中学に入学したばかりの生徒たちが、ときどき発したり、つぶやいたりする言葉があります。
「先生、中学になると、こんな詳しく学習するのですか?」
そうなのです。小学校のときより、身につける知識は圧倒的に増えるのが、中学校の授業です。
生徒によっては、そのことで関心をもち、意欲を高めるもあります。
しかし知識の多さやその複雑さにとまどいを感じる生徒もいます。
私はそんな生徒に言ったことがあります。
「知識は荷物になりません」
私自身は中学を卒業して、40年以上たちますが、中学のときの授業のシーン、誰かが言ったことまで、要所要所で今でもはっきりと覚えています。
中学の国語で習った『トロッコ』の良平の気持ちに、自分の経験を重ねて、考えたこと。
神通川のカドミウム汚染によるイタイイタイ病の公害の問題に心痛めたこと。
理科の第二分野で、動物を哺乳類、は虫類、両生類、鳥類、魚類にわけ、その特徴を学習して、自分の周りでみかけた動物が、整理された知識として自分のものになったこと。
鮮やかに、生き生きと思い出すことができます。
そのころ学習したことは、自分のなかにしっかりと残っています。
この「知識は荷物にならない」という言葉は、いまでもつねに私を前へ前へと揺り動かし続けているのです。
あらためて、中学校での学習の大切さを思うのです。