外国で一時的個人的無目的に暮らすということは

猫と酒とアルジャジーラな日々

パレスチナでノドとココロを潤すには

2010-12-18 17:01:13 | パレスチナ
パレスチナのマクハー(喫茶店)や路上の屋台で紅茶を頼むと、たいがいハーブの枝付きの葉っぱを入れたものが出てくる。マラミーヤ(セージのこと)かナアナア(ミントのこと)である。このマラミーヤ・ティーはどこかショウガ茶っぽい風味(そう思うのは私だけ?)で、飲むとふっと心がなごみ、身体もほんのり温まる、そんな優しい飲み物なのである。ミント・ティーならエジプトでよく飲んだけど、マラミーヤ入りはここパレスチナで初めて飲んだ。マラミーヤ・ティーといえばパレスチナ、パレスチナといえばマラミーヤ・ティーなのである。うちの庭にもマラミーヤの茂みがあって、好きなだけとっていい、と言われているが、葉っぱをちぎって洗い、紅茶に入れる手間が億劫なので、めったに使わない。我ながらものぐさである。以前うちのヤギにこのマラミーヤの葉っぱをやったら、いそいそと嬉しそうに食べていた。さすがパレスチナのヤギである。

パレスチナ産のビールといえば、タイベー・ビールである。
これはラマッラー近郊のタイベー村というキリスト教徒の村で生産されている。中東諸国のキリスト教徒の皆さん、いつもお世話になっております!少数派の暮らしは色々大変だと思いますが、これからもがんばってアルコール類を造り続けてくださいね!
タイベー・ビール製品で、市場に一番よく出回っているのは小麦ビールであるが、実は色んな種類が生産されていて、工場まで出向けば手に入るらしい。唯一のパレスチナビールなので、これを飲みたい!のはやまやまなのだが、1瓶(何mlか忘れたが、500mlより少ない)10シェケル(240円くらい)もするのでなかなか手が出ない。10月初めに開催された、タイベー・ブルワリー主催の「オクトーバー・フェス」にも行きたかったのだが、エジプトからの到着直後で家探しに忙しく、結局行きそびれてしまった。不覚である。
私が普段飲んでいるのは、オランダ製の「ORANJEBOOM」と名前の、1缶6シェケル(500ml)の輸入ビール。味は可もなく不可もなしと言うところか。

シャワーの後、夕食を食べるときに欠かせないのはビールだが、寝る前に飲みたくなるのはアラクである。アラクはアニス風味の透明な強いお酒で、水で割ると白くにごる。同じお酒がトルコではラク、ギリシャではウゾーと名前を変える。最近飲んでいるものは、その名も「ラマッラー」という、ラマッラー製のもので、アルコール度50%!油断して飲みすぎると胃が痛くなる。
ここしばらくの私の数少ない娯楽は、寝る前にアラク(もちろん水で割って)をちびりちびり飲みながら、トルコの連続恋愛ドラマのDVD(アラビア語シリア方言吹き替えで、聞き取るのが一苦労)を鑑賞し、登場人物に突っ込みを入れることである。なんでそこで告白せんのん?!とか、さっさと警察に電話したほうがいいんとちゃうん!とか、突っ込みを入れるときはどうしても関西弁になる。今見ているのは「アースィー」という、トルコのシリア国境に近い田舎の農場主の娘アースィーと、イスタンブルからやって来て隣に住み着いた若いビジネスマン、アミールの恋物語である。全部で150話もある大河ドラマなので、みてもみても終わらない。みているうちに、いつか原語のトルコ語でみれるようになりたい!そのためにトルコ語をがんばって勉強しなきゃ!という埒のない野望さえふつふつとわいてくる。そう、トルコの恋愛ドラマは魔性なのだ。奥が深すぎて溺れてしまいそうになる。そしてこれを見る際に欠かせないのがアラク、というのが私見である。トルコドラマとアラクで2重に酔っ払ってから眠りにつく日々。全て世はこともなし。

ワインはぜいたく品なので、めったに買わないが、買うときはベツレヘム産の「クレミザン」の赤を選ぶ。これは一瓶30シェケルで、味はまあまあってとこである。西エルサレムの大きなスーパーに行ったら、もっと安いワインがよりどりみどりなのだが、どうせならイスラエルワインでなくパレスチナワインを買うべきだと思うので、我慢する。一度西エルサレムの酒屋で、「パレスチナのワインありますか?」と聞いてみたところ、ないね、というすげない返事が返ってきた。まあそうだと思ったけどさ。

うちの大家さんは敬虔なムスリムなので、アパートを借りるとき、家の中では酒を飲まないように言い渡された。しょうがないので、こっそり隠れて飲み、缶や瓶のごみは黒いポリ袋に二重に包んで捨てている。酒の買出しには山を降りて、ダマスカス門の外側にあるミニスーパーか、旧市街のキリスト教地区まで行く。うちの近所で買うと大家さんにばれるかもしれないからだが、そもそもオリーブ山はムスリム地区なので、酒屋がない可能性が高い。
イスラエルという酒飲み天国(ユダヤ教はワインを飲むことを奨励しているそうな)を横目で眺めながら、あえて東エルサレムのムスリム地区に住んでこっそり酒を飲む、これが私のパレスチナへの愛の形である。


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「ああここは占領地なのね!」と思うとき

2010-12-18 16:57:30 | パレスチナ
「占領されたパレスチナ」といえど、ここ東エルサレムのオリーブ山での暮らしは平穏無事で、自分からデモなどに出かけない限り、占領の事実をうっかり忘れそうになるほどだが、それでも「ああそうか、ここは占領地だった!」と思い出させる出来事がちらほら起こるのだった。

西岸地区から無許可で侵入した労働者の逮捕
大家さんのアパートに上がりこんで、子供部屋のタンスの衣替えを手伝っていたとき、外が急に騒がしくなった。奥さんが窓を開けてしばらく耳を澄ましたのち、説明してくれたところによると、西岸地区からエルサレムにこっそり入り込んだ無許可の労働者たちが逃げてきて、追いかけてきたイスラエル警察と揉めていたらしい。西岸地区に住むパレスチナ人は、公式な許可証を手に入れなければ、エルサレムやイスラエル領内に入ることができない。でも西岸地区には仕事があまりないので、こうやってこっそり入り込んで闇で働くパレスチナ人労働者は後を絶たないらしい。彼らはつかまったら牢屋行きである。
「ここは自分の国なのに!あの人たち自分の国で働いてるのに、許可がないからって逮捕されるのよ!」と奥さんは憤慨している。全くもってその通りである。

火事の原因
パレスチナの新聞(AL-QUDS)に載っていた、小さなローカル記事によると:
先週、西岸地区では火事がウン件発生した(何件だったか数字は忘れちゃった)。その主な原因は、不注意、電気のショート、子供の火遊び、そして入植者の放火、など。

カランディアのチェックポイント
エルサレムとラマッラー(西岸地区の主要都市、エルサレムの北に位置する)の間を行き来する人・車両は、必ずこのチェックポイントを通らないといけないので、この周辺はいつも混雑している。特にラマッラーからエルサレムに向かう場合のチェックが厳しく(西岸地区からの、イスラエルへの玄関なので)、時間がかかるのだ。バスで通る場合、私のような外国人はバスに乗ったままでよく、乗り込んでくる兵隊にパスポートを提示すればいいだけなのだが、パレスチナ人はバスを降りて徒歩で通過し、身分証のチェックを受けないといけない。バスはチェックポイントを越えた地点で待機して、彼らが再び乗り込んでくるのを待つのである。その間バスの運転手はタバコを吸ったりお茶を飲んだりし、私はぼんやりと窓の外を眺めて時間をつぶす。木曜日の夕方は特に混んでいて、この間などラマッラーのバスターミナルを出発して、このチェックポイントを通過して再び出発するまでに2時間かかった。チェックポイントからエルサレムまでは30分。ちなみにエルサレム・ラマッラー間の距離は約15kmである。ラマッラーからエルサレムに通勤・通学しているパレスチナ人は毎日2回ここを通っているのである。これが「占領」のあかしでなくてなんであろうか。

旧市街で発砲するイスラエル兵
ヘロデ門から旧市街に入って、入り組んだ細い路地をしばらく歩いたところに、私の行きつけのインターネット屋さんがある。ゲームする子供たちでいつも騒がしいが、他の店より少し安いのである。ある日、いつものように入り口脇の台に座ってメールを書くのに熱中していたら、間近で不吉な音が聞こえきた。顔を上げておもてを見ると、店の前の路地にイスラエル兵が数人いて、道の前方に向かって発砲しているではないですか!音から察するに実弾ではないようだったが。店の番台のお兄ちゃんは全然動じず、「THIS IS PALESTINE」と言いながら、慌てふためく私に笑いかけ、店の戸を閉めにかかる。でも全面ガラスの引き戸だし、そんなもん閉めたって危険なことに変わりないのでは・・・。別の男の子が、「子供が石を投げたのが原因。これはインティファーダだ。」と説明してくれた。店の奥のほうでは(といっても狭い店なので、たいして奥でもないが)、小学校低学年くらいの小さな男の子が、騒ぎにお構いなしにゲームに熱中している。
しばらくしたら銃声がやんで、兵隊たちは引き上げていった。投石した子供は上手く逃げおおせたのだろうか。だいたい子供が石を投げたくらいでこんな狭い路地で発砲するなんて、非常識にもほどがあるっちゅうねん、危ないやんか!ほんまにありえへん!と心の中で関西弁で毒づきながら、私はメール書きを再開するのだった(念のため奥の台に移ったが)。それにしても、突然の出来事に呆然として写真を撮りそこねた私は、ジャーナリストには一生なれないであろう。
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