子どもの頃、夜中に目を覚ますと、よく女性たちの歌声が聞こえることがあった。
家族全員でひとつの部屋に布団を並べて寝ていた時だから、5〜6歳の頃だったと思う。
夜中にふと目が覚めると、女の人たちの歌声が聞こえてくる。
何人かが合唱しているような、美しい高音の歌声。
家の中ではなく外から聞こえてくるように思われたが定かではない。
真夜中に外で合唱していたら、苦情が来そうなものだが、歌は一向に止む気配もなく、夜中に目を覚ますとよく歌声が聞こえてきたものだった。
小さな歌声だったので何を言っているのか歌詞はわからなかったが、何か西洋のメロディのような、今思い出すと讃美歌のようにも聞こえた。
隣に寝ていた母にもきっと聞こえていると思ったので「夜、歌声がするけど、あれは誰が歌っているの?」と聞いたことがある。
すると、母は不思議そうな顔をして「知らない」と言った。
それを聞いて、母は眠っていて聞こえていないのだと思ったが、相変わらず夜中になると歌声がしていた。
この歌声のことは怖いと思ったことはない。
むしろ眠りを誘うようで、歌声を聴きながら、どこで誰が歌っているのだろうと、ぼんやり考えているうちに眠ってしまうことが常だった。
しかし、それも少し大きくなり子ども部屋をもらって弟と一緒に寝るようになってからは、もう聞こえなくなってしまった。
その代わりによく聞くようになったのは、以前にこのブログでも少し書いたことがあるが、低い声でお経を読む男性の声だった。
こちらは一緒に寝ていた弟もよく聞いていたそうで、後日、大人になってから同じことを言っていた。
弟も話していたが、お経の声は間違いなく家の中から聞こえていた。
場所もわかる。家の二階へ続く階段を上ると、壁の陰に隠れるように僅かなスペースがあった。
ここは昼間でも暗かったので、物置スペースとして使っていたのだが、お経を読む声はこの場所から聞こえていた。
そして、この声は先ほどの歌声とは違って、とても怖いと思っていた。
お経を読む男性は、それから長い間ずっと家にいた。
この男性の気配は、大人になってからも度々感じていたし、この人が自分のことをとても嫌っていることも感じていた。
その後色々あって、男性は家からいなくなったのだが、なぜうちに居たのかは、先ほどの歌声と同様に今でも謎のままだ。
ところで話は変わるが、世界的に有名な切り絵作家、柴田あゆみさんの展覧会に行ってきた。
柴田さんの繊細な切り絵は、ただただ感嘆するほど素晴らしいものだった。
四つの御魂を表現した作品
小さなガラスケースの中に紙で街が作られていた。太陽もある!
私の写真では作品の良さが伝わり切れないので、お借りしてきた写真も。
手のひらに乗るくらい小さな作品だが、幾重にも紙を重ねて精巧に作られている。
会場では柴田あゆみさんのビデオが流されていて、自然と人間との調和の大切さ、自然の声に耳を傾ける大切さなどを語っていらっしゃった。
耳を澄ませば自然の声も、御魂の声も、私たちが気づかないだけで、周りには声なき声が溢れているのかもしれない。