外国で一時的個人的無目的に暮らすということは

猫と酒とアルジャジーラな日々

シリア南部スウェイダーの悲劇とドルーズの孤立

2018-09-21 18:48:34 | 中東ニュース

 

 

 

「Sweida syria map isis attack」の画像検索結果

 

7月25日の早朝、IS戦闘員らがシリア南部のスウェイダー市と東・北東郊外を襲って自爆や銃撃等を行い、シリア人権監視団によると250人近い死者が出た。これはシリアでのISの攻撃による死者数としては最大人数とされる。また、地元メディアによると、東郊のシブキー村で女性や子供らが拉致され、そのうちの1人の若者が後日殺害された。政府軍や同盟勢力、武器を取った地元の人々がISをスウェイダー県から駆逐したが、拉致されている約30人の解放交渉は進んでいない。今月に入って、彼らの姿を示す短い映像が公開された。その中で1人の女性が「2018年9月11日」と日付を明示し、政府もロシアも他の誰も彼らの解放に向けて交渉を行っていないとして、動画の視聴者に助けを求めている。

 

上記のスウェイダー東郊シブキー村から拉致された人々の動画(アラビア語)

 

これほど大人数の死者を出した攻撃で、しかもそれ以来女性や子供たちが拉致されたままであるにも関わらず、世界的に見て、この事件がメディアで大きく取り上げられることはなく、7月25日の事件当日と翌日にニュースになった程度で、後は忘れ去られてしまった感がある。その後も関連ニュースを継続的に発信しているのは、シリア人権監視団とスウェイダーの地元メディアにほぼ限定される。SNSの反体制派のページで取り上げられることもない。それはなぜかと考えると、最終的に答えは「スウェイダーの住民の大多数がドルーズだから」ということになると思う。

ドルーズはイスラム教シーア派の一派とされ、シリアではスウェイダーを中心に分布している。レバノン、ヨルダン、イスラエル支配下のゴラン高原にも存在する。

ドルーズはイスラム教シーア派の一派とされると書いたが、実際にはイスラムとは別の秘密主義的な宗教なのだと思う。私にはドルーズの友人たちがいるが、彼らはコーランを読まないし、モスクで礼拝しない。酒を飲むし、ラマダーン月に断食しないし、輪廻転生を信じている。宗教行為を行うのは長老たちのみで、その内容は一般の信者には知らされていない。彼らには、多数派であるスンニ派に異端視される存在だという自覚が強く見受けられる。

スウェイダーは近隣のダラアやクネイトラとは異なり、住民が集団規模で反体制派に参加することはなかった。その一方で、積極的に政権を支持するわけでもなく、政府の支配地域ではあるものの、市内の治安維持を住民が担当するなど一定の自治を保ってきた。そのおかげか、2011年3月の反体制運動勃発以降も、激動のシリアにあって例外的な平穏を保ってきたのだ。

7月25日に先立ち、ダマスカス南郊のヤルムーク・パレスチナ難民キャンプを拠点としていたIS戦闘員の一部が、政府側との停戦合意に従って、スウェイダー東・北東郊外に隣接する砂漠地帯に移送されたという経過があり、スウェイダー関係者には、「シリア政府とこれを後見するロシアが、ISがスウェイダーを襲撃するよう仕向けた」と主張する傾向がみられた。「政府が自治を取り上げて支配を強めたがっている」「スウェイダーの若者の多くが徴兵逃れをしている状況を変えようとした」というのだ。

拉致されたのがキリスト教徒であれば、バチカンや欧米メディアが反応していただろうが、ドルーズは一応イスラム教の一派とされているので、そうはならなかった。シリアのドルーズの活動家たちが大きく声を上げて国際世論に働きかける様子もなかった。外部の人々に訴えかけ、理解してもらうことを諦めているかのようにみえる。閉鎖的な集団だからだろうか。

 

7月25日のスウェイダーの悲劇は、そしてISに拉致された女性や子供たちは、このまま忘れ去られていくのだろうか?

 

(参考資料)

 

・アラビア語

تقرير تفصيلي عن مجريات الأحداث في السويداء بعد هجمات تنظيم داعش

https://suwayda24.com/2018/07/25/%D8%AA%D9%82%D8%B1%D9%8A%D8%B1-%D8%AA%D9%81%D8%B5%D9%8A%D9%84%D9%8A-%D8%B9%D9%86-%D9%85%D8%AC%D8%B1%D9%8A%D8%A7%D8%AA-%D8%A7%D9%84%D8%A3%D8%AD%D8%AF%D8%A7%D8%AB-%D9%81%D9%8A-%D8%A7%D9%84%D8%B3%D9%88/

 

・英語

Sweida province: Isis knocked on doors then slaughtered families

https://www.theguardian.com/world/2018/jul/27/isis-knocked-on-doors-calling-out-locals-by-name-and-slaughtered-families

 

New video shows dozens of IS-held Syrian Druze pleading to be saved

https://www.middleeasteye.net/news/video-shows-dozens-held-syrian-druze-sweida-plead-be-saved-say-theyre-forgotten-840919520

 

・日本語

イスラム国、女性ら36人拉致か シリア南部

https://www.asahi.com/articles/ASL704QVFL70UHBI00T.html?ref=chiezou

 

「ドゥルーズ派」(ウィキペディア)

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%89%E3%82%A5%E3%83%AB%E3%83%BC%E3%82%BA%E6%B4%BE

 

 


ちなみに、数か月前からマレーシアのクアラルンプール空港で足止めされているシリア難民のハサン・クンタール氏もスウェイダー出身で、徴兵を逃れて出国した過去を持つ。ツイッターで日々自分の置かれた状況を訴えかけ、世界中の人に助けを求めているにもかかわらず、彼は未だにどこにも行けないでいる。

Hassan Al Kontar@Kontar81
https://twitter.com/Kontar81/status/1022091711407779840

 

(終わり)

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

シリアのイドリブの運命とアブ・ムハンマド・ジューラーニ

2018-09-07 05:08:06 | 中東ニュース

猫は内容と無関係です。(^▽^)/

 

もう2週間くらい前の話になるが(時差の範囲よね)、8月23日に「シャーム解放機構」がアブ・ムハンマド・ジューラーニ指導者の演説の録画をテレグラムで公開した。「シャーム解放機構」(以下HTS)とは、シリアでアサド政権と戦うヌスラ戦線が、他の武装集団を統合して組織改編を重ねた後の現在の名称。「ヌスラ戦線→ファタハ・シャーム戦線→シャーム解放機構」と覚えておくと何かと便利だと思います(何に)。アブ・ムハンマド・ジューラーニ(以下ジューラーニ)はそのアミール、つまり最高指導者だ。

 

このブログで以前ジューラーニについて書いた記事:

 

ヌスラ戦線指導者アブ・ムハンマド・ジューラーニのアルジャジーラ独占インタビューhttps://blog.goo.ne.jp/mendokusainoyo/e/f2c2c2fbd6304d18f89574b3b3978a69

 

ヌスラ戦線指導者アブ・ムハンマド・ジューラーニの素性と、寿司屋の三毛猫https://blog.goo.ne.jp/mendokusainoyo/e/30da85f51f18f08d19d3519d30eb1630


ロシアのシリア空爆をめぐるヌスラ戦線指導者の声

https://blog.goo.ne.jp/mendokusainoyo/e/0559a728f69ed9c3fe1c074cfd1f4758

 

ジューラーニのこと、いっぱい書いてたんだな。ジューラーニの素性と寿司屋の三毛猫って、なんなんだ私は・・・

 

と、とにかく、久しぶりに公開されたジューラーニの映像を見て、「あ、ジューラーニ、前より人相が悪くなってる・・・」と思った。2016年7月末に彼が初めて素顔を見せ、「ヌスラ戦線はアルカイダから離脱して、『ファタハ・シャーム戦線』として生まれ変わる」と宣言した時の容貌と比べてみてほしい。

 

2016年7月28日

 

2018年8月23日

 

ほら、顔がいかつくなってるでしょう。まあ、そうなっても全然おかしくない状況だが。HTSの存在(彼の人生も)は、もはや末期だと言えるし・・・

 

2015年9月末にロシアがアサド政権側についてシリアへの軍事介入を開始してから、政権側が圧倒的に優勢になって勝ち進み、HTSを含む反体制派側は支配地域を次々と失った。HTSと他の武装集団との抗争も激しい。せっかく脱アルカイダ宣言を出して名称を変えても、国際社会に完全に無視されて「アルカイダ系テロ組織ヌスラ戦線」と呼ばれ続け、そして今、最後の主要拠点イドリブがシリア政府軍・ロシア軍・イラン系の勢力等に攻め入られる瀬戸際にあるのだ。それを避けたい(=さらなる難民の流入を避けたい)トルコがロシアと交渉し、反体制派の諸集団を「国民解放戦線」という名の下に集めて政府軍との和解・交渉の方向に持って行こうとしていて、HTSにも解散を迫っているという。

 

この状況で出された動画の中で、ジューラーニは政権側との交渉・和解を「裏切り」として許さない姿勢を示し、最後まで武力闘争を続けるよう呼びかけている。「穏健な反体制派」とされる自由シリア軍傘下の諸集団などとは違い、「テロ組織」とされるHTSには逃げ場はないので、背水の陣である。

 

HTSはイドリブ県の最大地域を支配しており、その戦闘員は約6万人と言われている。HTS以外にも、中国を始めとする多くの国・国際組織からテロ集団に指定されているウイグルの武装組織「東トルキスタン・イスラム運動」などもイドリブを拠点にしている。

 

イドリブの運命は7日(あ、もう今日だ)にテヘランで行われるロシア・トルコ・イランの首脳会談で明確になる予定だ。デミストゥラ国連シリア大使は、「メディアによると、シリア政府はイドリブ攻撃を10日まで待つとしている」と言っていたが。

 

イドリブが政権側の攻撃を受けるのは時間の問題だと思う(郊外ではもうロシアの空爆や政府軍の砲撃等が始まっている)。問題は、どの程度の規模の攻撃が行われるかだ。全面攻撃か、限定攻撃か。面積の広いイドリブ県の全域で、数万人規模の捨て身の戦闘員と戦うのは容易なことではない。

 

シリア人権監視団等によると、シリア政府は北のアレッポからイドリブ、ハマー、ホムス、ダマスカスを経由して南のヨルダン国境まで伸びている高速道路M5の完全支配を目指しているという。ロシアはイドリブの「テロ集団」(=ヌスラ戦線)撲滅を主張している。イドリブに隣接するラタキアにあるフメイミーム基地に飛んでくる無人機の問題もある。イランは「テロを駆逐してシリア政府の支配を全土に広げる」ことを目指している。しかし、攻撃の有無・規模を最終的に決定するのはロシア、つまりプーチン大統領である。攻撃を避けるためにトルコは努力しているが、できることは限られている。アメリカのトランプ大統領はイドリブ攻撃を牽制するような発言をしているが、本格的な軍事介入をするとは考えられない。「化学兵器が使用されなければ、後はどうでもいい」という姿勢だ。

 

HTSはテロ集団呼ばわりさているが、単にシリアでアサド政権側の軍事勢力と戦っているだけで、民間人に対するテロなどしていない。病院や学校などを空爆し、子供だろうが女性だろうが何の容赦もなく民間人を虐殺しているのはシリア政府軍とロシア軍・同盟勢力の方なのだ。

 

イドリブ県には、政権側の支配下に入った東アレッポや東ゴータを始めとするダマスカス郊外の諸地域、ダラア、クネイトラ等から反体制派戦闘員とその家族、その他の一般市民が大量に流入しており、現在の人口は約300万人だとされることが多い。周辺地域も含むと400万人に達するという見方もある。トルコ国境は閉鎖されており、彼らには安全な逃げ場がない。アレッポ郊外の反体制派支配地に逃げても、いずれ攻撃対象になる可能性が高い。彼らの運命はロシアの決定にかかっている。シリアでの反体制運動開始以来最大の悲劇が起こらないことを願う。

 

 

シリア勢力地図

 

 

こちらはイドリブ勢力地図

 

 

(参考記事)

Syria's war: Who controls what?

https://www.aljazeera.com/indepth/interactive/2015/05/syria-country-divided-150529144229467.html

 

The battle for Idlib: Three scenarios

https://www.aljazeera.com/indepth/opinion/battle-idlib-scenarios-180904074749602.html

 

ジューラーニの演説録画(アラビア語)

https://www.youtube.com/watch?v=PPcMzBhbRHY

 

上記演説に関する記事(アラビア語)

http://www.aljazeera.net/news/arabic/2018/8/22/%D8%A7%D9%84%D8%AC%D9%88%D9%84%D8%A7%D9%86%D9%8A-%D8%A5%D8%AF%D9%84%D8%A8-%D9%84%D9%86-%D8%AA%D9%81%D8%A7%D9%88%D8%B6-%D8%A7%D9%84%D9%86%D8%B8%D8%A7%D9%85-%D9%88%D8%B3%D9%84%D8%A7%D8%AD%D9%86%D8%A7-%D8%AE%D8%B7-%D8%A3%D8%AD%D9%85%D8%B1

 

(終わり)

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

シリア南部ダラアで今起こっていることとワールドカップロシア大会

2018-06-30 15:39:15 | 中東ニュース

 

 

シリア南部ダラアの民間人の命が危険に晒されている。

 

約10日前から、政府軍側がダラアの反体制派(自由シリア軍)支配地域の東側に激しい攻勢をかけ、砲撃や空爆、地上攻撃を行っているのだ。政府軍の同盟勢力であるイランの部隊やヒズボラ等はもちろん、ロシア軍も激しい空爆を行って加勢している。

 

ダラアの位置を示す地図。ヨルダンと接している。

 

国連の26日の発表によると、ダラアに住む約75万人の生命が危険に晒され、約4万5千人がヨルダン国境に向かって避難した。避難民の数は刻一刻と増えていることだろう。シリアのNGO「Assistance Cordination Unit](ACU)の29日付け発表によると、今回の攻撃による死者は100人を超え、10万人以上が他地域(主にヨルダンとの国境地帯)に避難、6つの病院が業務を停止している。23日、地元の評議会はダラア県東部を「被災地」とみなすと発表した。

 

シリア人の友人の家族も今ダラアから避難しているそうだ。その友人自身はご主人や子供(+猫たち)とともにサウジに住んでいるのだが、実家はダラアで、そこに家族が残っていたという。どんなにか心配なことだろう。

 

攻撃されている地域は、2017年7月にロシア・米国・ヨルダンが合意した「緊張緩和地帯」に含まれ、長期的に平穏を保っていたが、シリア政府側がこれを破った形になる。アメリカは軍事介入しないと宣言しており、ヨルダンは「これ以上難民は受け入れられない」として国境閉鎖を継続している。

反体制派は応戦しているが、軍事力が全然違うので、勝てるわけはない。2015年9月にロシアがシリアに軍事介入して、政府軍を支援するために空爆を開始し、2016年12月にはアレッポ東部が陥落。この時点で反体制派側の敗北は、ほぼ確実になったのだと思う。

ロシア軍がダラアを激しく空爆して、民間人の死傷者や大量の避難民が出ている中、同国で開催中のFIFAワールドカップで世界は盛り上がっている。日本の盛り上がりようは皆さんよくご存じだろう。スポーツは政治と無関係という意見もあるだろうが、政治的に利用されている面も否定できないだろう。シリアで住宅地や病院、学校等への空爆を続けているロシアのイメージがアップし、経済効果が生まれるのを目の当たりにするのは耐え難いので、私はW杯をボイコットしている(と言っても、そもそもうちにはテレビがないんだが)。一般の人々がW杯を楽しむのになんの異存もないが、シリア情勢を気にかけている人々、特に支援活動に携わる人たちは、この問題について一考してみてほしいと思う。アメリカがシリア政府軍の軍事空港を空爆したら声をそろえて一斉に非難するわりに、ロシアの国防相が「ロシア軍はシリアで兵器の実験をしている」と自慢気に言っても(参照)、誰も気にしていないようだが・・・

ヨルダンの活動家たちは、SNS上で「 #OpenTheBorders」(#افتحوا_الحدود)というハッシュタグを使って、シリアから避難する人々を受け入れるよう政府に呼びかけているが、ヨルダン政府はこれ以上受け入れるのは無理だとする姿勢を崩さないだろう。しかし、シリア人の活動家もFBで書いていたが、ヨルダンにいるシリア難民はヨルダン政府からお金をもらっているわけではないし、学校に行っていない子供も多いし、電気・水道・教育等のインフラ施設に関しても、様々な国から多額の支援金をもらってきたはずなのだが、それはどのように使われているのだろう・・・ヨルダンでもトルコと同様、世論は大量の難民流入に反発する方向にあるので、それも考慮されているのかもしれないが。

避難民が増えて自国に難民として流入することを懸念するヨルダンが仲介して、29日の午前零時から12時間の一時停戦が成立し、その後12時間延長されたとアルジャジーラで報道されていた。一時停戦は包括的停戦への布石であり、この間に政府側と反体制派側がヨルダンやロシアの仲介で協議して、停戦条件に関して合意を目指すことになる。東ゴータと同じ流れになるのは目に見えており、ロシア側が提示した条件の大半を反体制派側が受け入れざるを得なくなるだろう。注文を付けられる立場ではないし、合意できずに戦闘が再開したら、激しい攻撃に晒されてさらに大きな犠牲を払うことになるからだ。東ゴータの時は、交渉が進められている最中にドゥーマで化学兵器攻撃が起こり、結果として反体制派のイスラム軍は相手側の停戦条件を受け入ることとなった。今回、あの悲劇が繰り返されないことを願う。

 

W杯ロシア大会ボイコットのキャンペーンより

 

シリアのNGO、ACUの報告

L'immagine può contenere: una o più persone

 

<参考記事>

(アラビア語)

http://www.aljazeera.net/news/arabic/2018/6/29/%D8%AF%D8%B1%D8%B9%D8%A7-%D8%A3%D8%B9%D8%AF%D8%A7%D8%AF-%D8%A7%D9%84%D9%86%D8%A7%D8%B2%D8%AD%D9%8A%D9%86-%D8%AA%D8%AA%D8%B6%D8%A7%D8%B9%D9%81-%D9%88%D8%AF%D8%B9%D9%88%D8%A9-%D8%A3%D9%85%D9%85%D9%8A%D8%A9-%D9%84%D9%88%D9%82%D9%81-%D8%A7%D9%84%D9%82%D8%AA%D8%A7%D9%84

 

(英語)

https://www.theguardian.com/world/2017/jul/09/us-russian-ceasefire-holding-in-southwest-syria-say-rebel-sources

 

これも英語。上にある地図の引用元

https://www.alaraby.co.uk/english/news/2018/6/28/syria-airstrikes-halt-un-emergency-aid-convoys-to-daraa

 

TRTWorldのダラア情勢に関するニュース映像

https://youtu.be/AvehbeyjfLU

 

ちなみに、私はW杯以外でもロシアをボイコットしているが、イクラやキャビアなどを自分で買って食べたりしないので(お金がないから)、ウオッカを買うときにロシア製品を買わない程度のボイコットしかできていない・・・まあ自己満足なのだ。

 

(終わり)

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

2018年6月24日のトルコ大統領選

2018-06-24 17:14:13 | 中東ニュース

 

本日6月24日(日)、トルコでは大統領選・総選挙が実施される。

っていうか、もうとっくに投票始まってる・・・もっと前に選挙について書きたかったのに(でも書こうと思いついたのは2、3日前っていうトロさ)、どうしてこんなに時が経つのは早いのか。私がどんくさくて無気力なだけ? 書くといっても、普段さほどトルコニュースをチェックしているわけではないので(アラブニュースで手一杯で)、極めて個人的な素人の感想しか書けないが・・・まあ個人のブログだしいいよね(^-^)

 

今回は憲法改正で大統領の権限が極端に強化された後の初の大統領選ということで注目が集まっているが、私が特に注目しているのは6人の候補者の中のうち現職エルドアン(64、以下敬称略)の対抗馬、最大野党・共和人民党(CHP)のムハッレム・インジェ候補(54)だ。

 

インジェを初めてTRT(トルコ国営テレビ)で見たとき、「な、何この人…CHPったら、こんな隠し球を持ってたの~?」と驚愕した。非常に強気な姿勢でエルドアンの悪口を堂々と言いまくり、滑舌がよくて力強い。そんな印象だった。CHP党首のクルチュダロール氏はインテリでジェントルマンなので、どんな手を使ってでも権力を掌握しようと突き進むエルドアンに太刀打ちできない感じなのだが、インジェならいけるかも!と思わせるものがある。彼の演説をよく聞いたら、言ってることはエルドアンの悪口に加えて経済・教育改革等での大風呂敷を広げる感じの大衆迎合的な内容で、野党批判ばかりやっているエルドアンと大差はないのだが、言い換えればエルドアン並のカリスマがあるということになるだろう。インジェの22日のイズミルでの選挙集会では、およそ250万人が集まったと言われている。これはトルコの政治集会としては、歴史に残る規模だとトルコメディアが書いていた。ツイッターでも、エルドアンのほうが圧倒的にフォロワーが多いが(エルドアン1300万余、インジェ440万余)、インジェのほうが一つ一つのツイートへの「いいね!」の数が多い。世俗主義・中道左派のCHPを支持する世俗派、左派、学生、インテリ層等がツイッターを多用するというのもあるかもしれないが。ちなみにCHPは世俗主義だが、インジェはムスリムの家庭に育ち、母親と妹はヒジャーブをしているので、反エルドアンだがこれまでCHPに投票しなかったムスリムの票が今回はそちらに流れる可能性がある。また、彼はトラックの運転手の息子で、庶民出身であることを前面に打ち出しており、その効果も狙えるかもしれない。とにかく、今回の大統領選ではインジェの得票数がどこまで伸びるかに注目したい。

インジェほどではないが、中道右派「いい政党」(IYI)(究極のネーミング)の女性党首メラル・アクシェネル候補も人気が高いようだ。この政党は、エルドアン率いる与党公正発展党(AKP)と連立を組む極右の「民族主義者行動党」(MHP)から分離した一派からなる。勉強不足で最近まで知らなかったが、当初IYIは結成したばかりで国会での議席がなく、選挙に参加する資格がなかったのに、CHPが議員15人を「貸して」、資格を獲得させてしまったらしい。で、この2党は当然連立を組んでいる。AKP・MHPを支持していた右派の票がこちらにいくらか流れるわけで、しかもアクシェネル候補は女性なので、女性票も期待できる。個人的には、この人はいかにも右派って感じで好感が全然持てないが。今日の投票でエルドアンが過半数を取れず、7月8日に決選投票が行われることになったら、アクシェネルの票の多くはインジェに流れる気がする。

クルドの国民民主主義党(HDP)からは、デミルタシュ前共同党首が獄中から立候補している。反エルドアンのクルド人で彼に投票する人は少なくないと思うが(在日クルド人の多くがそう)、得票数は大して伸びないと思う。所詮獄中からの出馬で、選挙運動もろくにできず、メディアへの露出も最低限だったし。決選投票では、デミルタシュの票がけっこうインジェに流れるんじゃないかな~

そういうわけで、個人的には、エルドアンの強権体制を終わらせる力がありそうなインジェを応援したいのだが、そういうわけにもいかない事情がある。というのは、インジェは「シリア難民をシリアに帰還させる」と宣言しているのだ。アクシェネルもそう。デミルタシュもそれに近いことを言っていた。エルドアンがどんどんシリア難民を受け入れて、その人数が300万人をとうに超え、不況が続く近年、トルコでの彼らに対する風当たりはしだいに強まっているのだ。「シリア人は政府にお金をもらって、タダで医療を受けて、自分たちの仕事を奪った上で、休暇にはシリアに帰国したりしている。帰れるんなら帰ればいい」と思い込んでいるトルコ人・クルド人は多い。エルドアンもこれを考慮して難民受け入れを停止し、できるだけシリア国内で避難民支援を行うとともに、北部の軍事作戦で制圧した地域(アフリーン、ジャラーブルス、バーブなど)に希望するシリア難民を帰還させる方向に進めているが…エルドアンが国籍を与えたシリア人約3万人が今回の選挙で投票するそうだが、彼らはエルドアンに入れざるを得ないだろう。

あと、エルドアンがもしも落選した場合、トルコとカタールやイラン、サウジ・UAEとの関係はどうなって行くのか心配だ。っていうか、反エルドアンのサウジ・UAEあたりが野党連合にコンタクトして、既に支援を申し出たりしてそう・・・カタールとアルジャジーラを応援したい私としては、色々心配だ。

選挙運動疲れか、野党連合に押されてるせいか、ここ数日エルドアンが憔悴して見えるけど、倒れるんじゃないのか・・・でもエルドアンだから大丈夫か(?) なお、前回の国民投票の時と同様、今回も選挙の公正さが懸念されるが、そもそも非常事態宣言が解除されてない中での選挙って、ありなんかいって気もする。

大統領選と同時に議会選も行われる。選挙結果の予測記事では、エルドアンがかろうじて大統領に当選するが、議会ではAKP・MHPが過半数を取れず政治的に不安定になることを懸念する向きがみられたが、どうなんだろう…

そういうわけで、今回のトルコの選挙、結果が非常に気になる…投票が締め切られたらすぐ開票が始まるので(時差は6時間)、朝まで寝られないかも~ドキドキ(◎-◎;)

 

(参考記事)

日本語

https://fx-rashinban.com/k00011-FX%8f%ee%95%f1/a4572-%83G%83~%83%93+%83%86%83%8b%83%7d%83Y%82%b3%82%f1%82%c6%83g%83%8b%83R%91%e5%93%9d%97%cc%91I+%92%bc%91O%98_%93_%90%ae%97%9d%81I

 

英語

https://neoskosmos.com/en/117540/your-guide-to-sundays-turkish-elections-and-what-they-mean-for-greece/

 

トルコ語

https://www.bbc.com/turkce/haberler-turkiye-44557263?ocid=socialflow_facebook

 

https://www.bbc.com/turkce/haberler-turkiye-44543399?ocid=socialflow_facebook

 

 

(終わり)

 

 

 

 

 

 

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

米英仏のシリア空爆について

2018-04-24 14:23:52 | 中東ニュース

 

4月14日(土)、用事があったので珍しく午前中に起きた。

まずパソコンを開いてFacebookをチェックしたら、2時間ほど前に米英仏がシリアのアサド政権の軍事拠点複数を空爆したとのニュースが流れていた。7日に反体制派支配下の東グータのドゥーマで起こった化学兵器による攻撃を受けての空爆で、軍事空港や化学兵器貯蔵場所等を対象としたものだという。

「おお、とうとうやったか~!もうやらんかと思ったぜ」と喜びつつ、アルジャジーラの生放送を観る。出かける予定は取りやめ。

しかし、その後まもなく、米国防長官の発表でこれは一回こっきりの空爆だったと判明し、大いに落胆する。

 

後にシリア支援を実施している日本の団体や関係者が(欧米諸国の反戦・人権団体の多くも)、この空爆を非難する声明をネット上で矢継ぎ早に出したのを見て、「ああ、またか」と思う。去年の4月にイドリブ郊外ハーン・シェイフーンでサリンを使用したとみられる攻撃が起こった後、トランプ大統領がホムスのシュアイラート軍事空港(この攻撃を行った戦闘機が離着陸したとみられる軍事基地)をピンポイントで空爆させた時もそうだった。口から泡を吹いて痙攣する子供たちの映像を伴う虐殺(数十人死亡)のニュースが流れても、ロシアやシリア政府軍の空爆で学校や病院が破壊され、民間人が大勢死傷したとのニュースが流れても、何も言わずにスルーするのに、米軍が軍事標的を一回空爆したら、みんな一斉に抗議するのはなぜだろう。彼らは天災に遭ったわけではない。当然どこかの軍事空港から離陸したどこかの軍に属する戦闘機から落とされた爆弾が原因で死亡したわけだが、それについては深く考えず、「かわいそう。でも誰がやったかはっきりしないし…」と思考停止してグレーゾーンに入れておき、ハーン・シェイフーンの事件に関する調査の結果、「アサド政権がサリンを使用した」と明確に認定する内容の国連報告書が出されても、これもスルーする割に、米国が軍事空港を空爆したらこぞって糾弾するのはなぜなのか。私なんかにはとてもできないような、素晴らしい支援活動をしている人たちであるだけに、非常に残念だし、彼らの声を聞いて、シリアに関心のある一般の人々がその意見に染まっていくのはなおさら残念だ。(だから、ない気力を振り絞ってこの文章を書く事にしたのだ。私の声など誰にも届かないかもしれないが…)

米国がシリアを空爆したら、「イラク侵攻と同じ、武器商人の暗躍、イスラエルの陰謀、シリアの人達がかわいそう、戦争反対、憲法第9条死守!」という図式が浮かびがちなようだが、シリアとイラクでは状況が違うし、ましてや日本の政治状況は無関係(私だって憲法第9条は死守したい)。武器商人の暗躍やイスラエルの陰謀はあるにしても、そういった側面だけから中東における欧米の軍事介入の全てを説明しようという態度は横着に思える。

 

今回空爆対象になったのは軍事施設であって、ロシアやシリア政府軍のそれのように住宅街を無差別に狙ったものではない。ちなみに、イスラエルも米英仏のシリア空爆に先駆けて、シリアのT4軍事空港を空爆しているが、それについては誰も気にしていないようだ。イスラエルはちょくちょくシリア政府の軍事施設を空爆しているが、あまり話題にもならない。それは一体なぜなのか。

 

米英仏の首脳は、自分と自国の利益のためにシリアを空爆したのであって、「シリア政府が化学兵器を使用した」というのは、建前に過ぎないという意見もよく聞く。それはその通りだ。そもそも、相手の国民のことを思いやって他国に軍事介入をする国など存在しないと思う。国連平和維持軍等の枠組みを離れて軍事介入を行うのは大きなリスクを伴うから、決断した本人にとっての利益が判断材料に入っているに決まっているし、その国の世論の支持を得るためには、軍事介入の「正当性」と共に、自国にとっての国益が必要になってくるだろう。

 

しかし、彼らの目的が何であるかは問題ではない。重要なのは結果なのだ。シリアの反体制派支配地に暮らしている(あるいはそこから避難した)人々は、「3か国の空爆を歓迎する」とSNS上で次々に表明しているし、もっとやってほしいと願っているのだ。これが一番重要なことだと私は思う。彼らだって、トランプ大統領が彼らのために善意で空爆したなどとは思っていない。米国に軍事介入してもらう以外に自分たちへの攻撃を止める手段がないと知っているから、歓迎しているのだ。去年のシュアイラート軍事空港への米国の空爆の後もそうだった。

 

そもそも、シリアが内戦状態に陥ってから、政府軍の空爆や砲撃等の標的となっている地域の住民から、米国に軍事介入を求める声が徐々に高まり、2013年8月のグータでの化学兵器攻撃による大量虐殺の後、ピークに達した。しかし、オバマ大統領は空爆をためらい、「シリアの化学兵器を国際管理下で廃棄させる」とのロシアの提案に応じた。あれは、オバマのシリア政策における最大かつ致命的な失敗だった。2015年9月末にはロシアがアサド政権側での軍事介入を開始して、政権側を勝利に導き、今に至る(2016年12月の東アレッポ陥落で、政権側の勝利はほぼ確実になったように思う。東グータも陥落したし、次はダマスカス南郊に駒が進められている)。化学兵器を使用した空爆は、それ以来何度も繰り返されている。

 

3国によるシリア空爆の「合法性」に疑いを持つ人も多いと思う。しかし、国連安保理では、シリア政府に不利になる決議はことごとくロシアの拒否権行使で闇に葬られているのだ。化学兵器疑惑の国際調査についても、ロシアとシリア政府が調査団の現地入りを遅らせ、証拠を隠滅していると言われる。シリア政府の不利になることを「合法的」に行うのは不可能な状態なのだ。当該地域で空爆をしているのは、シリア政府軍とロシア軍のみ。米軍率いる有志連合が空爆しているのは、北部・東部のISの支配地や拠点、北部の旧ヌスラ戦線の幹部等のみ。反体制派は航空機を所有していないし、化学兵器を持っていたら戦闘で使うだろう。ドゥーマに関して政権側と和平交渉を行っている最中に、自分たちの支配地域で化学兵器を使用するいわれはない。今回の化学兵器攻撃の後、反体制派のイスラム軍は停戦協定への最終合意を余儀なくされ、ドゥーマから完全撤退することとなった。

ロシアがアサド政権を支援する限り、政権側に不利になる「和平交渉」は進展しない。現状を鑑みるに、「シリアに平和が戻る」ということは、アサド大統領やその一族、側近らが大量虐殺の罪に問われずに引き続きシリアを支配することを意味するだろう。

今回の空爆は何の役にも立たないへなちょこ攻撃だったと初め私は思ったが、反体制派支配地で活動するフリージャーナリストのハーディ・アブドゥッラー氏のFBでのコメントによると、そうでもないらしい。ダマスカスのメッゼ軍事空港やカシオン山の軍事拠点等が激しく叩かれ、政権側は震え上がった由。米国防総省は、今回の空爆による破壊状況を示す衛星写真を公開している。少なくとも、威嚇の効果は多少あったのかもしれない。

 

シリアの人たちは辛抱強い。「米国に本気で軍事介入して、シリア政府軍による民間人への空爆を防いでほしい」という願いが実現する日は来ないだろうが、それを求める彼らの声は、また聞こえている。私には何もできないけれど、せめて日々発信されている彼らの声に耳を傾けていきたいと思う。それが私なりの誠意だと思うからだ。

 

(参考)

英語ですが。

'Too little, too late': What Douma refugees think of US strikes on Syria

http://www.middleeasteye.net/news/too-little-too-late-syria-war-douma-ghouta-west-debate-air-strike-assad-russia-2027833063

 

Before and after: satellite pictures of airstrikes in Syria

https://www.theguardian.com/world/ng-interactive/2018/apr/15/satellite-pictures-airstrikes-syria?CMP=fb_gu

 

Will U.S. airstrikes on Syria change anything?

https://www.youtube.com/watch?v=7Q6VHoV4PPI

 

これはアラビア語。上述のハーディ・アブドゥッラー氏のコメント

https://www.facebook.com/HadiAlabdallah/videos/2531585040399238/UzpfSTEwMDAwMDE2OTg5NjgzMjoyMDY2OTAzMDk2NjU4NjY3/

 

以下は日本語:化学兵器か シリア・イドリブ攻撃で子供も被害に

http://www.bbc.com/japanese/video-39499387

 

アサド政権の使用認定=シリアのサリン攻撃-国連報告書

https://www.jiji.com/jc/article?k=2017102700252&g=int

 

(終わり)

 

 

 

 

 

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする