(注)本レポートは「マイライブラリー(前田高行論稿集)」で一括してご覧いただけます。
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III. 2014年と2015年の5社業績比較
2014年と2015年では石油企業を取り巻く環境は大きく変化した。原油価格の急落により国際石油企業は売上、利益が大幅に落ち込み、利益についてはこれまでの稼ぎ頭であった上流部門の利益が急減した反面、下流部門は逆に利益の出る体質となり、両者の立場が逆転した。また原油価格回復の見通しが立たない中、各社とも設備投資を見直す動きが活発化している。ここでは両年の売上、利益、設備投資を取り上げて各社の業績の明暗を分析する。
1.売上高
(図http://members3.jcom.home.ne.jp/maeda1/2-D-4-25.pdf 参照)
5社の売上順位は2014年と2015年で変化はなく、トップはShell、2位はわずかな差でExxonMobil、3位から5位はBP、Total、Chevronと続く。各社とも2014年から2015年にかけて売り上げは大幅に落ち込んでおり、Shellは4,313億ドル→2,722億ドル、ExxonMobil4,119億ドル→2,689億ドル、BP3,536億ドル→2,279億ドル、Total2,361億ドル→1,654億ドル、Chevron2,120億ドル→1,385億ドルであった。落ち込み幅が最も大きかったBPは37%減、最も少ないTotalでも30%といずれも前年の3分の2前後にとどまっている。
各社ともこの間に大型M&Aによる他社資産の買収あるいは自社資産の売却などは無く、また生産量もほぼ前年横ばいであった。したがって売り上げの減少はひとえに石油・天然ガス価格の下落が原因だったと言える。因みに代表的な指標原油であるBrent原油の2014年の年間平均価格は98.95ドル/バレルであり、2015年のそれは48.71ドル/バレルと価格は50%以上下落しており、また天然ガスの指標価格である米国Henry Hub引渡価格は百万BTU当たり2014年の4.35ドルに対して2015年は2.60ドルであり、40%以上下がっている。
(続く)
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前田 〒183-0027 東京都府中市本町2-31-13-601
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2/29 JOGMEC 理事長の交代について http://www.jogmec.go.jp/news/release/news_01_000088.html
3/1 出光興産 人事異動に関するお知らせ http://www.idemitsu.co.jp/company/news/2015/160301.pdf
3/2 ExxonMobil ExxonMobil Focuses on Business Fundamentals; Paced, Disciplined Investing http://news.exxonmobil.com/press-release/exxonmobil-focuses-business-fundamentals-paced-disciplined-investing
3/3 三井物産 豪州における国内向けガス・コンデンセート事業の取得完了 http://www.mitsui.com/jp/ja/release/2016/1218621_8913.html
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II. 2015年の業績比較 (続き)
5. 石油及び天然ガス生産量
(表:http://members3.jcom.home.ne.jp/maeda1/1-D-4-20.pdf参照)
(1)石油生産量
昨年の石油生産量が最も多かったのはExxonMobilの2,345千B/Dであり、5社の中で同社だけが2百万B/Dを超えている。ExxonMobilに次いで生産量が多いのはChevron(1,744千B/D)、第3位はShell(1,509千B/D)である。両社とExxonMobilを比べるとChevronはExxonMobilの4分の3、Shellは3分の2である。BP及びTotalはこれら3社よりかなり少なく、Totalは1,237千B/D、BPは1,232千B/Dの石油を生産しており、ExxonMobilの2分の1強にとどまっている。
(2)天然ガス生産量
天然ガスの生産量が最も多いのはExxonMobil(日量10,515百万立方フィート、以下mmcfd)であった。2位以下はShell(8,380mmcfd)、Total(6,054mmcfd)、BP(5,951mmcfd)、Chevron(5,269mmcfd)と続いている。Chevronは5社中で最も少なく、ExxonMobilの半分である。
(3)石油・天然ガス合計生産量(石油換算)
(図http://members3.jcom.home.ne.jp/maeda1/2-D-4-05.pdf 参照)
石油と天然ガスの合計生産量が最も多いのはExxonMobilであり石油換算で4,097千B/Dである。ExxonMobil以外の4社はいずれも200万B/D台であり、Shellは2,954千B/D、以下Chevron(2,622千B/D)、Total(2,347千B/D)と続きBP(2,258千B/D)が最も少ない。ExxonMobilの生産量を100とした場合、他の4社はShell72、Chevron64、TotalとBPはそれぞれ57及び55であり両社はExonMobilのほぼ半分となっている。
各社の石油と天然ガスの比率を見ると、Chevronは石油67%、天然ガス33%であり5社の中では石油の比率が最も高い。その他4社の石油:天然ガスの比率はそれぞれ、ExxonMobil(石油57%:天然ガス43%)、BP(石油55%:天然ガス45%)、Total(石油53%:天然ガス47%)、Shell(石油51%:天然ガス49%)である。5社はいずれも石油生産量が天然ガス生産量を上回っている。
(続く)
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II. 2015年の業績比較 (続き)
4.設備投資額
(図http://members3.jcom.home.ne.jp/maeda1/2-D-4-04.pdf参照)
2015年の設備投資額が最も大きいのはChevronの340億ドルである。Chevronに次いでExxonMobil(311億ドル)及びShell(289億ドル)が続き、Chevronよりも10%前後少ない。TotalとBPの設備投資額はそれぞれ204億ドルおよび195億ドルでありトップのChevronの6割にとどまっている。
(続く)
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第1章:民族主義と社会主義のうねり
3.イスラエル独立(その1):ユダヤ人の祖国建設運動
本章のタイトル「民族主義と社会主義のうねり」は、戦後の中東アラブ諸国独立のエネルギーの源を意味しているが、ユダヤ人たちはそれより少し早く祖国建設を始めている。戦後一貫してアラブ諸国の歴史に最も大きな影を落としているユダヤ人の国イスラエルはそれまでの中東二千年の歴史とは全く異質な国家の出現であった。
ユダヤ人(と言われる人々が)2千年前にパレスチナを追われ「ディアスポラ(離散)の民」としてヨーロッパ移り住み、各地で迫害を受け辛酸をなめた末、1946年に漸く先祖の地パレスチナにイスラエルを建国した壮大な歴史ドラマはすでに数多の書物で語られてきた。詳細はそちらでお読みいただくとして、ここでは20世紀以降のイスラエル建国史はについて簡単に触れてみたい。
19世紀後半にヨーロッパで「アンティ・セミティズム(反セム民族)」運動がヨーロッパに吹き荒れた。セム民族とはアラビア語、ヘブライ語など中東を起源とするセム系の言語を使用する民族の総称であるが、当時のヨーロッパでは「反セミティズム」は「反ユダヤ主義」そのものであった。ディアスポラの民は各地で「ゲットー」と呼ばれるユダヤ人居住地区に閉じ込められ、差別を受けてひっそりと暮らしていたのであるが、反ユダヤ主義の高まりの中でユダヤ人を狙い撃ちした事件が続発した。
政治的な事件として有名なのはフランスの「ドレフュス事件」である。1894年、フランス陸軍のユダヤ人大尉ドレフュスがドイツに対するスパイ容疑で逮捕された。事件は後に冤罪であることが立証され、大尉は1906年に無罪判決を獲得した。12年にわたる裁判闘争は文豪エミール・ゾラの政府弾劾書簡の発表などフランスを揺るがす大事件となったのである。また社会的な出来事としては19世紀末の帝政ロシアに広がった一連のユダヤ人大量虐殺事件「ポグロム」をあげることができる。「ポグロム」は第二次大戦中のドイツの「ホロコースト」と並ぶ悲惨な出来事であり、当時のヨーロッパの庶民が如何にユダヤ人を毛嫌いしていたがわかる。
このような社会環境に置かれたユダヤ人たちがヨーロッパ以外の土地に安住の地を求めるようになったのは無理のないことである。そして多くのユダヤ人が「新世界」アメリカに移住したが、中には自らの祖国「ホームランド」建設を夢見る者たちもいた。ヨーロッパ諸国の白人為政者たちもヨーロッパ以外の土地にユダヤ人のホームランドを与えることが足元の社会不安をなくす妙案であると考え、この構想をを後押しした。いわば体の良いユダヤ人追っ払い政策である。
しかし20世紀の地球上に新しい国家を建設できる耕作可能な無人の土地などあるはずがない。そこでイギリス政府は中央アフリカの植民地はどうかと提案した。黒人の原住民がいるがそれは英国の力でどうにでもなるからである。しかし祖国建設運動の指導者ヘルツェルたちはあくまで祖先が2千年前に追放されたパレスチナでの祖国復活を主張した。彼らは「シオンの丘へ帰れ(シオニズム)」と「土地なき民を民なき土地へ」を合言葉とし、祖国建設運動は激しさを増していった。
困ったのは英国政府である。パレスチナはオスマン・トルコの支配下にあり、しかもこれまで2千年にわたりアラブ人が住み慣れた土地であり、決して「民なき土地」などではない。無理に入植させれば先住民のアラブ人と紛争が起きるのは目に見えていた。
その時ユダヤ人に格好の追い風が吹いた。第一次世界大戦の勃発である。戦費調達に苦しむ英国はユダヤ人富豪ロスチャイルドに頼った。その見返りとしてロスチャイルドが要求したのがパレスチナにおけるホームランド建設を英国に約束させることであった。それがバルフォア宣言である(プロローグ第6節「英国の三枚舌外交―バルフォア宣言」参照)。
こうして英国はユダヤ人の資金的バックアップを得て首尾よく戦争に勝った。そしてフランスと交わしたサイクス・ピコ協定(プロローグ第5節「英国の三枚舌外交―サイクス・ピコ協定」参照)によりパレスチナを委任統治領とした。これでパレスチナでのユダヤ人のホームランド建設(イスラエル建国)の障害はなくなったのである。
(続く)
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II. 2015年の業績比較 (続き)
2. 利益
(図http://members3.jcom.home.ne.jp/maeda1/2-D-4-02.pdf 参照)
ExxonMobilが5社の中で利益額が最大の162億ドルであり、4社を大きく引き離している。ExxonMobilに次ぐ利益を上げたのは売上高(前項参照)では5社中4番目のTotalであり、同社の利益額は51億ドル、ExxonMobilの3割にとどまっている。ChevronはTotalよりやや少ない46億ドルである。Shellは売上高では5社の中で最も大きいが、利益は4番目の19億ドルにとどまっており、これはExxonMobilの9分の1に過ぎない。
BPは5社の中で唯一赤字であり、損失額は65億ドルに達している。BPは売上高でこそShellあるいはExxonMobilの8割程度を維持しているが利益では大きく見劣りしている。BPはメキシコ湾の原油流出事故およびロシアでの合弁事業を巡るトラブル等で近年利益が低迷し、しかも毎年の利益は浮き沈みが激しくここ2年間は連続して大きく落ち込んでいる。同社の先行きは不安感がぬぐえない。
3.売上高利益率
(図http://members3.jcom.home.ne.jp/maeda1/2-D-4-03.pdf 参照)
売上高と利益の比率である売上高利益率を見ると、ExxonMobilが6.0%と他を圧倒しおり、次いでChevron及びTotalがそれぞれ3.3%と3.1%で並んでいる。Shellは売上高トップであるが利益率では0.7%と見劣りする。BPの利益率はマイナス2.9%である。
(続く)
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