ITSを疑う

ITS(高度道路交通システム)やカーマルチメディア、スマホ、中国関連を中心に書き綴っています。

生産性本部のITS提言を批判する その2

2004年12月28日 | ITS
生産性本部が発表したITSの普及・発展による「知的交通サービス」の実現に向けてという提言についての批判を続ける。

政府または地方自治体への提言として「ETCの積極的な活用」を呼びかけている。
「交通政策の観点から、ETC をTDM(交通需要管理)実施や社会的費用に応じた料金徴収等に活用できる。そのように、政府や民営化された場合の各道路関係4公団も含めて、ETC を料金政策の一環として活用すべきである。」

「ETC が交通円滑化のためのインフラと考えるならば、道路や路側の機器だけではなく車載器もインフラと考えて、車載器購入者に対する税制優遇や補助制度を、より積極的に実施すべきである。」

交通需要管理って、渋滞を緩和するために特定地域に入場する車両に課金するなどの行政による管理のことだろう。シンガポールやロンドンで行われ、日本でも議論された筈で、そのためにETCを使うなら車載器の無償配布以外にないと思うが。

で、次の提言になるのだろうが、交通需要管理やるなら全車装着が前提。税制優遇や補助制度じゃだめで、無償配布以外にない。そしてそれは今更出来るわけがない。
逆に車載器購入者へのインセンティブは現状ですらむしろやりすぎという感じがする。

最後に
「高級車のオプションでついているサービスで、例えば事故が起こった際に、自動的に警察に通報するようなサービスは安価にすれば、普通の自動車ユーザーでも利用するキラーコンテンツになりうる。
しかし、このシステムの価格は高額であることから、購入したくてもできない自動車ユーザーが数多くいるものと考えられる。人命はかけがえのないものであることから、事故が起こった際の自動通報システムの普及については、政府または地方自治体は例えば同システム購入に対するユーザーへの補助などを行うことにより、同システムの普及促進を行うべきである。」

自分の命をまもる装置に自治体補助って言うのは、ピンと来ない。
例えばエアバック付き車に自治体から補助金を出せといっているのと同じことだ。
逆にこういった事こそ、マーケットのダイナミズムに任せるべきだ。消費者が魅力的だと思う装備は実際にキラーコンテンツになるから、生産性本部に言われるまでもなくカーメーカーが戦略的な価格設定をするだろう。
いまそれをしていない理由は、そこまで消費者が求めていない事に他ならない。それに公共の補助金をだすというのは、全く意味のない提言である。

リストにあるようなそうそうたる学者が揃ってこの程度の提言しか出来ないとは、正直思いたくない。
現実性のない一般論をただ並べているだけで、実現可能な具体的方法論がない提言は何の役にも立たない。

生産性本部のITS提言を批判する

2004年12月28日 | ITS
生産性本部が12月22日、発表したITSの普及・発展による「知的交通サービス」の実現に向けてという提言について、もう少し突っ込みたい。

ITSの普及・定着を図るため今後すみやかに実施すべき提言として

まず
「ITS をより普及させるためには、官民の供給サイドが「サービスを売る」という考え方に、
考え方を大転換させる必要がある。本報告書では、ITS を「高度道路交通システム」から「知
的交通サービス」へと読み替えることを提唱する。」

ということで、最初の提言が名称の読み替え。これで何かが変わるとはとても思えない。

次に
「ITS は、官民がともに供給者となっているシステムであり、しかも、民の方は、自動車メ
ーカー、電機メーカー、通信事業者など、「業」としてITS の供給に取り組む事業者(産業)
のほかに、ITS ユーザーもまたITS の供給に不可欠である。従って、ITS の供給において
は官民のコラボレーション(協働関係)が要求される。」

これ意味判りますか? 
なんか直前にシステムと呼ばずにサービスと呼べ、っていったわりに「システムだ」と断言するあたり、なんだかなぁ。
「ユーザーも供給に不可欠」って、どういう事?何で「従って官民のコラボレーションが要求される」の? 要するに、単なる公共事業のスタンスはとっちゃ駄目で、消費者に受け入れられるサービスを提供しなさい、ということなんだろうか。

次。
「VICS 情報として公共交通に関する情報がリアルタイムに発信されれば、人・貨物ともに
インターモーダル輸送が非常にスムーズに実現することとなろう。VICS センターを管轄す
る警察庁、総務省、国土交通省は、VICS センターが公共交通情報等、幅広い情報の提供を
可能とすることを検討すべきである。」

うーん、電車の遅れや運休状況を、ナビのVICSの様に提供しろってことなのか?それだけでインターモーダル(鉄道や船舶などの交通機関を組み合わせて利用する物流)が本当に活性化するの?
専門家じゃないからわからないけど、モーダルシフトが進まない理由はもっと他にあると思う。

あと3つばかり提言があるけど、長くなるので今日はここまで。

ITS 2005年予想

2004年12月28日 | ITS
いろいろな雑誌などで2005年予想をやっている。
私もITSがらみで考えてみたい。思いつきレベルなので内容はぬるいが、勘弁。

ナビゲーション
市販・メーカー装着共にHDD化が主流となる。
一方、メーカー装着は更に拡大し、大衆車レベルでも標準装備が進むだろう。
標準装備が拡大することで、市販ナビはマニア化し、差別化の為の機能拡大が続くだろう。
同時に、中古車や軽自動車用の廉価ナビが見直される可能性も高い。
カーオーディオのたどった道をナビもたどることになる。工場装着がほぼ100%になり市場が飽和した結果、一般ユーザーは普通にいい音で音楽が聴ければ満足し、イコライザーやDSPにはあまり関心がなくなった。一方でマニアはどんどん深化している。ナビも同様に2極分化となるのだろう。
いずれにしても通信ナビが主流になる可能性は低い。

ETC
ETCは順調に拡大するだろう。高速料金所での差別感とコストを考えれば、既に十分商品的に魅力があるものになっており、新車買い換え時にはETCをつけるとことが、通常の乗用車では当たり前になる。

DSRCサービス
ETCを利用したDSRCサービスは2005年も結局パッとしないだろう。一部で始まった実験的な動きも、マーケットをドライブするような内容を実現出来ないだろう。
従って、サービス機能対応ETC自体の市場投入も、一部メーカーを除いては積極的にはならないだろう。確固とした市場ニーズ自体存在しないため、何をやってもセルフダイナミックな動きにはならないだろう。

テレマティクス
G-BOOKとCARWINGSに関しては、メーカーがインセンティブをつけてでも拡大させるだろう。しかし、これもマーケットによって牽引されるダイナミックな動きにはならない。ホンダのインターナビはこのまま順調に会員を拡大するだろう。

カーオーディオ
i-podに代表されるHDD携帯プレーヤーとの組み合わせでさらに新商品が投入されるだろう。
HDD携帯プレーヤーをストレスなくカーオーディオ機器で再生する仕組みや、アダプターが登場しそうだ。

ハンズフリー
ブルートゥースなどによるワイヤレスヘッドセットの使い勝手がもっとも優れていることが認識されるだろう。但し、電話機の対応状況と価格とがネックである。電話機への装備がすすみ、ブルートゥース機器が実売5千円をきれば爆発的に普及するだろう。
ハンズフリーはヘッドセットが主流となり、スピーカーによるハンズフリーはあまり人気がなくなるだろう。結果、テレマティクスのハンズフリー機能は売りには繋がらない。

アドバンスドセーフティー
レーダーやカメラによる車両のアドバンスドセーフティー機能は、高級車への標準装備が拡大し、価格も若干こなれてくるだろう。しかし2005年にはまだ一般的な普及には至らないだろう。トレンドとしては確実に拡大することは間違いない。