(OPECは生産シェアにこだわるのか!)
(3)石油生産量の推移とOPECシェア(1965~2015年)
(図http://members3.jcom.home.ne.jp/maedaa/1-2-G02.pdf 参照。)
1965年の世界の石油生産量は3,180万B/Dであったが、その後生産は急速に増加し、1980年には6,296万B/Dとほぼ倍増した。その後価格の高騰により石油の消費は減少した結果、1985年の生産量は5,746万B/Dにとどまった。1980年代は石油の生産が歴史上初めて長期にわたり減退した時期であった。
1990年代に入ると石油生産は再び右肩上がりに増加し始めた。そして1995年(6,800万B/D)以降急激に伸び2000年に7,492万B/D、2005年は8千万B/Dを突破して8,190万B/Dに達している。これは中国、インドなど新興経済国の消費量が急増したことが主たる要因である。その後2000年代後半は原油価格の急騰とそれに続く景気後退で石油生産の増加は一時的に鈍化したが、2010年代は再び増勢に転じ2015年の生産量は9,167万B/Dに達している。
地域毎のシェアの変化を見ると、1965年は北米の生産量が32%でもっとも多く、中東26%、欧州・ユーラシア18%、中南米14%、アフリカ7%と続き、アジア・大洋州は3%とシェアが最も小さかった。しかしその後北米の生産が停滞する一方、中東及び欧州・ユーラシア(特にロシア及び中央アジア各国)が急成長したため、現在(2015年)では中東のシェアが33%と最も高い。北米は1980年代には欧州・ユーラシア地区にも追い抜かれ2000年代半ばまでその状態が続いたが2015年のシェアは21%となり再び欧州・ユーラシア(19%)を上回っている。これはシェール・オイルの生産が急増したためである。
石油生産に占めるOPEC加盟国のシェアの推移を見ると、1965年は44%であり、第一次オイルショック(1973年)前には50%近くに達した。しかし80年代前半にシェアは急落し85年には30%を切った。その後80年代後半から90年代前半にシェアは回復し、95年以降は再びシェアは拡大して40%台のシェアを維持している。但し2005年のシェア(43%)をピークに2015年は42%とやや下がっている。
昨年後半から石油価格が急落する中でOPECは価格よりもシェアを重視する方針を打ち出している。これは近年急激に生産を拡大してきた米国のシェール・オイルの追い落とし策と考えられる。このため今年に入ってOPECのシェアは上昇したものと思われる。さらに昨年のOPEC総会でインドネシアが、また今年6月の総会でガボンの再加入がそれぞれ認められた結果、数字上のOPEC加盟国の世界シェアはアップする。しかし原油価格の下落に直撃されていずれのOPEC加盟国も財政状況が極めて厳しい。したがってOPEC加盟国がいつまでもシェア維持で結束できるかは疑問である。またインドネシアはかなり以前から石油の純輸入国であり、OPEC「石油輸出国機構」の名にそぐわない。今やOPECは内外でその存在意義が問われているようである。
世界の石油生産の今後について需要と供給の両面で見ると、石油と他のエネルギーとの競合の面では、地球温暖化問題に対処するため太陽光、風力などの再生可能エネルギーの利用促進が叫ばれている。さらに石油、天然ガス、石炭の炭化水素エネルギーの中でもCO2排出量の少ない天然ガスの人気が高い。このように石油の需要を取り巻く環境は厳しいものがある。その一方、中国、インドなどのエネルギー需要は今後も拡大するとする見方が一般的である。基幹エネルギーである石油の需要は底堅く、今後も増えていくものと予測される。
供給面で特筆すべきことはシェール・オイル、サンド・オイルなど「非在来型」と呼ばれる石油が商業ベースで生産されるようになり、特に米国におけるシェール・オイルの生産には目を見張るものがある。このような技術的要因に対して政治的・経済的な要因についてはイランに対する経済制裁が緩和され同国の生産は急速に回復している。その一方でリビア、ナイジェリア、イラク等の有力産油国の治安悪化など相反する要因がある。また経済的には石油価格の変動が及ぼす要因がある。特に米国のシェール・オイルは石油価格に敏感に反応し、スイング・プロデューサーの役割を果たすと考えられており供給面における不確定要素は少なくない。
(続く)
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