(注)本シリーズは「マイライブラリー」で一括してお読みいただけます。
http://mylibrary.maeda1.jp/0465MenaRank6.pdf
(MENAなんでもランキング・シリーズ その6)
掲載日:2019.4.25
前田 高行
中東北アフリカ諸国は英語のMiddle East & North Africaの頭文字をとってMENAと呼ばれています。MENA各国をいろいろなデータで比較しようと言うのがこの「MENAなんでもランキング・シリーズ」です。「MENA」は日頃なじみの薄い言葉ですが、国ごとの比較を通してその実態を理解していただければ幸いです。なおMENAの対象国は文献によって多少異なりますが、本シリーズでは下記の19の国と1機関(パレスチナ)を取り扱います。(アルファベット順)
アルジェリア、バハレーン、エジプト、イラン、イラク、イスラエル、ヨルダン、クウェイト、レバノン、リビア、モロッコ、オマーン、パレスチナ自治政府、カタール、サウジアラビア、シリア、チュニジア、 トルコ、UAE(アラブ首長国連邦)、イエメン、
これら19カ国・1機関をおおまかに分類すると、宗教的にはイスラエル(ユダヤ教)を除き、他は全てイスラム教国家でありOIC(イスラム諸国会議機構)加盟国です。なおその中でイラン、イラクはシーア派が政権政党ですが、その他の多くはスンニ派の政権国家です。また民族的にはイスラエル(ユダヤ人)、イラン(ペルシャ人)、トルコ(トルコ人)以外の国々はアラブ人の国家であり、それらの国々はアラブ連盟(Arab League)に加盟しています。つまりMENAはイスラム教スンニ派でアラブ民族の国家が多数を占める国家群と言えます。
第6回のMENAランキングは、ジャーナリストのNGO団体「国境なきレポーター(Reporters Without Borders)」(略称:RSF)が発表した「報道の自由度2019(Press Freedom Index 2019)」からMENA諸国をとりあげて比較しました。
RSFホームページ:http://index.rsf.org/#!/
1.「World Press Freedom Index」について
「国境なきレポーター(Reporters Without Borders)」は、1948年の世界人権宣言、及びこれに続く1950年の「人権と基本的自由の保護に関する会議」などで採択されたいくつかの憲章や宣言に触発され、各国の報道関係者が自発的に結成した非政府組織(NGO)である。フランスのジャーナリストが中心となって設立されたため、正式の組織名はReporters Sans Frontieresであり、その頭文字をとってRSFと略称され、本部はパリにある。
RSFは、世界各国で取材妨害を受け、時には生命の危険に晒されているジャーナリストを保護し、その障害を取り除く活動を行っており、その一環として2002年から毎年、報道の自由度に関する各国のランク「報道の自由の指標(Press Freedom Index)」を公表してきた。この指標はRSFが作成した50項目のアンケートに対して、世界各地の表現の自由のための擁護組織団体及び多数のジャーナリストが回答した結果を集計したものである。
2019年版Press Freedom Indexは世界180カ国の報道の自由度を指標化し、ジャーナリストに対する各国の対応ぶりを評価したものである。このため直近に報道の規制または記者の逮捕などの政府の取材妨害があった国、或いはジャーナリストが誘拐・殺害に遭った国についてはその年のランクが低くなる傾向がある。なお、RSF自身は、このランクは「報道の質」の良否を示すものではない、と断っている。
よく知られている通りアラブ・イスラム世界は2011年の「アラブの春」以降もイスラム過激派IS(イスラム国)によるテロ活動が吹き荒れた。その後シリアの内戦がようやく終結に向かったものの、リビアでは内戦が激化、またスーダンで大統領が退陣、またイエメンではイランとサウジアラビアの代理戦争の様相を呈し多数の死傷者や難民が出るなど社会不安が絶えない。またイスラエルではエルサレム首都移転やゴラン高原併合宣言などにより緊張が増している。
このためMENA地域の報道の自由度は大きく制約され、ジャーナリストの活動が危険に晒される状況は一向に改善される気配が見られない。
(続く)
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