ITSを疑う

ITS(高度道路交通システム)やカーマルチメディア、スマホ、中国関連を中心に書き綴っています。

DSRCサービス利用推進の裏側

2004年12月15日 | ITS
官はしきりとDSRC商業利用を推進しているがそれが意味するものはなんだろう?
まず、国交省(旧建設省プロジェクト)はDSRCの路側通信機を主要道路へ設置したいと思っている。道路に張り巡らされたセンサーは将来道路をインテリジェント化するための神経網として最も基本的なインフラとなる。

一方、ご存じの通り道路への公共投資に対しては小泉改革と世論という大きな逆風が吹いている。DSRCのインフラ整備は当然金がかかる。
渋滞センサーや安全センサーの機能を果たすためには、500m毎くらいの設置は必要なのだろう。例えばJHの高速道路総延長は7300キロ。上下線に設置として約3万機。
路側機本体が200万円といわれており、設置費や運営などを含めれば1000億円単位の費用がかかる投資である。

この逆風を払いのける方法は二つ。一つは「安全」を錦の御旗とすること。もう一つは「民間需要喚起」による経済活性化・費用分担である。

民間需要についていえば、実際のところ民間企業の興味は、実現すれば1000億円単位となる公共投資の部分だろう。DSRC機器メーカーにとってはその分け前争いとなる。
しかし官が民間需要喚起を打ち出しているからには、その姿勢を見せてプロジェクトに入り込むことが肝心だ。実際に民間マーケットがあるかないかは別の話になってくる。

うがった見方をすれば、11月26日に書いた三菱商事のDSRC事業はそれ自身での収益というよりも、世界初のDSRC活用ビジネスモデルを立ち上げるという「官に対する」アドバルーンをねらっているのかもしれない。

だが現実には安全も民間需要もどちらも望み薄である。
事故防止効果という点から見れば路側機との通信はプライオリティーが高いとは言えない。レーダーや路線認識カメラなど車載の自律型装置の普及拡大が明らかに優先事項だ。
また、民間活用のビジネスモデルはまず成立しない。

ITS推進派にしてみれば、ようやくETCは普及の目処が立った。しかしもう一方の路側DSRC網を整備しなければ、スマートハイウェイ構想は何も出来ない。だからなんとしてもやりたいのだろう。

でも整備して何をするのか、という一番大事な事が忘れ去られている。