外国で一時的個人的無目的に暮らすということは

猫と酒とアルジャジーラな日々

うちの猫の出産(17) ファーティハの失踪と帰還(シリーズ完結編)

2014-01-03 23:47:10 | ヨルダン(猫中心)



子猫を連れ去ったあとも1週間ほど、ファーティハは毎日うちにご飯を食べにきていた。
しかし7月も終わり頃のある日を境に、ぱったり姿を見せなくなった。
翌日も翌々日もその次の日も、待っても待っても待っても現れない。

これは一体どうしたことだろう。
また何か気に障るようなことをしたのかしら?
いくら考えても、これという決定的な原因が思い浮かばない。

子猫はともかく、ファーティハまでいなくなってしまうとは予想していなかったので、私はたいへんさびしかった。
経験はないが、同棲していた恋人にある日突然出て行かれた人って、こんな気持ちなんじゃないだろうか(・・・いや、だいぶ違うのかも)。

考えてみれば、私たちは4月からずっと毎日共に暮らしていたのだ。
何かにつけてやたらに鳴きわめき、窓を開けてくれだの、お腹が減っただの、なに、これしかないの?もっといいご飯をちょうだいだの、新聞なんか読まずにアタシを撫でろだの、それは撫ですぎよ、しつこいわねえだのと絶えず自己主張する、コミュニケーション能力の高い猫だった(向こうからこっちへの完全な一方通行だが)。
出産に関してみせた特殊な行動からもわかるように、存在感のあり余るほどある、ドラマチックな猫だった。
おかげで一緒に暮らしていて、退屈することがなかったのだ。

君がいなくなった家はまるで、主人をなくしたあばら家のようだ(そのまんまやんけ)・・・。
なんだかよくわからないけど私が悪かった、ふぁ~子、帰って来てくれ~!

そんな具合に、私はしばらくめそめそ暮らしたが、やがて心を決めた。
ファーティハが帰ってくるのを気長に待つことにしたのだ。
猫には猫なりの事情があって出て行ったのだろうが、事情が変われば(あるいはお腹が減ったら)帰ってくるかもしれない。
もしかしたら一生帰ってこないかもしれないけど、とにかく待つの。

そうして、猫がいるとできないこと(邪魔されずに時間をかけて料理したり、友達と旅行したり)をしながら、猫不在ライフをそれなりに楽しむよう努めた。

そして失踪から約3週間後、ファーティハは帰宅した。

夕食後、台所で洗い物をしていたら、みゃあみゃあ騒ぎながら飛び込んできたのだ。
一瞬、「え、これどこの猫?」と思ったが、ちゃんと見たらファーティハだった。
すっかり痩せ細り、毛並みが荒れて枯れ枝などが絡まっていて、鼻の頭のへんが妙に黒ずんでいたせいで、別の猫に見えたのだ。
この様子では、いなくなってから路上生活をしていたようだ。
そしてお腹が減ってもう限界というところで、このうちに舞い戻ってきたらしい。
余分なお肉がすっきり落ちてスリムになってる・・・路上生活ダイエット、効果的だな。

缶詰のフードを出してあげると、ファーティハはニャニャニャニャ言いながら、すごい勢いでたくさん食べた。
そしてミルクも飲んで、満足そうに口の周りを舐め、ソファーの片隅でとぐろを巻いて寝てしまった。
明日は市場で鶏肉を買ってきて、茹でてあげようと私は思った。
無事の帰還のお祝いである。

その日からずっと、ファーティハはうちで暮らしている(今のところ)。
失踪中に子育ては終了したらしく、ご飯を食べたらすぐどこかに出かけていく、ということはもうなかった。
子猫たちのその後は、結局不明なままである。


初めてうちに来た頃のファーティハ




これで、うちの猫の出産シリーズは終了です。
えらく長くなった上、途中で長期のブランクが入ってしまい、申し訳ない。
一部でも読んでくださった方、本当にありがとうございました。

そして遅くなりましたが、新年明けましておめでとうございます。
2014年もよろしくお願いしますね~。
コメント (3)
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うちの猫の出産(16) 子猫たちのお引越しの後日談

2014-01-02 22:27:22 | ヨルダン(猫中心)


ファーティハが子猫たちを全員連れ去ったあと、私は気落ちしつつ片付けものをしていた。

ああ、あのこたちは行ってしまった。
もうあの可愛い姿を見られないのね。
ドアを開けたのがいけなかったか。
ドアを開けて掃除したの、初めてじゃないんだけど。
ファーティハは今まで何も言わなかったけど(当たり前)、実は私に対する不満が溜まっていたのかしら・・・?

そんなことをくよくよくよくよ考えていたら、外で子猫の鳴き声がした。
もしや、子猫たちが戻ってきたのか?
それとも行方不明になったあの1匹?

急いでドアを開けたら、そこには見たことのない子猫がいた。
青い目の茶トラだ。
生後2ヶ月目くらいだろうか、ファーティハの子供達より大きい。
お腹を空かせているようだったので、缶詰めのフードをあげてみたら、少しだけ食べた。
そのあと、うちのドアに向かって必死に突進してきた。
どうも家の中に入りたがっているようだ。

子猫たちがいなくなった直後に現れた、見知らぬ子猫。
これも何かの縁かもしれない。
飼ってみようかと思った矢先、ファーティハが引越し先から戻ってきた。
そして、この子猫を見るやいなや、「シャー!」と激しく威嚇して遠ざける。

ファーティハは子猫を移動させたあとも、前回の引越しと同様うちに御飯を食べに通ってくるつもりだろう。
その時に家の中に他の猫がいたらどうなる?
怒ってもう二度とうちに来てくれないかもしれない。
それはイヤだ・・・。

迷った末、結局子猫をうちに入れないことにした。
とりあえずエサだけそばに置いてやり、心の中で謝りつつそっとドアを閉じる。

子猫はそのあとも庭で一晩中鳴き続けたが、その声は次第に小さくなっていった。

そのまま行き倒れになるかと思われた子猫だが、幸いなことに翌日大家さんの孫ハイサム君に拾われ、飼われることになった。
それを聞いて私はほっとした。
見捨てた手前、気になっていたのだ。

しかしそれから間もなく、その子猫は事故で死んでしまったと聞いた。
ハイサム君が子猫の首に、首輪がわりに縄を巻きつけたのが原因で、窒息してしまったらしい。
不憫ななことである。
死体は庭の片隅に埋めたとハイサム君は私に言い、その場所を掘り返してみせてくれた。
ハイサム・・・



これはハイサム君たちが飼っている別の猫。こちらはたくましく生き延び、私を見ると強引にエサをねだるようになった


コメント
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