11/9 経済産業省 平成21年度(2009年度)エネルギー需給実績(速報) http://www.meti.go.jp/press/20101109001/20101109001.html
11/9 Chevron Chevron Announces Agreement to Acquire Atlas Energy http://www.chevron.com/chevron/pressreleases/article/11092010_chevronannouncesagreementtoacquireatlasenergy.news
米軍乗り出す(4)
当初事態が理解できなかったのはイスラエルからの緊急通報を受けたペンタゴンも同じだった。イスラエルは3機の救援を米国に求めた。その時彼らは二つの事実を明らかにした。一つ目の事実。それは給油機がサウジアラビアに撃墜されたことにより3機が自力で帰還できなくなったため、やむを得ずペルシャ湾の公海上空を飛行中との事実であった。その時ペンタゴンが考えたことは3機をペルシャ湾の原子力空母の近くに不時着水させ、3名のパイロットを救出することであった。
しかしイスラエルから二つ目の事実を告げられた時、ペンタゴンは頭を抱え込んだ。3機編隊の2番機と3番機のいずれかが未使用の小型核ミサイルを抱えたまま飛行中というのがそれであった。米国は今回の作戦で核ミサイルが使われる可能性があることを知らされていなかった。目的達成のためならイスラエルは最大の盟友である米国すら欺いたのである。核ミサイル搭載機に残された燃料はあとわずか。飛行可能な時間はせいぜい1時間程度しかない。
イスラエル側は最後にもう一つ遠慮がちに米国に頼み込んだ。編隊の先頭機のパイロット一人だけでも何とか救出してほしいと。ペンタゴンは短い協議の末、直ちに現地司令部に緊急作戦を発令した。
カタールのウデイド米中央軍現地司令部は3機の戦闘機に緊急発進を命じた。イスラエル機に合流せよ、と言う命令だけが離陸前のパイロットに与えられた。その後どうするかは改めて指示するとのことで、パイロット達には状況の説明も緊急発進の理由も何一つ説明されなかった。しかし上部からの命令は絶対である。と同時にそれは兵士たちにとっても命令さえ忠実に実行すれば自らの責任を問われないことを意味する。むしろ事実を知らされてその重みに耐えられなくなったり、或いは作戦の理由を知って良心の呵責に悩むようなこともないだけパイロット自身にとっては気楽であった。
ウデイド基地を離陸して間もなく3人のパイロットに指示が出された。一人のパイロットには編隊の先頭を飛ぶ戦闘機を「ハリー・S・トルーマン」の位置まで誘導せよ、との指示が与えられた。そして残る2機には編隊の2番機及び3番機をエスコートしてアラビア半島内陸部に誘導せよ、というものであった。
(続く)
(この物語は現実をデフォルメしたフィクションです。)
荒葉一也:areha_kazuya@jcom.home.ne.jp
3.イラクとイランの埋蔵量争い
創立50周年の今年のOPECは内外ともに平穏でハッピーな年であった。しかし来年以降もこのような状態が続くと言う保証はない。日本や欧米先進国で景気刺激のために打ち出された金融緩和策により世界的にマネーがだぶついており、それが原油市場に流れ込んで原油価格をじりじりと押し上げている 。リーマンショック以前のバブル期に価格が急騰したことが思い起こされる。そして世界的なドル安のためドル決済が主流のOPEC各国は実質的な収入減に見舞われている。OPEC内部に目を転じると、新たな国別生産量割当量をどうするかを巡って加盟国の間で駆け引きが始まった。最近、イラクとイランが相次いで埋蔵量の数値を上方修正し、埋蔵量世界3位と4位の座を争っていることなどはその例であろう。
価格の上昇による石油収入の増加とドル安による実質手取り額の減少はOPEC産油国にとってはプラス・マイナス・ゼロとなり必ずしも致命的な問題とは言えない。むしろ新たな国別生産割当をめぐってOPEC内部で不協和音が高まるほうが問題は大きいと考えられる。イランとイラクの埋蔵量競争はOPECの生産割当問題と一見無関係であるように見えるが、必ずしもそうではない。実は埋蔵量を大きく見せることで自国の生産割当量を増やそうとする深慮遠望があるからだ。後で詳しく述べるが、埋蔵量が多くなれば生産能力を高めることができ、生産能力が高い国には大きな生産割当量が配分される、と言う三段論法が成り立つのである。
OPECの統計「Annual Statistical Bulletin 2009」によれば、イランとイラクの昨年末の確認埋蔵量はそれぞれ1,370億バレルと1,150億バレルであり、サウジアラビア(2,650億バレル)、ベネズエラ(2,110億バレル。但しBP統計では1,723億バレル )に次いで世界第3位と第4位である。埋蔵量アップを先に宣言したのはイラクである。同国は10月4日、西クルナ及びズベア油田を見直した結果、国内の埋蔵量は280億バレル増の1,430億バレルになったと発表した。これにより同国の埋蔵量は一挙に25%増加し、イランを抜いて世界第3位となった。イラクは現在OPECの生産割当の対象外であるが、同国のOPEC代表団の一人は、埋蔵量の見直しによってイラクは将来高い生産割当量を得ることができる、と説明している 。
そのイラク発表からわずか1週間後、今度はイランが埋蔵量を1,500億バレルに見直すと発表した。こちらは従来より130億バレル、9%増加するというものである。これにより同国の埋蔵量は再びイラクを上回り世界3位の座を死守したことになる 。イラクとイランは1980年代のイラン・イラク戦争を持ち出すまでもなく永い歴史的な対立を繰り返している。民族的に見てもイラクはアラブ民族、イランはペルシャ民族であり、また同じイスラムとは言え、シーア派のイランはイラク国内の撹乱要因となっている。いずれも地域の大国を自認しており、平時でも両国の対抗意識は強い。
両国とも数千万人の人口を養うためには石油収入が唯一の頼りであり、今後石油の輸出に一層拍車をかけなければならない。従って今回の埋蔵量見直し競争は両国のメンツの張り合いと言うよりも、イラクのOPEC代表団の一人がいみじくも語ったように有利な生産割当を得るための実利的な側面が大きいのである。しかし今回イラクが一挙に25%も埋蔵量を増加したことについて、専門家の間に信ぴょう性を疑う声があるのも事実である。イラクの追加埋蔵量280億バレルと言えば世界の1年間の石油消費量300億バレルとほぼ同量である。メディアは両国の動きを宿敵のライバル同士による’bidding war(競り上げ競争)’と呼んでいる 。イラクは昨年石油鉱区の大規模な国際入札を行いExxonMobilを含め世界の名だたる石油会社が開発に乗り出そうとしている。同国石油相は今後6-7年以内に生産能力が1,200万B/Dに達すると宣言している。これは現在のサウジアラビアやロシアに並ぶ巨大な生産量である。
埋蔵量は不確実な要素が多く、また大幅な増産にこぎつけるためには解決すべき多くの問題があり、今後の石油生産の推移を注意深く見守る必要があろう。しかし近い将来のエネルギー事情としては石油に頼らざるを得ないことは間違いない。その場合イランとイラクは増産余力を持った数少ない国である。従って両国の埋蔵量見直しやイラクの大増産計画を頭から否定できないのが現実である。
10月の総会でOPECの新しい長期戦略(new Long-Term Strategy, LTS)を策定することが決まった。新長期戦略は12月にエクアドルのキト―で開催される次回総会に提案されることになっている。OPECがどのような戦略を打ち出すのか世界が注目している。
(続く)
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E-mail; maeda1@jcom.home.ne.jp
11/1 AOCホールディングス 富士石油の常圧蒸留装置能力削減に関するお知らせ http://www.aochd.co.jp/ir/pdf/101101_sakugen.pdf
11/2 BP Third quarter 2010 results http://www.bp.com/extendedgenericarticle.do?categoryId=2012968&contentId=7065667
米軍乗り出す(3)
イスラエル政府からナタンズ爆撃計画を打ち明けられ支援を要請されたとき、ホワイトハウスはついに来るべきものが来た、と受け取った。支援とは飛行ルート上のヨルダン、サウジアラビア及びイラクが余計な手出しをしないよう米国の外交的影響力を行使する、ということに尽きる。3カ国のうちヨルダンとイラクには手出しする能力がないから問題外であり、問題はサウジアラビアである。彼らはイスラエルと同等の空軍戦闘戦力を持っており、それは米国が与えたものである。
結局ワシントンはサウジアラビア国王にイスラエル機の上空通過を黙認するよう説得した。イランの核施設を破壊すればサウジアラビアを含む近隣アラブ諸国にとってもメリットがある、と説いたことは勿論である。前後して国防長官がサウジアラビアの国防相に同じ申し入れをした。そのとき国防長官は爆撃完了後、空中給油機がアラビア半島上空で戦闘機に給油することにも触れた。
二日後、サウジアラビアの国防相は国防長官に爆撃機3機の上空通過を黙認する、と回答した。しかし給油機については何も触れなかった。国防長官は一瞬問い返そうとしたがその言葉を飲み込んだ。イスラエルのナタンズ爆撃さえ成功すれば十分な成果だ。それによりイスラエル、サウジアラビアそして米国自身も大きなものを得ることができる。その後の空中給油は外交的には大きな問題ではない、と考え直し国防長官はそれ以上深追いしなかった。
ただ国防長官は国防相の電話の声に含みがあるのを聞き逃さなかった。部下の空軍参謀本部長が懸念していた作戦をひょっとするとサウジアラビアが実行するかもしれない-----。国防長官の予感は的中した。しかもそれは更なる不幸をもたらすものであった。
イスラエルのナタンズ爆撃当日、米中央軍現地司令部は軍事偵察衛星、AWACS、ペルシャ湾に浮かぶ原子力空母「ハリー・S・トルーマン」などあらゆる手段を講じて情報を収集していた。早暁にイスラエルの空軍基地から3機の編隊が飛び立ち、その後しばらくして大型機1機と戦闘機2機が同じ基地を離陸したことが確認された。最初の3機はイラクとサウジアラビアの国境上空を通過した後イランに侵入、ナタンズを爆撃した後、イランの追撃を振り切って領空外に逃れた。そこまではペンタゴンから聞かされた筋書き通りであった。
その後想定外の事態が発生した。後から飛び立った3機が途中でバラバラになり迷走を始めた。そしてそのうちの大型機と見られる1機が突然レーダーから消えたのである。その数分後、今度は爆撃を終えた3機がイスラエルへの帰還コースをはずれペルシャ湾上空をホルムズ海峡に向かい始めた。ウデイド空軍基地の現地司令部は混乱した。
(続く)
(この物語は現実をデフォルメしたフィクションです。)