今朝早い時間に電話が鳴ったので、父に何かあったのではないかと急いで電話を取ると、電話の相手はまさにその父からだった。
実は、父が昨日転んで大腿骨付近の肌の色が変わっていると妹から知らされていたので、よもや骨折でもしていないかと心配していた。
妹によると「多分骨折はしていない」とのことだったが、心配なので今日は様子を見に父の所へ行ってこようと思っていた。
その父からの電話だったので、内心、父が直接電話できたのなら大丈夫かとちょっぴり安心しながら「足はどう?」と聞くと、「あぁ大したことはない。みんな(職員さんたちのこと)大げさに騒ぎすぎるんだ」とのことだった。
きっと職員さんたちは、骨折でもしていたら大変だと心配して下さったのだろう。
とりあえずヨカッタと思ったが、やはり今日は行ってみようと思って、父に「今日行くからね」と言うと、父は妹から今日私が来ると聞いていたようで、今朝の電話の用件は私に持ってきてほしいものの注文だった。
「●●●という風邪薬を買ってきて欲しいんだ。30錠入ったのを2箱頼む」
父にそう言われ、私は返事をしぶった。
「お父さん、風邪薬は飲んじゃあいけないってお医者さんが言ってたでしょ。風邪の時はお医者さんに言えばお薬出してくれるんだから・・・」
そう言って父になんとか市販の薬を諦めさせようと思ったが、父は「いやいいんだ。大丈夫だ。頼む、買ってきてくれ」の一点張り。
こういう症状があるのかどうか知らないが、父はまさに「風邪薬中毒」だ。
ただしどんな風邪薬でもいいと言うわけではなく、決まった銘柄のものに固執している。
父によると、風邪の時にその風邪薬を飲むと、すぐに良くなるのだそうだ。
思うに、そもそも父が思っている症状は「風邪」ではない。
誰だって風邪じゃなくてもくしゃみが出ることはあるし、くしゃみをしたら鼻水が出ることもあるだろう。
父はそれら全てを風邪のせいだと思い込み、その度ごとに風邪薬を飲むものだから、風邪薬の無くなる早さと言ったら尋常ではない。
多分、箱に書かれた規定量以上の数を飲んでいる。
医師からも「風邪薬はあまり飲みすぎるとと害がありますからね。腎臓にも悪いですから飲まないで下さい」と言われている。
確かに父の腎臓の検査数値は良くないそうだ。
ダメだ、買えないとなんど言っても「頼む、頼む」と懇願された。
ついに根負けして「わかった。じゃあこれが最後だからね」と言うと、嬉しそうに「2箱あれば一年持つから大丈夫だ」と言う。
一年なんて持つわけない。
持って一ヶ月だろう・・・
そう思ったが、父の言うとおりに風邪薬を買って持っていった。
それを父は本当に嬉しそうに受け取ってくれた。
妹も父からずいぶん風邪薬を頼まれたようで、あとから妹に「頼まれて2箱持って行っちゃったよ~」と電話をすると「うん、それでいいんじゃない」とのことだった。
妹とも意見が一致したのだが、たとえ身体に悪くても父が懇願するほど飲みたがっている薬なら飲ませてあげてもいいんじゃないかという事。
風邪薬を飲むことによって他人に迷惑をかけるのでなければ、それで父の気持ちが納得するのなら、風邪薬を持って行ってやろうということになった。
これも父の執着なんだなぁ。
でも風邪薬に執着するってのも面白い。
思えば父の風邪薬に対する執着は、昔からだったかもしれない。
子供の頃、少しでも鼻をぐずぐずさせていると、父はすかさず風邪薬を飲ませてくれた。
だから「お父さんは薬屋さんのようだ」と思っていた。
ところで、同じく認知症の義父の介護をしている友人がこんなことを言っていた。
「認知症になると、その人が執着していたものがずっと強く現れるらしいよ」と・・・
ちなみに友人の義父の場合、それは「お金」だったそうだ。
もともと資産家でお金持ちだった友人の義父は認知症がひどくなるにつれて、お金に対する執着がますます強くなったそうだ。
「誰かに盗られたのではないか」などといつも言うの・・・と友人が疲れた顔で話していたことを思い出した。
私もこれから老人になって、そんな笑い話にもならないものに執着して生きるのは絶対に嫌だ。
余分なものは手放して、身も心も軽やかに生きたいものだと思う。
実は、父が昨日転んで大腿骨付近の肌の色が変わっていると妹から知らされていたので、よもや骨折でもしていないかと心配していた。
妹によると「多分骨折はしていない」とのことだったが、心配なので今日は様子を見に父の所へ行ってこようと思っていた。
その父からの電話だったので、内心、父が直接電話できたのなら大丈夫かとちょっぴり安心しながら「足はどう?」と聞くと、「あぁ大したことはない。みんな(職員さんたちのこと)大げさに騒ぎすぎるんだ」とのことだった。
きっと職員さんたちは、骨折でもしていたら大変だと心配して下さったのだろう。
とりあえずヨカッタと思ったが、やはり今日は行ってみようと思って、父に「今日行くからね」と言うと、父は妹から今日私が来ると聞いていたようで、今朝の電話の用件は私に持ってきてほしいものの注文だった。
「●●●という風邪薬を買ってきて欲しいんだ。30錠入ったのを2箱頼む」
父にそう言われ、私は返事をしぶった。
「お父さん、風邪薬は飲んじゃあいけないってお医者さんが言ってたでしょ。風邪の時はお医者さんに言えばお薬出してくれるんだから・・・」
そう言って父になんとか市販の薬を諦めさせようと思ったが、父は「いやいいんだ。大丈夫だ。頼む、買ってきてくれ」の一点張り。
こういう症状があるのかどうか知らないが、父はまさに「風邪薬中毒」だ。
ただしどんな風邪薬でもいいと言うわけではなく、決まった銘柄のものに固執している。
父によると、風邪の時にその風邪薬を飲むと、すぐに良くなるのだそうだ。
思うに、そもそも父が思っている症状は「風邪」ではない。
誰だって風邪じゃなくてもくしゃみが出ることはあるし、くしゃみをしたら鼻水が出ることもあるだろう。
父はそれら全てを風邪のせいだと思い込み、その度ごとに風邪薬を飲むものだから、風邪薬の無くなる早さと言ったら尋常ではない。
多分、箱に書かれた規定量以上の数を飲んでいる。
医師からも「風邪薬はあまり飲みすぎるとと害がありますからね。腎臓にも悪いですから飲まないで下さい」と言われている。
確かに父の腎臓の検査数値は良くないそうだ。
ダメだ、買えないとなんど言っても「頼む、頼む」と懇願された。
ついに根負けして「わかった。じゃあこれが最後だからね」と言うと、嬉しそうに「2箱あれば一年持つから大丈夫だ」と言う。
一年なんて持つわけない。
持って一ヶ月だろう・・・
そう思ったが、父の言うとおりに風邪薬を買って持っていった。
それを父は本当に嬉しそうに受け取ってくれた。
妹も父からずいぶん風邪薬を頼まれたようで、あとから妹に「頼まれて2箱持って行っちゃったよ~」と電話をすると「うん、それでいいんじゃない」とのことだった。
妹とも意見が一致したのだが、たとえ身体に悪くても父が懇願するほど飲みたがっている薬なら飲ませてあげてもいいんじゃないかという事。
風邪薬を飲むことによって他人に迷惑をかけるのでなければ、それで父の気持ちが納得するのなら、風邪薬を持って行ってやろうということになった。
これも父の執着なんだなぁ。
でも風邪薬に執着するってのも面白い。
思えば父の風邪薬に対する執着は、昔からだったかもしれない。
子供の頃、少しでも鼻をぐずぐずさせていると、父はすかさず風邪薬を飲ませてくれた。
だから「お父さんは薬屋さんのようだ」と思っていた。
ところで、同じく認知症の義父の介護をしている友人がこんなことを言っていた。
「認知症になると、その人が執着していたものがずっと強く現れるらしいよ」と・・・
ちなみに友人の義父の場合、それは「お金」だったそうだ。
もともと資産家でお金持ちだった友人の義父は認知症がひどくなるにつれて、お金に対する執着がますます強くなったそうだ。
「誰かに盗られたのではないか」などといつも言うの・・・と友人が疲れた顔で話していたことを思い出した。
私もこれから老人になって、そんな笑い話にもならないものに執着して生きるのは絶対に嫌だ。
余分なものは手放して、身も心も軽やかに生きたいものだと思う。