「族」とは同じ祖先から分かれた血統であり、すなわち「血」のつながりである。
(続く)
荒葉 一也
E-mail: Arehakazuya1@gmail.com
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます