「左折するんだから、スピード緩めて!なんで60キロも出してるの?」
「いきなり曲がらない!自転車、歩行者がいないか確認して!特に自転車は速いから気をつけて!」
「車間距離もっとあけて!前が急ブレーキかけたら追突するよ!」
私は早口でまくし立てる。自分でも今の言い方、ちょっときつかったかなと思うくらいの口調になっている。
いや、決して怒っているのではない。
緊張しているのだ。
そして車はあっという間に状況が変わるので、つい早口になってしまう。
私の手のひらは汗でびっしょり。
足に力が入っているせいか、さっきから足がつりそうになっている。
横で運転しているのは、次女。
運転歴だけは長いが、決して運転が得意という訳ではない私が、今日はいつもの夫に代わって次女に運転指南することになった。
運転は慣れだと分かっていても、次女の運転する車に乗っていると、これから大丈夫かな?とどんどん心配になってくる。
運転免許を取ってすでに5年になる次女だが、これまで実際に車を運転したのは10回くらいだろうか。
大学生で免許を取ったものの運転する車が無かった為、帰省した時に夫の車で5回くらい近所を走って練習をした。
就職が決まって、車を運転しなければいけないかもしれないと言うので、さらに5回くらい練習したが、結局仕事で車に乗らなくてよくなったとのことで、それ以降、次女はまったく車の運転をしなくなった。
ところが、このままペーパードライバーかと思っていたら、いきなり車を買うと言い出した。
「やっぱり仕事で車が使えないと不便なんだよね。車なら時間の節約になるのに、徒歩か自転車で行くしかないんだけど、自転車は数が少ないから、いつも争奪戦で使えないことが多いんだよね」という次女。
「じゃあ、車を買わなくても家の車で練習したら」と言ったら、「仕事で使うのは軽自動車だから、自分の車が欲しい。貯金で軽の中古車を買おうと思ってる」と言った。
考えてみれば私も20代の頃から運転しているし、特に北海道は車が必要なことが多いので、いつかは買うことになるかもしれない。
自分で買うと言っているし、、、
というわけで、免許取得以来、運転回数10回の次女は車を買った。
そして、仕事が休みの週末ごとに夫が運転を教えていたのだが、夫が用事で教えることができなくなったという日に、「代わりに乗ってあげて」と頼まれてしまった。
「もうそろそろ一人で乗ってみたら?最初は怖いけど、みんな一人で乗って慣れるんだよ」と次女に言ってみたものの「無理無理。一緒に乗って」と言われて乗ることになった。
仕方なく次女の運転する車で、次女が行きたいという洋服屋さん(土日は駐車場が無いほど混む、、、)へ行き、そのあとやはり次女が行きたいと言った総合スーパー(ここも混んでいる)へ行った。
以下、車の中での会話。
「お母さん、それ言うの遅い!早く言わないから曲がらないで通り過ぎちゃった!」
「そんなの一瞬なんだから、自分で見なさい!あっー止まって!横から車来てるって!!混んでる駐車場では、気をつけないとーっ!」
ああ、、、疲れた。
帰って来てからソファに座り込んでいたら、夫がにやにやしながらやって来て言った。
「疲れただろう?精神的に」
そう、精神的にね、、、これまでの夫の苦労がやっと分かった。
それにしても次女に一人で運転させるのはやっぱり怖い。
まだ付き合わないといけないかもなあ、、、とつった足をさすりながら思っている。