ワインな ささやき

ワインジャーナリスト “綿引まゆみ” (Mayumi Watabiki) の公式ブログ

欧州の食料品の品質保証制度から日本の食偽装を考える

2013-11-13 12:00:34 | おいしい食べもん
2013年11月11日、欧州委員会の農業・農村開発担当委員ダチアン・チオロッシュ氏が来日し、都内のホテルで“Taste of Europe”のキャンペーンの目的を説明する記者発表会を行い、私も出席しました。


中央がダチアン・チオロッシュ氏

記者発表会の目的は、28の加盟国で構成されるEUの各原産地で生産される伝統的な食品や飲料の質の高さを日本の消費者に伝えること

欧州には、現代の品質基準や消費者ニーズに対応できる、原産地の長い伝統と文化に基づいた高品質な食や飲料の特産品があります。



例えば、ワインならシャンパーニュ、マデイラワイン。生ハムやチーズ、オリーブオイルなども。



EUの農産物品質保証制度では、欧州産各製品の高い水準を保証するため、厳格な要件を課しています。
食品の安全を保証する厳しい衛生規定など、特定の要件をクリアした製品は、本物の原産地製品として保護されます。

その製品がEUの農産物品質保証制度で保証されたものであることがわかるように、EUの品質認証マークが製品に表示されます。

EUの認証マークは以下の4種類。



PDO原産地呼称保護 (Protected Designation of Origin)
特定の町、地域、国で生産された食料品や飲料、アルコール類であること。
原産地と密接な関係があり、伝統のレシピで特定の地理的地域で生産・加工・包装された製品。
例)フランスのコンテチーズや、イタリアのパルマ産生ハムなど

PGI地理的表示保護 (Protected Geographical Indication)
PDOの規定よりもゆるやかで、もっと広い地域であったり、原材料は地域外から入手する場合などもあるが、基本的にはPDOに準拠。
例)イタリアのシチリア産ブラッドオレンジ、英国ウエールズ産ラム肉など

TSG伝統的特産品保証 (Traditional Speciality Guaranteed)
加工品にのみ与えられる認証で、伝統的な食材を用いているか、伝統的製法に基づいて生産されているもの。
例)ベルギービール、イタリアのナポリピッツア、スペインのハモンセラーノなど

EU有機認証
製品の原料である農産物の95%が有機的に生産されていること、をはじめ、EU法で規定された基準に従って加工されていること。



有機認証を除く3つのいずれかに認定されている食品は1170種類以上で、1500種類以上のワインと約320種類のスピリッツがPDOまたはPGIの認証を得ています。

認証登録が多い国は、イタリア(255件)、フランス(201件)、スペイン(167件)。


ワインとスピリッツを除く売上げは チーズ が最も多く、生肉・食肉製品が続きます


シチリア産ブラッドオレンジのジュース



EUは、認証マークをつけた製品に関しては、その品質基準、安全性、伝統、おいしさ、本物であることを保証し、日本を含む海外市場にアピールしていこう! という積極的な姿勢を見せています。

今、日本では、食の偽装問題が次から次へと発生しています。
EUの品質認証制度で考えると、ニセモノや模造品を○○産と表示することはできません。

日本では、“商標登録的な保護”はありますが、真の意味での原産地を保護する制度が欧州に比べて格段に遅れているといえるでしょう。

今回の欧州委員会の農業・農村開発担当委員や、生産者団体およびメーカー担当者の来日が、日本にいい刺激を与えてくれたことを期待したいと思います。

※3つの認証製品のデータベースリストは下記のサイトで閲覧できます(英語版)
 DOORS http://ec.europa.eu/agriculture/quality/door/list.html






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