鼎子堂(Teishi-Do)

三毛猫堂 改め 『鼎子堂(ていしどう)』に屋号を変更しました。

 『ハッピーエンドアパートメント:えすとえむ・著』

2011-08-28 22:50:50 | Weblog
久々に明るく晴れたカンジがする。


この漫画家さんの作品を読むのは、コレが初めてで、カテゴリーとしては、ボーイズ・ラブということらしい。
舞台は、たぶん、ヨーロッパの街。
最初は、フランスかと思ったけれども、どうも、イタリアかスペインらしい(・・・違うかも?)。
背景などをあまり描き込まない画風で、少女漫画(ワタシの知っている限りの1990年以前)とは、かなり違っている(・・・当然といえば、当然だけれども・・・)。
舞台が外国だし、何処か、フランス映画を見るような感覚もあって、不思議な画風。

読者層は、たぶん、少女漫画を卒業された女性の方々じゃないかと思う・・・一応、ゲイというか、ホモセクシャルな・・・男性の方も含まれているのかもしれない・・・。

ハッピーエンドなんて、経験のない作家志望の青年・ルカが、恋人(男性)から、部屋を追い出されて、ラジオのDJ兼ハッピーエンドアパートメントの管理人・ハピの部屋に同居することになり、アパートの住人達のそれぞれの物語が展開される。

3年前から全裸で暮らすアーティストと服飾デザイナー、双子を同等に愛する郵便局職員、老人形作家と合唱団の少年、つぶれたサーカス団員をかくまうエヴァと耳の聞こえない青年・・・そして、恋人を亡くしたラジオのDJと作家志望の青年・ルカ・・・。

どの物語も悲しくて、切なくて、温かい・・・。

カジェ・フェリス(幸福通り)のつきあたりに建つ、ハッピーエンドアパートメント・・・。
幸福のつきあたり・・・幸せな最後・・・。

このアパートに住む住人は、幸福である。

失くしたもの、探し続けているもの、選択されるのを待っているもの、過去に回帰するもの・・・。
住人達を通して、さまざまな思いが交錯する。

タイトルにもなっている『ハッピーエンドアパートメント』そのものの存在・大家兼DJの『ハビ』は、穏やかで、優しい・・・しかし、幸せには、一番遠いところにいる。
『さよなら』も言わずに亡くなった恋人・・・そして、恋人と同じ名前と声をもつ、作家志望の青年・ルカとの出会いは、ハビにとって、幸福以外の何物でもないのだろう。

この物語には、書かれていないけれども、この行き止まりのアパートの裏側は、たぶん、海なのではないだろうか・・・そんなことを連想した。