石油と中東

石油(含、天然ガス)と中東関連のニュースをウォッチしその影響を探ります。

天然ガスは目先買い手市場に:BPエネルギー統計2016年版解説シリーズ(天然ガス篇7)

2016-08-16 | BP統計

(シェールガス革命で生産量が急増する米国!)

(4)主な国の生産量の推移(2005~2015年)

(図http://members3.jcom.home.ne.jp/maedaa/2-2-G03.pdf 参照)

 2015年の天然ガス生産量が世界1、2位の米国とロシア、第4、5位のカタールとカナダにオーストラリア(世界13位)及び英国(同22位)を加えた6か国について2005年から2015年までの生産量の推移を追ってみる。

 

  ロシアの2005年の生産量は5,801億㎥でありその後徐々に増加し、2008年には6千億㎥を突破した。2010年以降は6千億㎥台前後で浮き沈みを繰り返しており、2015年の生産量は5,733億㎥であった。これは同国の輸出先である西ヨーロッパ諸国の景気が2008年のリーマンショックで急激に減速、現在も冷え込んだままであることが最大の要因である。ロシアの天然ガスはパイプラインで西ヨーロッパに送られており、備蓄が効かないパイプライン輸送は末端の需要に左右されやすいと言える。このような状況に対してロシアは中国と天然ガス輸出契約を締結し、或いは極東でLNG輸出基地の増強に取り組むなど極東アジアへの輸出に力を入れている。

 

 米国の場合、天然ガス生産量は2005年以降一貫して増加しており、2009年にはロシアを追い抜いて世界一の天然ガス生産国となっている。翌2010年には6千億㎥を突破、その後も急激に増加し、2015年の生産量は7,673億㎥を記録している。これは2005年に比較すると1.5倍の増加となる。ロシアの生産は停滞もしくは減少しており、2010年以降両国の格差は拡大傾向にある。米国の生産量が急速に増加したのはシェールガスの生産が商業ベースに乗ったことが大きな理由であるが、天然ガスの生産において米国とロシアは圧倒的な存在感を持っており今後も両国が世界の天然ガス生産をリードしていくことは間違いない。

 

 カナダはかつて米国、ロシアに次ぐ世界第3位のガス生産国であったが、その後、生産量が減少、2012年以降は多少増産の兆しが見える。2015年の生産量は1,635億㎥となりイラン、カタールに次ぐ世界5位の生産国となっている。同国は生産した天然ガスの大半をパイプラインを通じて米国に輸出しているのであるが、米国の自給率が高まった結果、カナダからの輸出が減少している(後述する「主要国の生産量と消費量のギャップ」および「主要国の天然ガスの自給率」参照)。但しカナダは世界15位の豊富な埋蔵量を有しており(前章国別埋蔵量参照)十分な生産余力があると考えられるため、今後はLNGとして日本など極東向けの輸出に力を注ぐことになろう。

 

 英国は生産量が長期下落傾向にある。同国の2005年の生産量は882億㎥であったが、2015年には半分以下の397億㎥に落ち込んでいる。同国の場合は北海油田が枯渇しつつあり、原油と共に産出される随伴ガスの生産量も減少しているためであり、今後も生産量の低下は避けられない。同国は現在ではカタールからのLNGの輸入が急増している(第4章「世界の天然ガス貿易」参照)。

 

 これに対して最近天然ガスの生産が増加しているのがカタールとオーストラリアである。カタールの2005年の生産量は458億㎥に過ぎなかったが、2015年には1,814億㎥に達し2005年に比べ4倍に増加している。カタールの場合多くはLNGとして輸出しており、年間77百万トンの輸出体制を整えている。さらに同国はUAEからオマーンに及ぶドルフィン・ガス・パイプランによる生ガス輸出も行っておりこれが生産急増の要因である(後述第4章「世界の天然ガス貿易―カタールの輸出動向」参照)。

 

 オーストラリアはカタールの後を追うように近年ガス田開発と液化設備の建設を行っている。2005年の生産量は392億㎥であったが、2010年には500億㎥、2014年には600億㎥を超え、2015年の生産量は671億㎥に達している。日本などとの長期契約によりLNGの販売体制を確立、LNGの生産出荷施設も相次いで建設されており今後生産量はさらに増加するものと考えられる。

 

(天然ガス篇生産量 完)

 

本稿に関するコメント、ご意見をお聞かせください。

        前田 高行         〒183-0027 東京都府中市本町2-31-13-601 

                               Tel/Fax; 042-360-1284, 携帯; 090-9157-3642

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苦境続くシェブロン:五大国際石油企業2016年4-6月期決算速報(5完)

2016-08-13 | 海外・国内石油企業の業績

 

2.2015年第1四半期以降の四半期別業績の推移(続き)

(2)利益の推移(続き)

(2-2)上流部門(図http://members3.jcom.home.ne.jp/maeda1/2-D-4-63.pdf 参照)

 5社の上流部門の利益はいずれも下流部門の利益に比べて見劣りし、BP及びChevronが3期連続で赤字を出しており、Shellは6期中5期が赤字であった。ExxonMobilも前期(2016年第1四半期)は赤字であり、6期間で赤字を計上しなかったのはTotalだけであった。過去6期間で最も大きな黒字を出したのがExxonMobilの2015年第1四半期29億ドルであったのに対して赤字ではShellが2015年第2四半期に82億ドルの赤字を出すなど非常に厳しい状況である。

 

(2-3)下流部門(図http://members3.jcom.home.ne.jp/maeda1/2-D-4-64.pdf 参照)

 これに対して下流部門は全社が全6期間を通じて安定した利益を出している。特にExxonMobilは昨年第2四半期に上流部門の3倍以上の64億ドルの利益を上げている。Shellの場合昨年は25億ドル前後の安定した利益を計上しており、今期も2期連続で17億ドルの利益であった。Totalもコンスタントに10億ドル台前半の利益水準を維持している。各社とも原料となる原油の価格が年間を通じて低く推移したことにより下流部門の利益を確保している。

 

(3)設備投資の推移 (図http://members3.jcom.home.ne.jp/maeda1/2-D-4-65.pdf 参照)

 5社の四半期の設備投資額は100億ドルを下回る低い水準が続いており、また期を追うごとに投資額が減少する傾向にある。ExxonMobilの場合は昨年1-3月期の77億ドルに対して今年第一、第二四半期とも50億ドル強にとどまっている。Totalも同様に昨年1-3月期の58億ドルから今年の第一、第二四半期はいずれも40億ドル弱である。Chevronは5社の中では最も高い水準の設備投資を続けており、昨年は80億ドル台の設備投資であったが、今年に入って急減し今期の投資額は55億ドルにとどまっている。ShellおよびBPの設備投資は各期の変動が比較的少なく、Shellは60億ドル前後、BPは40億ドル台の設備投資を続けている。

 

以上

 

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今週の各社プレスリリースから(8/7-8/13)

2016-08-13 | 今週のエネルギー関連新聞発表

8/8 Opec OPEC President: Despite the Current Decline, Oil Market on the Path to Rebalancing 

8/10 出光興産 8月3日・ 9日に当社大株主から公表された文書に対する当社対応と見解について 

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ニュースピックアップ:世界のメディアから(8月12日)

2016-08-12 | 今日のニュース

BP、Shell等がイラク南部での石油開発活動再開。ExxonMobil, CNPCは時期未定

・原油価格下落 Brent $44.85, WTI $42.50。OPECアルジェ臨時会合開催に反応せず

 

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BPエネルギー統計2016年版解説シリーズ:天然ガス篇6

2016-08-12 | BP統計

(45年で生産量が70倍になったアフリカ、北米はわずか1.5倍!)

(3)地域別生産量の推移(1970~2015年)

(図http://members3.jcom.home.ne.jp/maedaa/2-2-G02.pdf 参照)

 1970年に1兆㎥弱であった天然ガスの生産量はその後一貫して上昇を続け、1991年に2兆㎥、そして2008年には3兆㎥を突破し、2015年の生産量は3.5兆㎥弱を記録した。1兆㎥から2兆㎥になるまでは20年かかったが、次の3兆㎥に達するには17年しかかかっていない。このように天然ガスの生産は近年飛躍的に増加しているのである。石油の場合、第二次オイルショック後しばらく需要が前年を下回りオイルショック前の水準に戻るまで10年以上の歳月を要していることと比べ(前章石油篇「生産量推移」参照)天然ガスの生産拡大には目を見張るものがある。

 

 地域毎の生産量の推移にはいくつかの大きな特徴が見られる。1970年の世界の天然ガス生産は北米と欧州・ユーラシアの二つの地域で全世界の95%を占めており、残る5%をアジア・大洋州、中東、中南米及びアフリカで分け合っていた。しかし北米は1970年に6,630億㎥であった生産量がその後は微増にとどまり、世界に占めるシェアも67%(1970年)から28%(2015年)に低下している。欧州・ユーラシア地域の生産量は1970年の2,811億㎥から急速に伸び、1981年に北米を追い抜き、1980年代後半には全世界の生産量の半分を占めるまでになった。しかし同地域の生産量も90年代以降伸び悩んでおり、2015年の世界シェアは28%にとどまっている。現在も北米と欧州・ユーラシアの二地域が世界の天然ガスの主要生産地であることに変わりは無いが、その合計シェアは56%であり、1970年の95%から大きく後退している。

 

 この二地域に代わりシェアを伸ばしているのがアジア・大洋州と中東である。アジア・大洋州の場合、1970年の生産量は158億㎥でシェアもわずか2%しかなかったが、2015年の生産量は35倍の5,567億㎥に増加、シェアも16%に上昇している。また中東も生産量は1970年の107億㎥から2015年には58倍の6,179億㎥、シェアは17%に上がっている。アジア・大洋州或いは中東の生産量は1990年以降急速に増大しているが、特に中東ではここ数年加速された感がある。その理由としては生活水準の向上により地域内で発電用或いは家庭用燃料の需要が増加したことに加え、これまで先進国市場から遠いため困難であった輸出が、液化天然ガス(LNG)として市場を獲得しつつあることをあげることができる。

 

 過去45年間の伸び率で言えばアフリカ地域が最も大きい。同地域の1970年の生産量は31億㎥に過ぎず世界の生産量に占める比率はわずかであったが、1990年代には1千億㎥を突破、2015年の生産量は1970年の70倍弱の2,118億㎥に達し、全世界に占める比率も6%に拡大している。

 

 世界的にみると天然ガスの年間増加率は平均3%前後と石油生産の伸び率を上回っており、石油から天然ガスへのシフトが進んでいる。天然ガスは石油よりもCO2の排出量が少なく地球温暖化対策に適うものと言えよう。この点では今後クリーンエネルギーである原子力或いは再生エネルギーとの競合が厳しくなると考えられる。但し原子力は安全性の問題を抱え、再生エネルギーもコストと安定供給が弱点である。その意味で天然ガスは今後世界のエネルギー市場でますます重要な地位を占めるものと考えられる。

 

(続く)

 

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苦境続くシェブロン:五大国際石油企業2016年4-6月期決算速報(4)

2016-08-11 | 海外・国内石油企業の業績

  

2.2015年第1四半期以降の四半期別業績の推移

五社の売上高、利益(全体、上流部門および下流部門)、設備投資に関する2015年1-3月期以降今期までの四半期ごとの業績推移は以下の通りである。

 

(1) 売上高の推移

(図http://members3.jcom.home.ne.jp/maeda1/2-D-4-61.pdf 参照)

 2015年第2四半期をピークとして5社の売上高は3期連続で減少したが、前期2016年第1四半期を底に今期は若干上向いている。各社の2015年第2四半期売上高と今年第1四半期および第2四半期の売上高を比べると、ExxonMobilは741億ドル→487億ドル→577億ドル、Shellは740億ドル→497億ドル→603億ドル、BPは606億ドル→385億ドル→464億ドル、Totalは447億ドル→328億ドル→372億ドル、Chevron404億ドル→236億ドル→293億ドルである。各社とも売上高は最悪期を脱して昨年第4四半期のレベルまで回復している。

 

 これは言うまでもなくこの間に原油価格が大幅に上下動したためであり、この間の四半期平均原油価格の推移をShellの決算資料で見ると55.84ドル/バレル(2015年第2四半期)→45.22ドル/バレル(同第3四半期) →38.81ドル/バレル(同第4四半期)→29.49ドル/バレル(2016年第1四半期)→39.59ドル(同第2四半期)となっている。各社は販売価格の落ち込みを生産量でカバーしようと努力し(前項「原油・ガス生産量」参照)、売上高は価格の下落幅以下に抑えたが売り上げの落ち込みは避けられなかった。

 

(2)利益の推移

(2-1)全体利益水準の推移(図http://members3.jcom.home.ne.jp/maeda1/2-D-4-62.pdf 参照)

 過去5期の四半期ごとの利益水準は各社によって異なるものの、全体を通してみると下落傾向にあると言って良く、またExxonMobil以外の4社は1期またはそれ以上の複数期で欠損を出している。2015年第1四半期はExxonMobilの49億ドルを筆頭に5社ともに利益を計上したが、ExxonMobilのその後の利益は減少を続け今期は17億ドルにとどまっている。

 

 ExxonMobilと同程度の売上規模であるShellは第3四半期に74億ドルと言う巨額の欠損を記録している。その後業績回復の足取りは遅く利益水準は一桁前後(前々期:9億ドル、前期:5億ドル、今期12億ドル)に低迷している。

 

 BPは6期のうち4期がマイナスであり、特に最近は3期連続して欠損である。Chevronも同様に3期連続の赤字である。TotalはExxonMobilを除く4社と比較すると増減幅は小さいが、利益は低迷状況を続けている。

 

(続く)

 

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ニュースピックアップ:世界のメディアから(8月10日)

2016-08-11 | 今日のニュース

・OPEC、9/26-28日にアルジェで非公式会合開催

・原油価格2%上昇, Brent $45.17, WTI $42.78。トレーダーは軟化を警戒

 

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見果てぬ平和 - 中東の戦後70年(32)

2016-08-10 | 中東諸国の動向
第4章:中東の戦争と平和
 
4.「平和の家」と「戦争の家」
 イスラームでは自分たちの世界を「平和の家(ダール・アル・イスラーム)」と呼び、それ以外の世界を「戦争の家(ダール・アル・ハルブ)」と呼んでいる。ちなみに「イスラーム」とは唯一神アッラーとその使徒ムハンマドを信じ、聖典クルアーン(コーラン)の教えに従って生きることを意味する
(岩波「イスラーム辞典」より)。ムスリム(イスラーム信者)としてイスラーム世界で生活すればそれはとりもなおさず平和な世界なのであり、異教徒の住む外の世界では戦争が絶えない、ということになる。
 
 信仰心が篤ければ自分たちの世界に平和なユートピアが保証されるとするのは何もイスラームに限ったことではない。キリスト教にも「至福の千年王国」なる言葉がある。どちらの信者でもない筆者にはこれらの言葉を解説する資格はないが、似たような言葉であると言っても許されるであろう。他の一神教や多神教にも同じような思想があると思われる。「悟り」を最高の境地とする仏教の世界とは多少違うようである。
 
 イスラームの勃興期にはジャーヒリーヤ(無明の世界)にイスラームの光を届ける布教活動がイスラーム帝国を築き上げた。そして中世では聖地エルサレムをめぐる十字軍との戦いでキリスト教を退けオスマン・トルコの繁栄がもたらされた。それはまさにこの世が「平和の家」であり続けた時代であった。近代西欧社会がこのオスマン・トルコを圧政と搾取の世界と指弾したとしても、そこに住む大多数の民衆にとっては平和な世界だったはずである。
 
 その平和な世界を踏み荒らしたのは西欧列強の帝国主義であり、イスラーム世界で次々と「戦争の家」を繰り広げたのは帝国主義国家の政治家、軍人或いは資本家たちだった。ただ「平和の家」と「戦争の家」の境界にはそのどちらでもない世界がある。イスラームはそれを「和平の家(ダール・アッ・スルフ)」と名付けた。
 
 第四次中東戦争の後、エジプトとイスラエルは和平協定を結び、以後今日まで半世紀近くの間アラブ・イスラエルの国家間戦争は起こっていない。まさに「和平の家」が出現したと言えよう。 従来中東戦争と言えばアラブ・イスラエル戦争のことであった。それはアラブ人とユダヤ人の民族戦争であり、同時にイスラームとユダヤ教の宗教戦争であった。それは単純な二項対立の図式であり、「敵」と「味方」がはっきりしていた。当事国以外についてもその国がアラブとイスラエルいずれを支持するかで「敵の味方は敵」、「敵の敵は味方」と単純に色分けすることができた。第四次中東戦争でアラブ産油国が石油戦略を発動したときにそれが明確に表れた。すなわちイスラエル(敵)の肩を持つ米国は敵であり、アラブ(味方)を支持する国は味方とみなして石油の供給を減らさないという戦略である。日本はあわてて三木副総理を中東に派遣しアラブの友好国であることを表明して石油の禁輸を免れたのである。
 
 ところが第四次中東戦争以後の中東での戦争は単純な二項対立だけではなくなった。イラン・イラク戦争は民族対立(ペルシャ人対アラブ人)と宗派対立(シーア派対スンニ派)が絡み合ったものであり、アラブ諸国は揃ってイラクのサダム政権を支持した。しかしイラク南部には多くのシーア派住民がおり、彼らはイラク国民である前に敬虔なシーア派信徒であった。彼らは独裁者サダムの中央政府を恐れていたものの心情的にはイラン寄りである。
 
 サウジアラビアのような周辺のスンニ派諸国にとってシーア派のイランは「敵」であり、同じスンニ派政権のアラブ国家であるイラクは「味方」である。しかし味方のイラクではあるが、サウジアラビアの国境のすぐ北側に住んでいるのはシーア派である。さらに独裁者サダム・フセインもイランとの開戦前は湾岸の王制国家打倒を叫んでおり、サウジアラビアにとっては油断のならない男である。
 
 民族(血)と宗派(心)と政治思想(智)が絡み合い「敵」と「味方」が判然としなくなった。「敵の敵」が味方であるかそれとも別の敵なのかもしれない。同様に「敵の味方」が敵なのかそれとも別な味方なのか、その時の状況或いは時の経過によって目まぐるしく変わる。
 
 このような「敵」と「味方」が判然としない色調は21世紀に入りますます濃厚になるのであるが、1970年代後半から1980年代の中東は比較的穏やかな時代であった。これが平和な時代と呼べるかどうかは異論があるかもしれない。しかしその平和を担保したのはひとつがオイルマネー(カネ)に潤う湾岸産油国とその分け前に預かった中東各国が享受したオイルブームであり、もう一つがシリア、イラク、リビアなど各国に生まれた強権独裁体制である。第四次中東戦争以降の一時的な中東の平和は「オイルマネー」と「独裁者」がもたらしたと言ってもあながち間違っていないであろう。
 
 (続く)
 
本稿に関するコメント、ご意見をお聞かせください。
 荒葉一也
 E-mail; areha_kazuya@jcom.home.ne.jp
 Tel/Fax; 042-360-1284, 携帯; 090-9157-3642
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苦境続くシェブロン:五大国際石油企業2016年4-6月期決算速報(3)

2016-08-08 | 海外・国内石油企業の業績

 

1.五社の4-6月期業績比較 (続き)

(4) 設備投資

(表http://members3.jcom.home.ne.jp/maeda1/1-D-4-22.pdf参照)

(図http://members3.jcom.home.ne.jp/maeda1/2-D-4-54.pdf 参照)

 2016年4-6月期の各社の設備投資額はShellが58億ドルと最も多く、Chevronが55億ドでこれに続いている。第3位のExxonMobilの投資額は52億ドルである。またBPは43億ドル、Totalは最も少ない38億ドルにとどまっている。前年同期と比べると各社とも減少しており、特にExxonMobilおよびChevronは3分の2程度にとどまっている。Totalは18%減、BP及びShellは5~6%減である。低迷する石油市況を受けて各社とも設備投資には消極的な姿勢が見える。

 

(5)原油・ガス生産量
(表http://members3.jcom.home.ne.jp/maeda1/1-D-4-22.pdf参照)

(図http://members3.jcom.home.ne.jp/maeda1/2-D-4-55.pdf 参照)
 今年4-6月の原油生産量はExxonMobilが平均日産量233万バレル(以下B/D)で5社の中では最も多い。その他の4社はShell 175万B/D、Chevron 169万B/D、Total 125万B/D、BP 110万B/DでBPは5社の中では最も少なくExxonMobilの2分の1以下である。ExxonMobilは世界各地で万遍なく原油生産をおこなっており他社を圧倒している。前年同期と比較するとShellは22%増と際立って増加しており、他の4社は大きな変化はなく、BP及びChevronはわずかながら減少している。

 

 天然ガスの生産量はShellが102億立方フィート(以下cfd)と最も多く、わずかの差でExxonMobil(98億cfd)が続いている。残る3社はTotal65億cfd、BP57億cfd、Chevron50億cfdと上位2社の5乃至6割前後である。前年同期に比べるとShellは36%増と大幅に伸びた一方、ExxonMobilは4%の減少となった。その他3社はTotalが9%増、BP及びChevronは微減となっている。

 

 天然ガスを石油に換算した原油・天然ガスの合計生産量ではExxonMobilは395万B/Dでこれに次ぐのがShellの351万B/Dである。その他の3社はChevronが253万B/D、Total 242万B/D、BP209万B/Dである。石油と天然ガスの比率を見ると、ExxonMobilは石油59%、天然ガス41%であり石油の比率が高い。BP、TotalおよびChevron3社も同様に原油生産量が天然ガス生産量を上回っており、特にChevronは石油67%対天然ガス33%と石油が天然ガスの2倍以上である。これに対してShellは原油・ガス生産量が共に50%と均衡している。Shellは英国のBGを買収しており、重点を天然ガスにシフトしつつある。

 

(続く)

 

本稿に関するコメント、ご意見をお聞かせください。

        前田 高行         〒183-0027東京都府中市本町2-31-13-601

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BPエネルギー統計2016年版解説シリーズ:天然ガス篇5

2016-08-08 | BP統計

2.世界の天然ガスの生産量

(欧州・ユーラシアと北米で世界の天然ガスの6割を生産!)

(1)地域別生産量

(図http://members3.jcom.home.ne.jp/maedaa/2-2-G01.pdf参照)

 2015年の世界の天然ガス生産量は年産3兆5,386億立方メートル(以下㎥)であった。これは石油換算では年産32億トンであり、またフィート換算では日産3,424億立法フィートである。

 

  生産量を地域別にみると欧州・ユーラシアが9,898億㎥と最も多く全体の28%を占めている。これに次ぐのが北米(9,840億㎥、28%)であり、これら二つの地域だけで世界の6割弱に達する。その他の地域は中東6,179億㎥(17%)、アジア・大洋州5,567億㎥(16%)、アフリカ2,118億㎥(6%)、中南米1,785億㎥(5%)であった。

 

 各地域の生産量と埋蔵量(前章参照)を比較すると、中東は埋蔵量では世界の43%を占めているが生産量では17%に過ぎない。これに対し北米は埋蔵量シェアが世界全体の7%にとどまるのに対して、生産量のシェアは28%に達しており、埋蔵量と生産量のギャップが大きい。その他の地域の埋蔵量シェアと生産量シェアは欧州・ユーラシアは埋蔵量シェアが30%、生産量シェアは28%とほぼ均衡している。その他の地域の両者の比率は、アジア・大洋州が8%(埋蔵量)対16%(生産量)、中南米4%対5%、アフリカ8%対6%である。このことから天然ガスを他の地域に輸出できるポテンシャルが高いのは中東地域であると言えよう。

 

(他を圧倒する米国とロシア!)

(2)国別生産量

(表http://members3.jcom.home.ne.jp/maedaa/2-2-T01.pdf 参照)

 次に国別に見ると、天然ガス生産量第1位は米国の7,673億㎥/年(742億立法フィート/日、7.1億トン/年)であり、全世界の生産量に占める割合は22%に達する。第2位はロシア(5,733億㎥、シェア16%)であり、この2カ国の生産量が飛び抜けて多い。米国はここ数年シェールガスの開発及び生産が顕著であり、埋蔵量及び生産量とも大幅に増加していることは注目に値する(前章「天然ガスの埋蔵量」参照)。

 

 この2カ国に続くのがイラン(1,925億㎥)、カタール(1,814億㎥)、カナダ(1,635億㎥)であり、米国或いはロシアのほぼ1/4である。6位から8位は中国(1,380億㎥)、ノルウェー(1,172億㎥)、サウジアラビア(1,064億㎥)であり、以上8か国が生産量1千億㎥を超えている。9位以下はアルジェリア(830億㎥)、インドネシア(750億㎥)、トルクメニスタン(724億㎥)、マレーシア(682億㎥)が名を連ねている。

 

(続く)

 

本稿に関するコメント、ご意見をお聞かせください。

        前田 高行         〒183-0027東京都府中市本町2-31-13-601

                               Tel/Fax; 042-360-1284, 携帯; 090-9157-3642

                               E-mail;maedat@r6.dion.ne.jp

 

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