ヨルダン5日目は、朝10時過ぎに目覚めた。
前夜アラクを飲みながら寝落ちして、夜中起きて日記を書いたりして、朝方また寝たせいで遅くなったのだが、どうも日本での昼夜逆転生活に近づいている気がする。旅行中に昼夜逆転すると困るのだが…夜型人間だと言うと、「じゃあ、あちら(中東や欧州)に行ったら朝型になってちょうどいいね!」とよく言われるのだが、別にそんなことはなく、こちらでも数日後には昼夜逆転するのだ。
朝食代わりに果物を食べ、洗濯やPC作業などをしていて、気が付いたら午後1時を過ぎていた。旅行者なのに、我ながらのんびりしすぎだろう。
1時半頃に出かけて、近くの両替屋で日本円を両替したり、市場付近を歩いて、メロンジュースを飲んだりしてから、ヨルダン人の知人宅に向かった。お茶(コーヒー)の時間にお邪魔する約束だったのだ。
両替屋は「ウエスタンユニオン」の看板が目印
ダウンタウンには生絞りのジュース屋さんが多い
メロンジュースは牛乳と砂糖入りで、非常に甘かった。メロンが十分甘いので、砂糖はいらないと思うんだが。
市場の入り口付近のスイカの屋台
ヒマワリの頭部を売る店
ごまパンサンドイッチの屋台
ぷっくりしたごまパンの開きにクリームチーズを塗って、茹で卵やトマトなどを挟んでくれる。井桁のように組まれた細長いパンは買ったことがないが、焼いたごまが香ばしくて美味しいはず。
知人の家には、ダウンタウンからセルビスに乗り、近くで降りて歩いて行った。彼女は私より年配のヨルダン人の主婦で、かつて私がアンマンに住んでいた頃、スペイン文化センターのスペイン語講座で知り合った。旦那さんはドイツで修業した歯科医で、当時私のアパートの近所に小さな診療所を開いていた。一度、帰国前に歯の詰め物が取れた時、診てもらったことがあるのだが、彼は私が持って行った詰め物を見て、「やっすい材料使ってるな~」と笑いつつ、さくっと応急処置をしてくれた(無料で)。もしかしたら、ヨルダンの方が日本よりも歯科医師のレベルは高いのかもと思った瞬間だった。
道すがら目が合った猫さん
旦那さんが歯科医なだけあって、知人のマンションは高級住宅街にあった。玄関を入って、リビングに案内されている途中、台所を覗いたら、旦那さんがじゃがいもの皮を剝いていた。料理をするアラブ人男性は少ないはずなのに、さすがドイツ帰りだ(?)と感心する。知人が10日前に白内障の手術を受けて、まだオーブンを使う料理などは危なくて出来ないから、代わりに料理してくれているのだという。彼女の方は、「ああやってお客さんの前で、自分が家事をやっているところを見せびらかしたいのよね」と不満そうだったが。
夫婦2人暮らしなのに広々とした空間
小テーブルに読みかけの「海辺のカフカ」のアラビア語版を発見
コーヒーとケーキをいただき、知人と近況を報告し合っているうちに、家事を終えた旦那さんもやってきた。旦那さんは当然、ヨルダンの経済状況のひどさについてひとしきり嘆く(ヨルダンの人は皆やる)。彼は、今は別の場所で診療所をやっているらしい。もうけっこう高齢なはずだが。
色々スパイスが入った美味しいケーキだった。(市販品)
おしゃべりしていたら、部屋の向こうから、なにか神々しいオーラを発する生き物が現れた。
夫婦の飼い猫の白猫さんだ。(名前は失念)
背後のプロパンガスのボンベが引き立て役になっている。
ふわふわの白い長毛に薄ピンクの耳と鼻先、そこに青い鈴が画竜点睛
この猫は高貴そうな見かけのわりにフレンドリーな性格で、初対面の私にぐいぐい近寄ってきて撫でさせてくれた。
フレンドリーすぎて、私用のグラスから水を飲んだくらいだ。
光栄ですわ…
皆で猫を眺めながらコーヒーを飲んだが、飲み終わってもお代わりが出てくる気配がなかったので、おいとました。知人は余ったケーキを土産に持たせてくれた。
アラブ人の家に招待された時、それがお愛想で言っているだけなのか、それとも心から誘ってくれているのか、判断が難しい。アラブ人にも本音と建前があるわけだが、それは国や地域、階層などによって違うだろうし、もちろん個人差もある。この知人は元々さほど親しかったわけではないが、私が帰国してからもSNSで繋がっていて、しょっちゅうコメントしてくれていた。それで、今回アンマンに滞在するにあたって連絡してみたら、ぜひにと自宅に招待されたわけだが、もしかしたら義務的に言っていただけかもしれない。あるいは、私の考えすぎかもしれない。この辺のことは、何年アラブ人に関わっていても、よくわからない。まあ、かわいい白猫さんに会えたから、よしとしよう。
またセルビスでダウンタウンに戻り、アブダリ方面に向かう道沿いの本屋街に出て、何軒かハシゴする。
アンマンに来た時は必ず行く書店「ダール・シュルーク」
ダール・シュルークはパレスチナ西岸地区のラーマッラーにも支店があるらしい。HPはこれ(アラビア語)
店内が広く、文芸書、宗教書、絵本等、各分野の本の数が多い。埃かぶってるけど。
絵本コーナーで気になった本「くまとねこ」
表紙の絵は熊と小鳥だが。
これは外国の絵本のアラビア語版だった。この本に限らず、アラブ諸国の書店で表紙が可愛くて良さそうだと思った絵本は、どれも外国語からの翻訳書なのだった。アラブの絵本作家もがんばってほしいものである。
この書店は、以前来ていた時はアラビア語の小説の出版状況等に詳しいベテランの男性がレジにいて頼りになり、本を買うと頼まなくても値引きしてくれたものだが、今回レジにいたのは初めて見る若い男性で、あまり質問できる雰囲気ではなく、本を買っても値引きしてくれなかった。ち…
店を出てダウンタウンに戻る途中、初めて見る書店があったので、入ってみた。後で調べたら1985年創業とある。建物の2階に入っていて分かりにくいので、ここに書店があることに今まで気づかなかった。
アルアフリーヤ書店(Al Ahlia Bookstore インスタはこれ)
階段を上った先は…
本の世界であった。
作り付けの木製の書棚や展示台に本がぎっしり並んでいる。
村上春樹の「1Q84」がヨルダン国王の著書やサダム・フセインを尋問した元CIA職員の回顧録などに囲まれいる。
ヨルダンの本屋には珍しく、本にビニールフィルムが掛けてあって、汚れていない。働いている人達も、いかにもこの道のプロフェッショナルという感じで、本について質問したら、すぐに答えが返って来る。しかも、本を2冊買ったら頼んでないのに負けてくれた。昔のダール・シュルークのようだ。
ここで買った本は、「ターキッシュドリーム」(حلم تركي)という題名のモロッコ人の女性作家の小説。
題名に惹かれて買ったのだが、帰国してから読んでみたら、わりと無理やり感のあるメロドラマだったので(主観です)、途中で読むのを止めてしまった。題名や表紙でアラビア語の小説を買うと、失敗しがちなのよね…
もう1冊は、在仏のレバノン人作家アミーン・マアルーフの小説「光の庭」(حدائق النور)。マニ教の開祖マニの伝記だ。
アミーン・マアルーフはフランス語で執筆するので、この本もアラビア語への翻訳本なのだが、彼の作品にはハズレがないので、ターキッシュドリームの方がハズレである可能性を鑑み、保険として買ったのだ。アラビア語で書くアラブ人作家の作品を買いたいのはやまやまだが、お気に入りの作家が未だ見つけられないでいる。
ホテルに帰る途中、小さいカルフールの支店を見かけたので、スパイスと猫用パウチを買った。
スパイスミックス、お土産にいいかも。
なつかしいインドミーの数々
カルフールの近くに、トルコアイスの店が出来ていた。
皆写真を撮っていた。新しくできた店のようだった。
買い物を済ませてホテルに戻り、ビールを飲んでから昼寝して、夜の外出に備えた。心情的には、夜の外出がこの日のメインイベントだったのだ。
夜8時、前日出産した猫の様子を見に例の靴屋に行った(前回の話)。「猫の話はまだか~」とやきもきしながらここまで読んで下さった方、お待たせしちゃったわね…
靴屋は市場周辺にあり、ホテルから徒歩10分以内に着く。外から様子を伺うと、猫が店内にいると怒るという店主らしき人物が見えたので、少し後に戻ることにして、夕食用のサンドイッチを買いに行く。この日は羊のタンのロールサンドにした。前日コシャリを買った安食堂の斜め向かいにある内臓系サンドイッチ専門の小さな店で買う。安食堂の系列店で、いつも男性客で賑わっているところだ。
爽やかさのない見た目をカバーするためか、ディスプレイに工夫を凝らしてある。
ロールサンドをテイクアウトして靴屋に戻ったら、店内にお客はいたものの、店主の姿はもうなかった。入って行ったら、店員2が出迎えてくれて(店員1は接客中)、私を屋根裏の猫がいるところに連れて行ってくれた。
さあ、母猫と子猫の運命はいかに…
私はそれについて、昨夜からずっと考えていた。あの若い猫は獣医さんに子宮を広げる薬を注射してもらった後、2匹目の子を出産したが、普通なら全身を舐めてあげて、すぐに授乳しながら次の出産に入るはずが(私が昔同居していた猫のふぁーちゃんはそうだった)、多少舐めただけで放置して、すぐに授乳する様子もなかったのだ。最後に見た時、母猫は段ボールの中でだらりと横たわり、その傍らで濡れそぼった赤ちゃん猫が虫のようにうごめいていたのだった。その後、猫たちはどうなったのか。
私は3つの可能性を考えた:
1) 母猫も子猫も死亡
2)母猫は無事で子猫だけ死亡
3)母猫も子猫も無事
この3つの中では、2番の可能性が最も高そうに思えたが、お産での体力の消耗と注射の副反応のリスクを考えると、1番もありえなくはない気がした。3番の可能性は低いと思った。もし母猫があのまま授乳せずに放っておいたら、子猫が無事でいられるわけがないからだ。
そんな不吉な予想が私の頭の中を渦巻いていたが、階段を上って屋根裏の物置に行ってみたら、こんな風景が私を待っていたのでございます。
ふかふかのかわいい子猫が!2匹もいる!!生きて動いてる~!!!
母猫は段ボールの外を巡回していたが、私を見たらすぐに駆け寄ってきて、私の足に体をすりつけた。私のこと(あるいはちゅ~るのこと)を覚えていたらしい。
撮影失敗
予想が外れて良かった…
母猫は前日の夜私が帰った後にもう1匹生んで、ちゃんと授乳していたようだ。第一子は死産だったが、その後生まれた2匹は無事で、悪いところはなさそうに見えた。母猫はサバトラだが、赤ちゃんは2匹とも茶色だ(片方は白が混じってるけど)。もしかしたら、最初にこの靴屋に来た時に見かけた茶トラ猫が父親かもしれない。
この猫
店員2によると、母猫はエサ(生の牛ミンチ)を食べたところだという話だったが、ちゅ~るをあげたら勢いよく舐めていた。ちゅ~るは別腹だもんね。撫でてあげたら、気持ちよさそうにしている。かわいい…
店員たちは、母猫をベッラ、子猫をローズとスッカルと名付けたらしい。ローズはアラビア語でアーモンド、スッカルは砂糖のことだ。アーモンドちゃんとシュガーちゃんか。ベッラはイタリア語の「bella」(=美女)だろうか?
後ろ髪をひかれつつ、カルフールで買った猫用パウチと手持ちのカリカリを店員2に渡し、夕食らしき焼き魚をほぐして白ご飯にのせたもの(たぶん出前)を食べている店員1に挨拶して、店を後にした。
ホテルに戻る前に、前日も行った酒屋で酒を買い足すことにする。またアラクとペトラビールを買おうと思ったが、お店の若者が商品について色々説明してくれたので、「CARAKALE」(たぶん「カラケール」と発音)というブルワリー(参考)のクラフトビール2本とコニャックの小瓶を買う。全部ヨルダン産だ。ヨルダンの醸造所を応援しなければ(使命感)。
ダウンタウンの小さな酒屋さん
もし地震があったら…
値段が一目でわかる明朗会計の店だ(ヨルダンディナール表記)。
この日の収穫
ホテルの前の道で焼いたひよこ豆が1パック1JD(約200円)で売られていたので、それも買ってみた。
お腹が減っていたので、ホテルに帰ったら、さっそく晩御飯にした。
前日の残りのコシャリ、羊のタンのサンドイッチ、焼きひよこ豆
羊のタンは茹でてトマトやレモンと共にみじん切りにしてあって、意外に爽やかで美味しかった。ビールに合う。焼いたひよこ豆は悪くはなかったものの、枝豆ほどの風味はなかった。豆はすぐお腹が膨れるので、あまり食べられないし。
翌日は少し遠出して、ザルカに行くつもりだったので、この日は早めに寝た。
(続く)
他のことが、霞んでしまうほど、めでたいですね。
ご友人の家の白ネコさん、コップに頭突っ込んで、水を舐めているとこ、凄いですね。
ブログの更新も、良いペース。外気も涼しくなってきたことだし、続きを楽しみにしています。
では、また。
急に気温が下がって、いい気候になりましたね。実りの多い秋にしたいものですが、どうなるかな…Zhenさんもこの秋は色々活動されそうですね。お体に気を付けて、充実した秋をお過ごし下さいね~