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http://mylibrary.maeda1.jp/0609RussiaEuEnergyTrade2019vs2023.pdf
(西欧はガス・石油をどこから調達し、ロシアはどこへ転売したのか?)
(4倍に急増した米国産LNG輸入、全輸入量も増加しパイプラインの不足分を補填!)
2.LNG貿易の変化(図http://bpdatabase.maeda1.jp/5-G10b.pdf参照)
天然ガスのもう一つの貿易形態であるLNG(液化天然ガス)についてヨーロッパの輸入量と輸入相手国の変化を見ると、2019年のヨーロッパのLNG輸入量は1,198億㎥であった。これに対し2023年のLNG輸入量は1.4倍の1,691億㎥に達している。前項に述べた通りパイプラインによる生ガスの輸入量は4,713億㎥から3,408億㎥に減少しており、パイプラインによる不足をLNGで補っていることがわかる。この結果、総輸入量に対するLNGの比率は、2019年の20%から2023年には33%に拡大している。
次に輸入相手国の変化を見ると、2019年のLNG輸入国トップはカタールの322億㎥であり、これに次ぐのがロシア205億㎥、米国183億㎥、ナイジェリア158億㎥、アルジェリア152億㎥であった。総輸入量に対する各国のシェアはカタール27%、ロシア17%、米国15%、ナイジェリア13%、アルジェリア13%である。
しかし2023年には様相が一変し、トップの輸入国は米国となり、輸入量は1,144億㎥でシェアは45%に達した。ヨーロッパが輸入するLNGのほぼ半分は米国産が占めていることになる。一方、2019年にトップで27%を占めていたカタールの2023年のシェアは12%に急落、3位であったロシアのシェアも17%から12%に落ちている。
3.天然ガス価格の変動(図http://bpdatabase.maeda1.jp/6-G01b.pdf参照)
ウクライナ紛争を契機とした天然ガス需給の激変は当然のことながら価格にも大きな影響を及ぼしている。天然ガスの価格指標として(1)日本価格(全量LNG)、(2)オランダTTF価格(パイプラインを中心とし一部LNG組み合わせ)及び(3)米国Henry Hub価格(ほぼ全量パイプライン)の3種類がある。従来は日本価格が最も高く、これにオランダTTF(ヨーロッパ)価格が続き、米国価格が3者の中で最安値であった。さらに日本とヨーロッパの価格は原油価格にスライドする部分が大きいのに対して、米国は豊富な資源量と縦横に張り巡らされたパイプライン網により独自の市場価格を形成している。
このような構図は2020年まで続き、同年の年間平均原油(Brent)価格が42ドルであったのに対して、天然ガス価格は100万BTU当たり日本価格が7.65ドル、オランダTTFは3.13ドル、米国Henry Hub価格は1.99ドルであった。
しかし21年から22年にかけて原油価格が70ドルから100ドル超に急騰、これに伴い日本のLNG価格は9.93ドルから16.98ドルに上昇、米国価格も連動して3.84ドルから6.38ドルにアップしている。ところがオランダTTF価格は日米をはるかに上回る急騰ぶりで、2021年には日本価格を上回る15.67ドルに急騰、さらに2022年には2020年の10倍を超える37.09ドルに暴騰した。2023年には日本価格とほぼ同等な水準に落ち着いているが、過去3カ年の価格変動は異常であった。ロシアからの天然ガス輸入停止によりヨーロッパ各国で天然ガス(特にLNG)の争奪戦が起きたことを示していると言えよう。
(続く)
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