続き
漸く飯士山の肩までやって来た。7時半に出発して10時20分、スリルに富んだ道のりだった。後は勾配のきつい一直線を15分頑張れば山頂に着く。萎えそうな気持を奮い立たせて重い腰を上げた。
歩幅を狭く一歩一歩ただ上を目指す
そして遂に三角点にタッチ
そこには難行苦行を乗り越えた私達への大展望と言うご褒美が待っていてくれた。小説「雪国」の湯沢とはまるきり変貌してしまったリゾートマンションが立ち並ぶ湯沢の街以外は犇めく山々が幾重にも重なって果てが無い。
鋸尾根 尾根の頭
右上に小さく汗して登った「上越のマッターホルン」の異名を持つ大源太山。稜線を左に追っていくと巻機山から金城山、駒ケ岳・中ノ岳と続き末端を複雑な凹凸を刻む八海山が締めくくっている。そこから体を180度回した先には苗場山、そして青雲の果てに妙高・火打がぼんやりと浮かんでいた。
とにかく日差しが強い。 雄さんが日差しの避けられる場所はないかと探していたところ、もう一つの山頂を見つけた。そこは本峰より1m低いが山頂標柱も有り姥権現の様な石仏と表情のハッキリしない石仏が2体、西方を向いて佇む山頂だった。
目の下の高速道路を走る車の音もここまでは届かず聞こえるのは、おびただしい数のトンボの羽音だけだ。
日差しを受けながら、たった二人だけの山頂での至福の時は瞬く間に過ぎる。 最初の山頂でもう一度展望に目を向け南の肩に降りたところで単独の男性とすれ違った。今日、初めて会う登山者だ。
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いよいよ鋸歯の尾根歩きが始まった。時々両側が切れ落ちる尾根道から見下ろす谷は深く切れ込みその高度感にたじろぎ乍らも振り返ると先ほど擦れ違った登山者がすでに山頂直下をユックリ登っている所だった。時折吹き上げて来る風に慰められ鋸尾根を無事通過しやがて尾根の頭・・・そろそろマムシを見たあたり。 もう居ないだろうと思いながらも腰を引き引き歩いていくと足音に気付き山道から藪に移動している姿を見てしまった。アップダウンがきつい上に鋸歯という危険個所があるため、このコースを利用する登山者は少ないので蛇にとっては居心地の良い場所だったのかもしれない。
腕にトンボ
帰りにピークを数えてみたら全部で9個。10個目が山頂と言う事になる。その9個のピークを終え急坂を下り第二休憩所に差し掛かるころ川の音とオートバイのエンジン音が一つになって響き今日の登山も終わりに近い事を知らせてくれた。
が、登山口まではもう一下り。朝、一気に登り上げた登山道も疲れた足には長い長い下り。立ち止まれば羽虫が寄ってくると言うジメッとした暗い道であるため足を止める事も出来ない。前方に魚野川が見えた時には正直ホッとした。